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p.17 抽出テキスト

凝固薬(DOAC)の使用が増加し(0%から38.3%),血栓溶解薬の使用と院内死亡率(13.7%から3.4%)は経年的に減少した32).

入院患者周術期に対する一次予防の普及により,周術期のPTE発症率は経年的に低下している33).日本麻酔科学会の認定施設における周術期アンケート調査によると, 2002~2003年にかけてPTEは増加傾向であったが,2004年の予防ガイドライン発表および肺血栓塞栓症予防管理料の算定後は減少に転じた.10年間で周術期の症候性PTEの発症は3,667人,手術1万件あたりの症候性PTEの発症は3.1人(0.031%)で,致死的PTEは0.6人(0.006%)であった33).

日本麻酔科学会調査と多施設レジストリーであるCOMMAND VTE Registryを統合した研究では,対象となった203,943人の手術症例における術後症候性VTEおよびPTEの発症率は,それぞれ0.067%および0.028%で,術後中央値8日で発症し,30日のVTE再発は3.0%,大出血は5.2%,全死亡は3.7%であった34).保険データを用いた院内PTE発症率は外科系19.3/1,000人・年,内科系21.8/1,000人・年と,内科系でやや多かった.理学的予防が中心の予防策施行率は外科系59.2%,内科系7.3%であり,内科系で十分でないことが院内PTE発症と関連する可能性が示唆された35).

2.2 DVT

DVTの発症率は,中枢型中心の症候性のみか,無症候性末梢型を多く含むスクリーニング検査による診断を含むかなど,診断の根拠により変わり,臨床的重要性も異なる.疫学調査の発症数は,1988年の厚生省研究班では年間

650人とされた36).日本静脈学会からは,1997年に年間506人,2012年には1,162人との報告があり,1施設あたりの年間症例数も9.9人から17.9人と増加した10, 37).2006年の肺塞栓症研究会の短期アンケート調査では年間14,674人と推計され27),発症率は年間100万人あたり120人となり,上昇している.2012~2017年のJROAD-DPCの解析では,DVTによる入院はVTE全体の72%から38%に減少し,病院死亡は2.0%であった31).米国におけるDVT発症数は毎年116,000~250,000人38),年間100万人あたり480人39)とされている.1976~2000年の論文解析からは,スウェーデンおよび米国における発症率は年間100万人あたり500人であった40).わが国の発症率は,欧米より低いものの上昇していると考えられる.

年齢は危険因子の1 つとされ,加齢によって複数の因子が増強されると考えられている.2009年の日本静脈学会の調査では平均年齢69.1歳で,発症のピークは80歳代であった10).性別は,報告により違いが認められるが,わが国では女性優位の報告が多い10, 31, 41).2010~2014年のCOMMAND VTE Registryでも女性が61%とやや多く,平均年齢67.8歳で,PTEと差はなかった30).

DVTの発生部位は大多数が下肢である(図1)

10).骨盤

部には,おもに右総腸骨動脈と腰椎の圧迫(iliac compression),左総腸骨静脈の内膜肥厚を生じるMay- Thurner症候群が生理的に存在する42).このため下肢DVTの発症は左が多いが,両側性も存在する10, 37)(図1).

下肢DVTは膝窩静脈から中枢側の中枢型と,その末梢側の末梢型(下腿限局型)に分類される.発症率は末梢型の方が多く,特にスクリーニングを行うと高率に発見され

図1 DVT の部位別発症率対象は外来を受診しDVTと診断された患者.診断には超音波法が88%,造影CTが39%で用いられた. (佐戸川弘之,他.2012 10)より改変)

右下肢360人(33%)左下肢531人(49%)

両下肢201人(18%)

上肢18人(2%)その他

1,112 人1,086人

末梢型519人(48%)中枢型

567人(52%)