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p.112 抽出テキスト

シルデナフィルを用いたRELAX試験では,主要評価項目(運動耐容能)の改善は示せなかった947).しかし,対象をCpc-PHに絞った試験では6分間歩行距離,肺血行動態,右心機能の改善が示された948).Guazziらの試験においても,PVRが高く,右心機能の悪いHFpEF患者においてPAWP,PVRと右心機能も改善された949).リオシグアトのDYNAMIC試験では,26週での主要評価項目(CO)は改善したものの,運動耐容能やQOLの改善は示すことはできなかった950).

HFpEFを対象に心房間シャントデバイスを用いたREDUCE LAP-HF II試験では,その有効性は示されなかった951).しかし,一部の患者においてPVRや肺動脈エラスタンスと肺動脈コンプライアンスの改善を認め,肺血管機能の改善が示されている.

肺動脈デナベーションはPAHに効果を示す報告が多数出ているが952),Cpc-PHに対してもシルデナフィル群と比較してPVRの低下と運動耐容能の改善を示したと報告されている953).心臓弁膜症に合併したPHに関して,第一選択は弁膜修

復治療であり,血行動態的改善が得られる954).しかし,弁膜症が改善した後の持続的なPHは不良予後と関連する935, 955).機能性僧帽弁逆流はHFrEFおよびHFpEFの両方で発生する.「2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン」956)においても,心不全症状に関連する重症の僧帽弁逆流に対しての治療を考慮することが推奨されており, HFrEF患者において血行動態を改善するうえで重要な役割を果たす954).大動脈弁狭窄患者では,大動脈弁修復前のPHが長期予後の悪化と関連している929-934).手術後のPHの持続は中等度でも不良な予後と関連するが,手術後のPHに対してのシルデナフィルの投与はプラセボと比較し悪化を示した929-934, 957).

以上より,PH-LHDに対し積極的な肺血管拡張薬の使用は推奨されないが,重度の前毛細血管成分(おおむねPVR>5 Wood単位)を伴うLHD患者への個別化治療の可能性は専門医の判断にゆだねられる.少なくともIpc-PHへの肺血管拡張薬の使用は避けるべきである.

第8章 第3群 肺疾患および/または

低酸素血症に伴うPH

1 概要

慢性肺疾患および/または低酸素血症に伴うPH(第3群)では,COPD,肺気腫,ILD,CPFE,非肺実質性拘束性肺疾患に分類される低換気症候群,肺疾患を伴わない低酸素血症(高所など)を取り上げる.

どの病型に関しても正確なPH併存率は不明であるが,臨床的にはCOPD,特発性肺線維症(IPF),CPFE,膠原病による間質性肺炎に伴うPHに遭遇する機会が多い958).第3群のPHには,閉塞性/拘束性換気障害が軽度,胸部CT画像での肺病変の程度が軽度で,肺血管障害の関与が大きいpulmonary vascular phenotypeがあり,併存疾患として肺疾患があるPAHとの境界は不明瞭である959-961).また,肺血管拡張薬を使用している第3群と肺疾患合併

PAHの臨床的特徴は類似し,予後に差がないとされる676).典型的な第3群とPAHは,呼吸機能障害の程度(第3群では,%FVC<70%または%FEV 1<60%),画像における肺病変の程度から鑑別され,第3群では,おもな運動制限因子が換気障害により,DLCOの低下の程度が換気障害の程度と一致する.一方,PAHは,おもに運動制限が循環障害により,換気障害に比べてDLCOが低値である960).診断は,他のPHと同様に心エコー図検査で評価を行うが,進行した肺疾患患者では測定不能例が多く,精度も低いことが報告されている582, 597).

最近のデータでは,RA面積,RV:LV比,LV偏心指数を含む他の心エコー図像の特徴を用いて,TRVの推定値の有無にかかわらず,重症PH患者を識別できることが示唆されている962).RHC検査は確定診断には必須であるものの,肺移植や肺容量減量手術を考慮の患者,PAHや