GL検索 v0.1.0
画像は 29 ページを描画したものです
page 29

p.29 抽出テキスト

合,V1~V4 の陰性T波,S1Q3T3,右脚ブロック,ST低下,肺性P波も認めることがある161).メタ解析で,心拍数>100回/分,S1Q3T3,完全右脚ブロック,V1~V4 の陰性T波,右軸偏位,aVRのST上昇,心房細動が院内死亡と関連したと報告されている162).

2.2.2 動脈血ガス分析

低酸素血症,低二酸化炭素血症,呼吸性アルカローシスが特徴的所見である.肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)も開大することが多いが,急性PTEの30%でPaO2が正常であったともされる162).経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の測定は簡便であり,頻回にあるいは持続して非侵襲的に実施できるため,特に周術期管理でのスクリーニング法としては有用である163).

2.2.3 Dダイマー

Dダイマーの陰性的中率は高く,値が正常であれば急性VTEの可能性は低くなる.一方,Dダイマー値上昇の陽性的中率は低く,高値でもVTEの確定診断にはならない.Dダイマー検査は,検査前臨床的確率が低い,または高くないと評価された患者には推奨されるが,検査前臨床的確率が高いと評価された患者は,Dダイマー検査を行わずに画像診断が推奨される164).

Dダイマーの感度,特異度はその検査法やカットオフ値の設定でばらつきがあるが,ELISA法では,DVTで感度89~96%,特異度38~47%,PTEで感度91~96%,特異度36~70%,ラテックス凝集法では,DVTで感度78~ 86%,特異度61~66%,PTEで感度80~92%,特異度45~56%である165).また,Dダイマー上昇は入院患者,がん患者,妊婦,高齢者などで多くみられる.このような入院患者に対する除外診断としての有用性は低く,偽陽性が多くなる.このためスクリーニング検査には適さない166).VTEの診断ではDダイマーのカットオフ値は年齢が上がるにつれ上昇し,50歳以上ではDダイマー=年齢× 10(μg/L)が診断率を落とさずに無駄な画像診断を避けることができるとされる156, 167-169).また,抗凝固療法中止後のDダイマーの上昇はVTEの再発の指標となるため,抗凝固療法の継続期間や終了時期の判断に参考となる170-172).

2.2.4 TTE検査

PTEを示唆する所見として,右室拡大,McConnell徴候(右室の心尖部の収縮は保たれるが,右室自由壁の壁運動低下),60/60徴候(右室右房間圧較差が60 mmHg未満,かつ,右室流出路駆出血流加速時間<60 ms),肺動脈圧の上昇,中隔の扁平化,右心系の血栓の存在などがあげられる.これらの所見は総じて高い特異度を有するが,感度

は低いという特徴がある.血行動態への影響の少ない小範囲のPTEでは,上記の所見を認めないことは容易に想像できる.過去のメタ解析でも,感度/特異度について,右室拡大(右室と左室の比)は55%/86%,McConnell徴候は22%/97%,60/60徴候は24%/84%,中隔の扁平化は26%/95%,右心系血栓は5%/99%とそれぞれ算出されている173).そのため,心エコー図検査の所見に異常を認めなくてもPTEを否定できない.一方で,ショックの患者では, PTEを示唆する所見の感度が改善すると報告されており,ショックの鑑別診断には有用性が高い174, 175).McConnell徴候は右室梗塞でも認める点や,肺動脈圧上昇や中隔扁平化はPTEと関係なく肺高血圧を有する場合でも陽性となる点には注意が必要である.なお,PTEの急性期には高度の肺高血圧は呈しないと考えられており,正常血圧の急性PTEでは三尖弁圧較差(TRPG)の平均値は33 mmHgと報告されている176).正確なカットオフ値は不明だが,60/60徴候の基準である60 mmHgは基準の1つにすぎず,右室肥大や右室流出路血流の加速時間,McConnell徴候も慢性の病態の合併(acute on chronic)を判断するのに有用と考えられる.

2.2.5 下肢静脈超音波検査

下肢静脈超音波検査は,DVTの診断に広く用いられる非侵襲的な検査である.カラードプラモードを併用しながらBモードで深部静脈を描出し,基本は圧迫法によって血栓の有無を判断する.検査内容には,大腿,膝窩静脈のみ行う中枢下肢静脈超音波検査(proximal ultrasonography),描出が簡便な鼠径部の大腿静脈と膝窩部の膝窩静脈のみの2ヵ所を描出する2 point ultrasonography,腹部,大腿,下腿静脈まで全長を描出する全下肢静脈超音波検査(whole leg ultrasonography)がある177, 178).中枢型(腸骨・大腿・膝窩静脈)DVTに対する感度は,有症状の患者では約97%と高い179).

下腿の末梢型DVTに対する超音波検査の感度は有症状患者では平均73%,無症候患者では平均53%とされ,診断能は十分ではない180).全下肢静脈超音波検査の利点として,初回検査で陰性なら1週間後の再検査が不要である.陰性の場合に3ヵ月後までのVTE発症率は0.57%と低いことが報告されているため,DVTの除外検査としても有用である178).一方で中枢下肢静脈超音波検査(2 point ultrasonographyを含む)を施行した場合の有用性·安全性にはまだ十分なコンセンサスがない.陰性であったとしても,末梢型DVTの中枢伸展を確認するために1週間後に再検査が必要となり,手技的に可能であれば初回から全下