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p.128 抽出テキスト

b. 肺血管拡張薬および強心薬

術後最多の合併症である肺障害は,術中の手技に関連した合併症(おもにワイヤー穿孔やバルーン損傷)

1119)に起

因するが1104, 1115),出血量増加による呼吸・循環不全の重症化は,BPA時の血行動態の重症度と関連する1093, 1115, 1118).そのため,手技前に薬物治療によって血行動態を改善しておくことが,術後の呼吸不全の重症化の抑制に有効な可能性がある.RACE試験のサブ解析では,リオシグアトを先行して投与したBPAは,BPA単独で行った場合よりも, BPA時の合併症が少なかった1080).2022年改訂版ESC/ ERSガイドラインではBPA前にリオシグアトを開始することをクラスIIaで推奨している114).

また血行動態の重症度と,術後合併症の重症度に関連があることから1093),低心拍出状態の症例に対してドブタミンの投与が経験的に行われており1099, 1118),MRBPA研究のプロトコールにおいても採用されている1120).

3.4.2 術中管理

周術期最多の合併症である肺障害は,術中の手技に関連して生じる(第9章3.3.4 術中合併症発症率と管理参照)

1104, 1115).手技関連の合併症を完全に防ぐことは困難ではあるが,術中に血痰や喀血などの顕性の症状を認める場合には,かならず手技中に止血を達成することが肝要である.止血を確認せず帰室することは,持続出血による呼吸不全重症化の危険因子となるため,避けなければならない.

3.4.3 術後管理

a. 肺障害

肺障害はBPA手技後呼吸不全の最多の原因であり, 2017年に発表されたわが国のレジストリ研究1100)では308人中17.8%で認め,うち5.5%で人工呼吸器管理,2.9%でECMO管理を要した.喀血の発生は14.0%と肺損傷より高率であり,不顕性に発症している症例もあると推察される.そのため,肺障害の発症率は,評価に用いた画像検査によって異なる.

近年実施された2 つのRCTのうち,わが国で実施されたMRBPA試験1120)では,CTで確認された低酸素血症の有無を問わない肺障害は31人中8人(26%)で,うち1人(3%)でNPPVが使用された.フランスで実施されたRACE試験1080)では,胸部X線で確認された低酸素血症を伴う肺障害を15%で認めている.また,肺障害を含めた重篤な有害事象の出現と,mPAP>45 mmHgとリオシグアト非併用BPAの2つが予測因子として同定された.

上述の通り,術後の肺障害のリスクを低下させるためには,薬物治療による血行動態の改善,術中のBPA手技に関連する合併症の低減,重症度や病変形態に応じたstaged

BPA 1113),プレッシャーカテーテルなどを用いた病変部末梢圧ガイドBPA 1108)が有用である可能性があり,治療前,手技中の工夫が重要である.まれに,治療部位以外の肺野にも一過性の浸潤影を伴う遅発性肺水腫を認めることがある.発症機序は不明ではあるが,肺障害と同様に血行動態の重症度と関連すると報告されている1098).肺障害や遅発性肺水腫により重篤な呼吸不全を認めた場合には,ネーザルハイフロー,NPPV,人工呼吸器,ECMOを状態に応じて使用し,適切な酸素化の維持に努める. b. その他

一般的なカテーテル手技に関連した合併症として,穿刺部合併症(血管損傷,血腫,動静脈瘻)や造影剤アレルギー,造影剤腎症がある.腎障害例に関してはBPA中の造影剤使用量を抑える必要があるが,BPA後にSvO2が治療前と比べて25%以上上昇した症例では,腎機能が回復する可能性がある1121).

3.5 治療成績

BPAの治療成績は,2001年にサンディエゴのグループより手術適応外のCTEPH患者18人についてはじめて報告された.mPAPは-9 mmHg改善したが,右心不全による死亡を1人認めた(死亡率5.6%)

1122).その後の報告は長ら

くケースレポートにとどまっていたが,2012年に岡山医療センターの溝口らが発表した報告では,68人の患者に対しmPAPの-21 mmHgの改善を認め,死亡率は1.5%であった1099).以後,約10年の間にわが国を中心にBPAの治療成績が報告されてきたが,近年ではBPAの広まりとともに海外からの報告も増えている1123, 1124).

わが国ではPH専門施設を中心に多くの治療成績が報告されている.2004~2013年にBPA専門施設で施行された308人の多施設データでは,mPAPは43.2±11.0 mmHgから24.3±6.4 mmHgへ,PVRは853.7±450.7 dyne・秒・cm -5 から359.5±222.6 dyne・秒・cm -5 へ改善し,PVRの低下率は-58%,30日以内の死亡率は2.6%であった1100).近年のわが国におけるBPA専門施設のデータでは,BPA後のmPAPは20 mmHg前後とほぼ正常化が達成可能となってきている.ただし,BPA前のmPAPも平均で40 mmHg以下であり,以前のレジストリと比べて血行動態が軽症な例が多くBPAを受けるようになってきたことも影響している1125-1127).

これまでの報告は,BPA前後で肺血管拡張薬を併用している症例が多く含まれていた.treatment naive患者に対するBPA単独治療の成績は,わが国で行われたBPAと肺