p.28 抽出テキスト
脈拍数<100回/分,SaO2>94%,片側下肢腫脹なし,喀血なし,4週以内の外傷や手術なし,VTEの既往なし,経口ホルモン剤の使用なし)からなる基準である.臨床的確率が低く,PERCルールをすべて満たす患者では,PTEを安全に除外できることが前向き検証試験,非劣性試験で示された151, 152).ただし,有病率が低い集団における検討のため,欧州心臓病学会(ESC)のガイドラインでは一般化しない,とされた2). 2.1.2 DVTの検査前臨床的確率 問診,診察で得られる個々の所見では,DVTを診断することは困難である153).このため,いくつかの所見の組み合わせでDVTの確率を推定するスコアが考案され,検証されている53, 154, 155).もっとも広く使用され,かつ検証されているのはDVT用Wellsスコア(低確率:0点以下,中確率:1~2点,高確率:3点以上の3群に分類)である53, 154) (表8A) 156, 157).本スコアは日本人でも前向きに検証され,有益性が認められている158, 159).Wellsスコアを2分類とし,低可能性スコア(1点以下)と高可能性スコア(2点以上)に分けて検討したメタ解析が発表されており,わが国ではまだ検証されていないが,簡便なため海外では主流となっている143, 157, 160)(表8B).ただしWellsスコアの低確率群では,DVTである可能性 が低いものの53, 156),単独ではDVTを完全には否定できない.これは,Wellsスコアを2分類とした低可能性スコア(1点以下)と高可能性スコア(2点以上)でも同様である157).このため,Wellsスコアは除外診断の可能なDダイマー検査,画像診断と組み合わせて使用されている(第2章4.7 DVTの診断フローチャート参照). 2.2 検査と画像 2.2.1 胸部X線写真,心電図 胸部X線所見は,通常PTEに特異的なものはないが,呼吸困難を起こす他の心肺疾患の除外に有用である.PTEの約7割に心拡大や肺動脈中枢部の拡張がみられ,約1/3には肺野の透過性亢進が認められるとされ161).中枢肺動脈の拡張とその末梢領域の透過性亢進を合併する場合にはウェスターマーク徴候,中枢肺動脈拡張とその先の途絶所見を合併する場合にはナックル徴候とよばれる.また肺梗塞を起こすと肺炎様浸潤影や胸水がみられる. 心電図所見も非特異的で,軽症例の唯一の所見は洞性頻脈である.中等度以上の急性PTEで右心負荷を示す場 表8 Wells スコア(DVT 用) A Wells スコア(DVT 用)点数 活動性のがん(6ヵ月以内治療や緩和的治療を含む) 1下肢の完全麻痺,不全麻痺あるいは最近のギブス装着による固定1臥床安静3日以上または12週以内の全身あるいは部分麻酔を伴う大手術1下肢深部静脈分布に沿った圧痛1下肢全体の腫脹1腓腹部(脛骨粗面の10 cm下方)の左右差>3 cm * 1症状のある下肢の圧痕性浮腫1表在静脈の側副血行路の発達(静脈瘤でない) 1 DVTの既往1 DVTと同じくらい可能性のある他の診断がある-2スコアは≧3点:高確率,1~2:中確率,≦0:低確率を示す. *両下肢に症状がある患者には,より症状が強い下肢を用いる. Reproduced with permission from JAMA. 2006; 295(2):199-207. Copyright (2006) American Medical Association. All rights reserved, including those for text and data mining, AI training, and similar technologies. B 低可能性スコア≤1高可能性スコア≧2 (表8A:Wells PS, et al. 2006 156)より,表8B:Geersing, et al. 2014 157)を参考に作表)