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p.41 抽出テキスト

4.3 各抗凝固薬の詳細

4.3.1 未分画ヘパリン

未分画ヘパリンは静脈あるいは皮下注射で使用する.迅速な抗凝固効果が得られ,硫酸プロタミンによる迅速な中和も可能である.未分画ヘパリンは半減期が短く,抗凝固作用は各症例で異なるため,用量を調節して投与する必要性がある251).強度の指標であるAPTT値は試薬の異なりを含めて値が標準化されていないため,抗Xa因子ヘパリン濃度が0.3~0.7単位/mLに相当する治療域,すなわちAPTTが対照値の1.5~2.5倍となるように用量を調節する252).

4.3.2 フォンダパリヌクス

フォンダパリヌクスは,合成ペンタサッカライド間接的Xa阻害薬であり,皮下注射で使用する.作用に個人差が少なく,モニタリングの必要がないため簡便に使用可能である.フォンダパリヌクスの有効性と安全性については, Matisse PE試験において,急性PTE患者2,213人に対し,未分画ヘパリンと比較して,3ヵ月後のVTE再発率(3.8% vs. 5.0%),出血性合併症発症率(1.3% vs. 1.1%),死亡率(5.2% vs. 4.4%)が同等であったこと253),Matisse DVT試験において,急性DVT患者2,205人に対し,低分子ヘパリンと比較して3ヵ月後のVTE再発率(3.9% vs. 4.1%),出血性合併症発症率(1.1% vs. 1.2%),死亡率(3.8% vs. 3.0%)と同等であったことより示された254).わが国の臨床試験でも,同様の有効性と安全性が確認されている255).

4.3.3 ワルファリン

ワルファリンはクマリン誘導体の経口抗凝固薬であり,ビタミンK依存性凝固因子(II,VII,IX,X)の合成抑制によって抗凝固作用を発揮する.同時に,投与初期にはビタミンK依存性であるプロテインC/プロテインSの合成を抑制し,凝固亢進作用の相反する作用機序をもつ.投与開始から治療域にコントロールされるまでに一定の日数を要する.また上述の作用機序により,投与開始時には一時的に過凝固となる可能性があることから,未分画へパリンやフォンダパリヌクスによる初期治療後に使用し,初期から単剤で用いることは避けることが推奨されている.

欧米ではワルファリンの至適治療域はプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)2.0~3.0とされている.わが国では歴史的にPT-INR 1.5~2.5が用いられてきているが,ワルファリン時代のデータをもとにこれらの推奨が妥当であると報告されている256, 257). 4.3.4 DOAC

DOACはワルファリンに代わる経口抗凝固薬として開発され,内服後すぐに効果が発現し,用量調節のための頻回採血やモニタリングが不要,薬剤相互作用が少ないなどの利点がある.わが国ではダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンが心房細動患者の脳卒中予防に使用され,エドキサバンは術後のVTE予防にも用いられている.VTE治療および再発予防には2014年以降,エドキサバン,リバーロキサバン,アピキサバンが承認された.リバーロキサバンとアピキサバンは初期の高用量投与(初期強化療法)後,常用量へ減量する投与法であり,未分画ヘパリンやフォンダパリヌクスを先行させず,経口抗凝固薬のみ(シングルドラッグアプローチ)で治療を開始することも可能となった.

DOACの大規模RCTでは,従来治療であるヘパリン,ワルファリンとの比較で,VTE再発に関しては非劣性であり,出血性合併症は頭蓋内出血を中心に少ない可能性が示された258-261)(表13).使用の簡便さに加えて出血性合併症の少ない可能性より,最新の海外の主要なガイドラインでは,ワルファリンよりDOACを推奨している2, 3).抗凝固療法を施行する際の出血リスクは,日本人を含めたアジア人種では特に危惧されるが,アジア人種ではワルファリンと比較してDOACの安全性(出血リスクの低さ)がより目立つ可能性がメタ解析よりも報告されている262).

ただし,DOACは高度腎機能低下の症例には使用できず,各RCTでは除外されている重症例などではエビデンスが乏しいという注意点がある.また,抗リン脂質抗体症候群(特にループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン抗体,抗β 2-グリコプロテインI抗体の3抗体がいずれも陽性を呈する場合)の症例では,DOACはワルファリンと比較して有効性と安全性がともに劣る結果が報告されており263),同病態ではワルファリンによる抗凝固療法が推奨される. a. エドキサバン

エドキサバンは,2014年9月にVTEに対してわが国で最初に承認されたDOACである.適切な初期治療後に,通常は60 mg/日を1日1回にて投与する.エドキサバンは, VTEが適応であるDOACの中で唯一の減量基準があり,体重60 kg以下,クレアチニン・クリアランス(CCr)30 mL/分以上 50 mL/分以下,あるいはP糖蛋白阻害効果を有する薬剤と併用する場合には30 mg/日に減量する.CCr 15 mL/分未満の患者への投与は禁忌である.

エドキサバンは,日本人患者を含む大規模国際共同RCTであるHokusai-VTE試験で,その有効性と安全性が示さ