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た,海外では抗凝固療法としては低分子ヘパリンが主体となっているが,わが国で血栓塞栓症予防に適応のある薬剤は未分画ヘパリンのみである.そこで,わが国独自での検証結果をもとに,日本静脈学会,肺塞栓症研究会,日本血管外科学会,日本脈管学会,日本循環器学会の合同にて「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における血栓症予防および抗凝固療法の診療指針」が提言された(表4) 82). 5 予後(推奨表2) 推奨表2 VTE の予後に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 急性期PTE の治療方針の検討のために, sPESI スコアなどを用いて予後を推測することを考慮する. IIa B長期的なVTE の治療方針の検討のために,誘因と背景因子を評価することを考慮する. IIa B 5.1 PTEの予後 肺塞栓症研究会共同作業部会による短期予後調査からの報告では,PTE患者総数309人のうち,全体の死亡率は14%であった.死亡率は,心原性ショックを呈しなかった症例では6%であったのに対し,呈した症例では30%と高かった29). 欧米の大規模観察研究であるICOPERでは,急性PTE患者2,454人の中で,致死的な急性PTEは7.9%であった.総死亡率は2週間11.4%,3ヵ月17.4%であり,発症時の 血行動態安定例における死亡率は15.1%であったが,血行動態不安定例では58.3%であった83).一方で,欧州から2008年に報告されたRIETEでは,VTE患者15,520人における3ヵ月後の致死的な急性PTEは1.68%,総死亡率は8.65%であった84). 最近のわが国でのCOMMAND VTE Registryでは, PTE患者1,715人のうち低リスク794人(46%),亜広範型742人(43%),広範型179人(10%)が登録されたが,90日時点の死亡率は,それぞれ8.3%,7.6%,29.7%であった85).これらのデータをみると,重症PTEの症例に関しては,現在でも依然として急性期死亡率が高いものと考えられる.致死的PTEの75%は発症から1時間以内に,残りの25%は発症48時間以内に死亡するとの報告もある86).ただし,診断されず未治療の症例における死亡率は約30%と高いが,適切な治療を行えば2~8%まで低下するとされる87).急性PTEの死亡率改善のためには,早期の診断および適切な治療が重要である. 急性期のPTEの重症度に応じた適切な治療方針の検討にあたっては,死亡リスクの適切な評価が重要となる.これまで,死亡の独立した規定因子として,心エコー図検査での右室機能低下,高齢(70歳以上),がん,うっ血性心不全,慢性閉塞性肺疾患(COPD),低血圧(収縮期血圧< 90 mmHg),頻呼吸,右心内浮遊血栓の存在,卵円孔開存,トロポニン値の上昇などが報告されている20, 84, 88, 89). 近年では,いくつかの重要な因子を基にしたPTE患者の急性期死亡のスコア化が普及しつつある.数あるスコアの中で,2005年に発表された肺塞栓症重症度指数(PESI) 90)および2010年に発表された同スコアの簡易版であるsimplified PESI(sPESI) 91, 92)が,国際的なガイドラインでの記載を含めて広く普及しつつある(表5) 90-92).特に 表4新型コロナウイルス感染症に対する血栓症予防および抗凝固療法の推奨軽症(呼吸困難なし,肺炎所見を認めない)抗凝固療法を推奨しない*1 脱水の予防,理学療法を基本とする 中等症I:呼吸不全なし(呼吸困難,肺炎所見)抗凝固療法を推奨しない*1 脱水の予防,理学療法を基本とする 中等症II:呼吸不全あり(酸素投与が必要)抗凝固療法を推奨する*2 予防用量である低用量未分画ヘパリンを推奨する*3 重症(ICUに入室あるいは人工呼吸器が必要)抗凝固療法を推奨する予防用量である低用量未分画ヘパリンを推奨する*1なお重症化した場合は以下の重症度に準じて管理する. *2Dダイマー高値,男性,不動および肥満は特に高リスクとなる. *3 中等症IIの出血低リスク患者において,Dダイマー高値および病状が悪化し重症化リスクが高い症例では,治療用量の未分画ヘパリンは考慮されうるが,治療用量は予防用量より出血リスクが高いことに留意する. (日本静脈学会.2023 82)より)