p.125 抽出テキスト
されている1088). さらに,デュアルエナジーCTを撮影することで,肺動脈の狭窄とそれに伴う灌流域の評価が可能である1089).また,造影CTでは肺動脈を3Dで構築することが可能であり,肺動脈の形状や血栓部位,慢性閉塞病変の部位を診断することができるため,BPAの治療戦略の検討に有用である1090).さらに,CTで肺動脈だけでなく肺実質の評価を行うことも重要である.肺実質における高度の肺気腫や肺線維化の有無を確認することで,BPAにより換気血流ミスマッチを増大させる可能性があるかどうか評価可能となる1091).最後に,CTにより主肺動脈の拡大や蛇行の有無,右室内血栓や右房内血栓の有無,右室壁肥厚や心室中隔の平坦化などの心構造の異常を評価することで,BPA施行前にCTEPHの心血管関連合併症を確認することが可能である1091).このようにBPAの治療戦略には造影CTが重要である. また,肺動脈造影もBPAの治療戦略の検討に重要である.肺動脈全体像の把握には,ピッグテールカテーテルなどを用いた肺動脈造影を行う.DSAで行う施設が多いようであるが,非サブトラクション造影でも評価可能である.正面像だけでは血管の重なりで評価困難なことも多いため,バイプレーンの撮影装置を用いて斜位を含めた多方向からの造影が望ましい.また,three-dimensional/rotational angiographyを施行することで,CTと同様に3Dで肺動脈の解剖を把握することも可能である1092).ただし,左肺動脈は心臓との重なりなどから描出が不良のことも多く,選択的肺動脈造影での評価を要することがある. 選択的肺動脈造影によりwebやband,pouchや肺動脈壁の不整,慢性閉塞病変を観察することが可能である(第5章4.12 肺動脈造影参照).川上らは肺動脈造影の形状により以下の5 つにBPA治療標的を分類した(タイプA: ring-like stenosis lesion,タイプB:web lesion,タイプC: subtotal lesion,タイプD:total occlusion lesion,タイプE:tortuous lesion) 638).この病変分類では,BPAの成功率はタイプA,Bが98.6~100%と高い一方で,タイプDは52%ともっとも低かった.合併症はタイプC,Eで高いと報告されている.これらより,BPAの合併症の少ない病変から施行することができる. さらに,選択的肺動脈造影の所見によりBPAの治療の有効性を評価することが可能である.肺動脈造影から肺静脈への灌流所見を評価するpulmonary flow gradeが提唱されている.グレード0は肺動脈が造影されない病変,グレード1は肺動脈を確認できるが狭窄後の造影剤の流速が遅い病変,グレード2は肺動脈が造影されるが肺静脈の一部しか造影されない病変,グレード3は肺動脈も肺静脈も造影される病変である1093).BPAによりグレード3 が得ら れればBPAの効果がもっとも得られたと考えられ,伊波らは69.7%の病変でグレード3 を達成できたと報告している1093). 他の画像診断として光干渉断層法(OCT) 1094),optical fre- quency domain imaging 1095),血管内超音波法(IVUS) 1096), MRI 1097)も有用と考えられるが,OCTは肺動脈末梢に灌流圧が加わり肺動脈損傷をきたす可能性があるため,注意を要する1098). 3.3 手技 肺動脈は左右19区域に分かれ,亜区域枝やその分枝を含めると多数の病変が存在する.このため,通常は複数のセッションでBPA治療を完遂する.必要なセッション数は患者によって幅があるが,一般に4~5セッションである1098-1103). 3.3.1 システムとアプローチ システムは施設による差異があるが,6~8 Frのロングシースまたはガイディングシースを肺動脈に進め,その中から6~7 Frのガイディングカテーテルを操作して目的の肺動脈を選択することが一般的である.ロングシース/ガイディングシースとガイディングカテーテルの両方を出し入れすることでシステムのカーブが調節でき,よりスムーズな肺動脈選択が可能となる.ロングシース/ガイディングシースの操作性向上,刺入部の疼痛軽減のために,ショートシースを挿入した3重のシステムを用いる施設もある. ガイディングカテーテルは目的の肺動脈によって形状を選択する.左前方の枝(左A3,4,5,8)ではJudkins LeftやAmplatz Leftなど曲がりの大きい形状を要することが多い.ガイディングカテーテルから0.014インチのガイドワイヤーを挿入し末梢へ通過させた後,バルーンで病変を拡張する. アプローチは右大腿静脈または右内頚静脈が一般的である.大腿静脈アプローチの方が管球からの距離が遠いため,術者の被曝が少なく体勢も楽である.一方,ガイディングカテーテルの操作性や安定性は内頚静脈が優れることが多い. 高身長患者での大腿静脈アプローチではロングシース/ガイディングシースを根元まで挿入することになり,ワーキングレンジを確保できないことがある.患者の状況,治療予定部位,予想される手技時間などからシステムやアプローチ部位を決定する.