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p.19 抽出テキスト

災害対策の際には疾患予防のための啓発の重要性が示されている.

血栓性素因の詳細については第2章3. 血栓性素因参照.

4 COVID-19との関連(推奨表1)

推奨表1 COVID-19 と血栓症,VTE との関連に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

COVID-19 患者の診療の際,循環器合併症の1 つとして血栓症に注意する. I B COVID-19 軽症(肺炎所見なし),中等症I(酸素投与を必要としない)に対し,血栓予防・病態改善を目的とした一律の抗凝固療法は推奨されない. III No benefit B COVID-19 中等症II(酸素投与を必要とする),重症(ICU 入室もしくは人工呼吸器管理を要する)に対し,血栓予防・病態改善を目的とした抗凝固療法を考慮する. IIa B

4.1 COVID-19と血栓症,VTE

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされるウイルス性の急性肺疾患である.感染症としての主病態は呼吸器感染症であるが,血栓症の合併率が高いこと,特にPTEを含めたVTEを併発するリスクが高いことが報告されている61, 62).

COVID-19患者におけるVTEの発症機序に関しては不明な点が多いが,重症感染症として播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併し,凝固異常を呈する影響63),集中治療室(ICU)での管理を要する場合が多いこと64), COVID-19治療のために使用されるさまざまな薬剤による血小板作用や凝固作用への影響などの可能性が考えられている65, 66).

中国の観察研究では,重症COVID-19のためICUに入室した81人のうち,VTEの発症は20人(25%)であった67).オランダの観察研究では,重症COVID-19患者184人のうち,31%にVTEが発症した68).いずれも,予防的な抗凝固療法は全例で行われていなかった.報告によりVTE発症率のばらつきが多い理由として,対象がICU患者か非ICU患者か,スクリーニングのための画像検査の有無により大きく異なる可能性が指摘されている(スクリー

ニング超音波検査あり40.3%,スクリーニング超音波検査なし9.5%.ICU患者22.7%,非ICU患者7.9%) 69).

4.2 わが国における報告

2020年8月に報告された日本静脈学会,肺塞栓症研究会による合同のアンケート調査では70), COVID-19患者におけるVTE発症は7人(0.6%)であった.その内訳としてはPTEが5人(0.4%)と発症率は低かったが,詳細が調査された5症例では,全例が入院中に人工呼吸器管理を必要とするCOVID-19重症例であった71).2020年12月に報告された日本血栓止血学会,日本動脈硬化学会,厚生労働省研究班による合同アンケート調査では72),国内109施設にCOVID-19にて入院した総数5,687人の中で,血栓症は105人(1.85%)であり,DVTが41人(0.72%),PTEが29人(0.51%)であった.その後,画像診断として造影CT検査が実施された症例のみを対象とした報告では,総数1,236人のうち45人に造影CT検査が行われ,10人(22.2%)にVTEを認めた.COVID-19軽症例では0%であったのに対し,重症例では40%であった73).

また,COVID-19と血栓症・抗凝固療法に関する国内最大規模のレジストリー研究であるCLOT-COVID研究では, 2021年4~9月に国内16施設にCOVID-19で入院した2,894人の中で,55人(1.9%)に血栓症を認め,COVID-19 の重症度が上がるにつれて血栓症の発症率が上昇することが確認された(軽症例0.2%,中等例1.4%,重症例9.5%) 74).わが国では,COVID-19 の全体における血栓症・VTEの発症率は諸外国の報告に比し大幅に低かったが,一方で重症例では相応に存在することが示された.

4.3 抗凝固療法と血栓症の一次予防

COVID-19患者での血栓形成傾向およびVTE発症リスクの高さより,国際的な学会の各ステートメントでは,入院患者には一律に抗凝固療法による血栓症の予防および予後改善を図る指針も提唱されている75, 76).さらに海外では,抗凝固療法の強度(予防用量 vs. 治療用量)に関するさまざまな研究が報告され,当初はより強度の治療用量の有効性に否定的な報告が多かったが77-79),より大規模な研究では,COVID-19中等症例に関しては通常の治療用量での有効性が示されている80).

わが国では,前項の通り軽症例では血栓症のリスクが低いこと,アジア人では白色人種と比較して,抗凝固療法に伴う出血のリスクが高い可能性に注意が必要である81).ま