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p.131 抽出テキスト

が末梢型)を有する症例に対して,手術リスクを低下させるために術前に末梢型病変にBPAを行い,中枢型病変に対してPEAを行う方法が報告されている1147).

PEAに特有の合併症として,肺(気道)出血,再灌流性肺水腫,遺残PHがあり,これらは院内死の主因である1132).また,超低体温循環停止法の合併症として脳合併症の危険性がある1148-1150).

4.4.2 遠隔成績

国際レジストリ研究では,PEA術後1,3年生存率はそれぞれ93%,89%であり,非手術群の88%,70%と比べて有意に高く,良好であった1130).単施設からの報告では, 5 年生存率79~82%,10 年生存率75~79% であった1074, 1075, 1151).遠隔期死亡の危険因子は,術後遺残PHや術前WHO機能分類IV度があげられる1074, 1130).CannonらはmPAP≧38,PVR≧425 dyne・秒・cm -5 が遠隔期全死亡の危険因子であると報告している1074).

IshidaらはPEA術後30日生存例の検討で,遺残PH (mPAP>25 mmHg)を肺血管拡張薬やBPAで積極的に治療した結果,遺残PHは長期遠隔期全死亡に関連したが, CTEPH関連死亡には影響しなかったと報告している1151).遺残PHに対する集学的治療が勧められる.

5 内科的治療

5.1 肺血管拡張薬

5.1.1 内服薬使用の背景,根拠

CTEPHは器質化血栓により肺動脈が物理的に狭窄,閉塞する疾患であるが,前述の通りCTEPHの病態に,PAHと類似の肺動脈のmicrovasculopathyの関与が報告されている1051).このためCTEPHに対して,PAHに準じた肺血管拡張薬が有効である可能性があると考えられる.

CTEPHにおけるmicrovasculopathyはPEAやBPAではアプローチ不可能であり,手術適応外の患者やPEA術後の残存PHにおいて有効な治療手段として研究が行われてきた.その結果PAH治療薬のCTEPHにおける有効性や安全性が証明され,国内ではリオシグアト1076)とセレキシパグ1077)が保険適用されている.これらの薬剤はPEA適応外もしくはPEA術後残存,再発したPHに対して適応がある. CTEPHにおけるリオシグアトとセレキシパグなどの初期内服併用療法の有効性に関してはエビデンスがなく,今後

の研究成果が待たれる.またBPAやPEAなどで血行動態が正常化した場合のPAH治療薬内服の臨床的意義に関しても現時点では十分なエビデンスに乏しく,今後の研究が必要である.

5.1.2 リオシグアト

CHEST-1試験はリオシグアトを用いたRCTで,手術不能(70%)および持続性・再発性CTEPH(30%)の両サブグループで6分間歩行距離を有意に改善した1076).PVRの有意な改善とも関連しており,右室機能パラメータも改善することが示された1152).6分間歩行距離の改善は,長期延長試験であるCHEST-2試験に参加した患者の98%で,2年後も維持された1153).その結果,リオシグアトはPEA適応外のCTEPHおよびPEA術後の残存PHに対して承認された最初の肺血管拡張薬となった.

また,BPAとリオシグアトのmPAPに対する治療効果を比較したRCTであるMRBPA試験1120)では,BPAで有意なmPAPの低下を認めたものの,COはリオシグアトで有意な上昇を認めた.この効果は,BPAとリオシグアトのPVRへの効果を検証したRCTであるRACE試験1080)でも認められている.さらに,前述のようにRACE試験のサブ解析でBPA前にリオシグアトを開始することで,BPA関連重篤有害事象を低減したことはリオシグアト前投与を推奨する根拠となっている114).

5.1.3 セレキシパグ,およびその他のPAH治療薬

a. セレキシパグ

セレキシパグは,日本人患者対象の第II相試験で,主要評価項目(PVR)の有意な改善は認められなかったが,肺血行動態の改善傾向が認められた1154).そのため日本人CTEPH患者対象の第III相試験が実施された1077).主要評価項目(PVRのベースラインからの変化量)がプラセボ群と比較して有意に低下したことが示され,2021年に国内でのCTEPHに対する追加承認がなされた. b. その他のPAH治療薬

海外でのエビデンスとして,トレプロスチニル皮下投与が第III相RCTで検討された.手術適応外CTEPH患者またはPEA後の持続性/再発性PH患者に高用量を投与したところ,低用量投与と比較して,24週目の6分間歩行距離が改善していた1155).手術適応外のCTEPH患者のみを対象としたマシテンタン10 mgの第II相試験では,プラセボと比較して,16週と24週でPVRと6分間歩行距離をそれぞれ改善したとの報告がある1156).