p.142 抽出テキスト
2.1 病態 2.1.1 第1群(CHD-PAH) CHD-PAHは1アイゼンメンジャー症候群,2有意な左右シャントを伴うPAH群(修復手術可能例および不可能例),3左右シャントでは説明できないPAH群,4有意なシャント残存のない修復手術後PAH群の4 つに分類されている114)(表34).2有意な左右シャントによる左心系容量負荷疾患では,1アイゼンメンジャー症候群に移行しないように修復手術を行う.肺血管病変の進行が速い完全大血管転位,総動脈幹症,完全型房室中隔欠損,総肺静脈還流異常などのCHD,および内臓錯位症候群や染色体異常合併例では,特に早期手術が推奨される.ダウン症候群では心疾患の有無にかかわらず,気道狭窄や肺(動脈)低形成などの影響により肺血管病変の進行が速い841, 1296).3左右シャントでは説明できないPAH群と,4有意なシャント残存のない修復手術後PAH群は,IPAH/HPAHと同様の進行性の病態と考えられる. 2.1.2 第2群(LHDに伴うPH) 小児期に有病率の高い先天性毛細血管後閉塞性病変を表45に示す1237).肺静脈狭窄は予後が非常に悪く,治療も困難である. 2.1.3 第5群(詳細不明な多因子のメカニズムに伴うPH) 第5群に分類されるCHD-PHの基礎心疾患を表46に示す1297).二心室修復が不可能な複雑CHD(単心室)では,低酸素血症を改善するために大静脈-肺動脈吻合による右心バイパス(グレンまたはフォンタン)手術が行われる.右心バイパス術後の肺循環は肺循環駆動圧に相当するmPAPと平均経肺圧較差(TPG)と,体心室が付与する運動エネルギーによって成り立っている.そのため,軽度のPVR上昇でも肺循環は容易に影響を受け,前負荷減少による左心不全状態に陥る.このような症例はmPAP>20 mmHgを満たさなくても,PHVDとして,TPG>6 mmHgまたはPVRI>3 Wood 単位・m 2と定義されている(パナマ分類,カテゴリー3) 1237, 1298)(表47) 1298). 2.2 診断 TTE,心臓MRIやCT,心臓カテーテル検査により診断する1299).心エコー図検査で右室の圧負荷所見があればPHを疑うが,末梢性肺動脈狭窄合併(ウィリアムス症候 表45 先天性毛細血管後閉塞性病変 肺静脈狭窄孤立性合併型(BPD,未熟性)三心房心閉塞した総肺静脈還流異常僧帽弁狭窄/大動脈弁下・弁・弁上狭窄大動脈縮窄(Rosenzweig EB, et al. 2019 1237)より) ©ERS 2019. CC BY-NC 4.0 表46 複雑先天性心疾患 区域性PH孤立性肺動脈動脈管起始肺動脈欠損VSD を伴う肺動脈閉鎖と主要体肺側副動脈半総動脈幹症その他単心室未手術術後シミター症候群閉塞した総肺静脈還流異常僧帽弁狭窄/大動脈弁下・弁・弁上狭窄大動脈縮窄(Rosenzweig EB, et al, 2019 1237)より改変) ©ERS 2019. CC BY-NC 4.0 TCPC 術後(フォンタン循環)で出血後脳室拡張(平均TPG >6 mmHg),低肺血流量および/ または肝うっ血の徴候がある小児,若年成人患者に対して,カテーテル検査を含む鑑別診断を行う. I C TCPC 術後(フォンタン循環)および出血後脳室拡張(平均TPG >6 mmHg)の小児,若年成人に対して,運動耐容能の改善を目的として肺血管拡張薬(ERA, PDE5 阻害薬,吸入イロプロスト)の使用を考慮する. IIa C TCPC 術後(フォンタン循環)かつ血行動態(平均TPG)に関係なく症状がある小児,若年成人に対して,運動耐容能改善を目的とした肺血管拡張薬(ERA, PDE5 阻害薬,吸入イロプロスト)の使用を考慮してもよい. IIb C RS ウイルス感染流行初期において,生後24ヵ月齢以下のCHD-PH 患者には,抗RS ウイルス抗体製剤を投与する. I A SVRI:体血管抵抗係数