p.116 抽出テキスト
PHの進行速度は,通常は緩徐である(年間1 mmHg未満のmPAP上昇) 1008).mPAP≧25 mmHgのCOPD-PHの3 年生存率は,わが国の報告では59.5% 958),PAH治療薬使用例に限定したCOMPERA registryの報告で55% 968)とされている.また,FEV1やガス交換に関する指標よりも,肺血行動態指標のほうが予後因子としては重要とされる1009). 一方,最近のレジストリからの報告では,PVR≦5 Wood単位の場合,mPAP<33 mmHgと≧33 mmHgの群の予後に差を認めるが,PVR>5 Wood単位の場合, mPAPで分けた両群間に予後の差を認めず,PVR>5 Wood単位がもっとも強い独立した予後因子であった965).これにより,2022年改訂版ESC/ERSガイドライン114)では重症PHの診断基準として用いられるようになった. 3.2 診断 心エコー図検査は,COPD-PHを非侵襲的に診断するにあたって,最初に用いられる画像診断法である.しかし,進行したCOPDにおいては,肺の含気増加(過膨張肺)のためにしばしば十分な観察ができず,精度が低いことが報告されている582, 597).重症COPD-PHにおいては,BNPまたはNT-proBNPの血漿濃度が上昇するが,中等度COPD- PHの検出感度は低い1010).RHC検査は,COPD-PH診断のゴールドスタンダードで,治療方針決定の助けになると判断される場合に推奨される114, 960, 963). 3.3 治療 基礎疾患の治療,酸素療法,呼吸器リハビリテーションプログラムなど,COPDの治療については,現行のガイドラインに従って治療すべきである960, 969). 3.4 長期酸素療法 米国Nocturnal Oxygen Therapy Trial groupによれば, PaO2 ≦55 mmHgまたはPaO2 59 mmHgで浮腫,肺性心,多血症を伴うCOPDにおいて,終日酸素投与群は,夜間のみ酸素投与群より予後が有意に改善し,PVRも改善したとされる1011).英国Medical Research Council(MRC) working partyによれば,PaO2 40~60 mmHg,高二酸化炭素血症あるいは心不全を伴うCOPDにおいて,15時間以上の酸素投与は,非投与より予後を有意に改善したとされる1012).また,1日15時間の長期酸素療法(LTOT)によりmPAPの上昇が抑制され,1日18時間を超えて使用した場合には,mPAPのわずかな低下が生じることが報告され 3.1 病態 COPDに伴うPH(COPD-PH)の有病率は,COPDの病期とPHの定義によって異なる.GOLD分類でステージIVのCOPD患者を対象とした研究では,最大90%がmPAP >20 mmHgを示していた.そのなかでは,安静時のmPAPが20~25 mmHg程度と,PHの基準を満たさない患者がもっとも多く,≧35 mmHgを呈するのは2~5%であった580, 1005).わが国のアンケート調査では,mPAP≧35 mmHgが10%と報告されている1006).COPD患者では,中等度の運動負荷でもmPAPの急激な上昇が認められ,肺血管径,血管の伸展性,あるいは血管の再疎通能力(recruitment capability)の低下を示唆する960). さらに,COPDにおける運動時PHは,併存するLHDに起因する場合がある.軽い気流制限,低酸素血症,きわめて低いDLCO,正常または低二酸化炭素血症,循環系の運動制限を特徴とする,pulmonary vascular COPD phenotypeを示す患者群が存在する959, 960).COPD患者における肺血管病変の病理組織学的変化はPHの重症度と関連しており,重症例ではPAHに類似している1007).COPD- COPD-PH PaO2 ≦60 mmHg では,長期酸素療法を行う. I A COPD に伴う重症のPH の場合,PAH 治療薬を含めた個別化治療を行う. I C COPD に伴う重症でないPH の場合, PAH 治療薬の使用は推奨されない *. III No benefit C COPD に伴うPH 患者には,トレプロスチニル吸入は使用すべきではない. III Harm B肺胞低換気症候群に伴うPH NPPV 治療を考慮する. IIa B CPAP/NPPV 治療が困難で,PaO2 55 mmHg 以下の高度呼吸不全を伴う患者に対し,在宅酸素療法を考慮してもよい. IIb C睡眠時無呼吸症候群に伴うPH適応基準を満たす睡眠呼吸障害患者に対し,CPAP 療法を考慮する. IIa B重症夜間低換気を呈する患者に対し, NPPV 治療を考慮する. IIa B肥満患者に対しては,減量指導を考慮してもよい. IIb C *閉塞性/拘束性換気障害軽度,胸部CT画像での肺病変の程度が軽度(pulmonary vascular phenotype)の場合を除く.