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p.135 抽出テキスト

る.糖原病はglucose-6-phosphataseの欠損により生じるが,糖原病患者ではセロトニンなどの血管収縮物質の血中濃度が高く,PHをきたすと報告されている1191).また,先天性代謝異常症のゴーシェ病でもPHをきたす.ゴーシェ病はグルコセレブロシダーゼの遺伝子変異によりグルコセレブロシドが組織に蓄積するスフィンゴリピドーシスである.ゴーシェ病の7~30%でPHが認められる.ほとんどが軽度だが,0.76%の患者で収縮期肺動脈圧が50 mmHgを超えたと報告されている1192).治療法としては酵素補充療法が施行されるが,単独での改善は難しく,肺血管拡張薬が使用される1193).

4 慢性腎不全

末期慢性腎不全にPHが合併することが報告されている.慢性腎不全患者の68%にPHを認め,24%が前毛細血管性PHであった1194).慢性腎不全患者3,504人にRHC検査を行ったところCpcPHがもっとも多く,予後が悪いことが報告された1195).pcPHは透析患者の65%で認められた1195).

5 PTTM(推奨表39)

PTTMはがんに随伴し急激に進行する呼吸不全,PHを特徴とする劇症疾患であり,1990年にはじめて報告された1196).肺小細動脈の腫瘍塞栓に加え,肺小細動脈,肺静脈,リンパ管における閉塞性線維内膜リモデリングを特徴とする589, 1197, 1198).単なる腫瘍塞栓とは異なり,がん細胞から放出される血管内皮細胞増殖因子,血小板由来成長因子,組織因子といった増殖因子やマクロファージ,オステオポンチンが関係していると推測されている589, 1199, 1200).予後は入院から死亡まで約6日1201),症状の出現から死亡まで約9.5週1202)などと報告されている.PTTMの79%が剖検診断であるように,生前診断は難しい1202).しかし担がん患者の剖検例の1~3%にPTTMを認めたという報告もあり,決してまれではない1202, 1203).腺がんに多いといわれ,胃がん(59%)がもっとも多く,乳がん(10%),肺がん(6%)がそれに続く1202).またstage 4の進行がんで診断されていることが多い1201).症状としては,呼吸不全,咳嗽,低酸素血症などで,特異的な症状はない.

確定診断は病理学的に行われることが望ましい.しかし肺生検は困難であり,臨床的特徴をもって診断することが多い589).特徴的な画像所見として,CTにおけるすりガラ

ス陰影,縦隔および肺門部リンパ節腫脹,小葉間隔壁の肥厚を呈する1202).肺血流シンチグラフィでは多発する非常に細かい区域性血流低下がみられることがあり589),デュアルエナジーCT の肺灌流画像(lung perfused blood volume)においても同様に認識される1204).さらにFDG- PETではびまん性の肺野異常集積を認めた例もあり1205),副次的に原発巣がみつかることも期待できる.ただし肺血流シンチグラフィやPETが陰性でも否定ができない. RHC検査ではPHがみられ,肺動脈楔入吸引細胞診が診断に役立つこともある1206).

治療法も確立されていない.原疾患に対する化学療法1207)に加え,PHに対して肺血管拡張薬,血栓を伴えば抗凝固療法1208)が行われている.化学療法を施行した群では生存期間が長かったことから,腫瘍細胞量を減らすことが効果的な可能性がある1201).また症例報告ではあるが,PDGF受容体阻害薬であるイマチニブが生存期間を延長する可能性があることや1209),抗血管内皮増殖因子抗体であるベバシズマブ,VEGF受容体やPDGF受容体などを複数阻害するanlotinibの投与が有効であったという報告もみられる.ただしいずれも原疾患により12ヵ月以内に死亡している589, 1210-1212).このため,迅速に診断を行い,集学的治療により化学療法や外科手術の適応を逃さ

推奨表39 PTTM の治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

急激に進行する呼吸困難や低酸素血症を伴うPH の場合,PTTM の存在を疑い精査を行う. I C PTTM が疑われる患者に対して,PH の診断と原発となるがんの検索を並行して行う. I C PTTM が疑われる患者に対して,肺動脈楔入吸引細胞診を行う. I C

原疾患に対するがんの治療を行う. I Cがんの治療と並行して,PH に対し肺血管拡張薬の使用を考慮してもよい. IIb Cがんの治療と並行して肺動脈血栓の合併が疑われる場合は,抗凝固薬の使用を考慮してもよい. IIb C吸引細胞診が陽性など,PTTM が強く疑われる場合,がんの治療に先んじてPHに対してイマチニブの使用を考慮してもよい. IIb C