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p.14 抽出テキスト

緒言

改訂にあたって

本ガイドラインは日本循環器学会からこれまで発行されてきた「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」,「肺高血圧症治療ガイドライン」,そして「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートメント」の3 つを統合し,新たに改訂したものである.近年これらの疾患における診断,治療法の進歩は目覚ましいが,相互に密接な関連性をもっている.肺循環領域の最新の予防,診断,治療に関し,本領域のエビデンスと数多くの専門家の知見を1つにまとめることで,より包括的な指針とするべく,3つのガイドラインを統合して「2025年改訂版肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」として改訂・発行に至った.「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン」は2004年の初版発行以降,2009年,2017年1)と改訂を重ねてきた.2017年は抗凝固療法において直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が使用可能になって間もなく,エビデンスも不足していた.しかし,この数年でDOACを用いた静脈血栓塞栓症の治療は飛躍的に進歩し,DOAC単独での外来治療などを含め,治療法に大きな変革が訪れている.欧米諸国においても2017年以降にガイドライン改訂が行われており2, 3),特に,誘因のない(unprovoked)静脈血栓塞栓症や担がん患者に伴う静脈血栓塞栓症の管理に関しても,わが国からのものも含めて質の高いエビデンスが増加している.また,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックと血栓症との関連も重要であることから,これらの知見をふまえた形での全面改訂を実施した.「肺高血圧症治療ガイドライン」は1999~2000年にかけての初版発行後,2006年および2012年に部分改訂を行い, 2017年4)には全面改訂を実施した.さらに,わが国発ともいえる治療法であるballoon pulmonary angioplasty(BPA)に関しては,「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートメント」5)として2014年に発行された.前回の改訂以降,2018年および2024年に第6,第7回の

2度の肺高血圧症ワールドシンポジウムが開催され,肺高血圧症の定義の変更が提案された6).さらに,各種肺高血圧症に対する薬物治療のエビデンスや,わが国からのものを中心としたBPAのエビデンスが多数構築されてきた.また,治療における層別化の概念に関しても,従来のWHO機能分類という症状のみを根拠とした分類から,マルチモダリティの指標をふまえた現実的な層別化が標準的になってきているなど,診断・治療の内容が大きく変わっていることから,今回の全面改訂に至っている.本ガイドラインは先進諸国の中では2024年の第7回肺高血圧症ワールドシンポジウムでの提言後はじめて発行されるガイドラインであることから,肺高血圧症領域におけるわが国の国際的なプレゼンス向上にも貢献することが期待される.

ガイドライン公表と利益相反の取り扱い

本ガイドラインは日本循環器学会および日本肺高血圧・肺循環学会の合同作成という形を取り,日本肝臓学会,日本胸部外科学会,日本呼吸器学会,日本小児循環器学会,日本静脈学会,日本心血管インターベンション治療学会,日本成人先天性心疾患学会,日本脈管学会,日本リウマチ学会,ならびに関連研究班である厚生労働省難治性疾患等政策研究事業「自己免疫疾患に関する調査研究」班,「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班の参画を得た.これら参加学会・研究班代表者を含めた班員・協力員構成を行い,ガイドライン改訂作業を実施した.

ガイドライン作成組織構成員の利益相反(COI)は巻末の付表に掲載した.班長・班員・協力員は日本循環器学会の定める指針にしたがって2020~2022年の3年間について申告を行い,特に推奨クラスの決定にあたっては一定水準以上のCOIを有する班員は携わらない形式をとった.また6名の専門の外部評価委員に査読を依頼し,得られた意見にもとづいて適宜修正を行い,日本循環器学会ガイドライン部会の承認を得て最終稿とした.