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第7章 第2群 LHDに伴うPH 左室充満圧,あるいは左房圧の上昇を伴うさまざまな左心性心疾患において,これらが肺毛細管を介して肺動脈系に伝搬されることによって肺高血圧が生じる.このようなpost-capillaryな肺高血圧は一般に可逆性だが,ここに肺動脈の反応性収縮,さらにはリモデリングが加わると不可逆性となる. 左心性心疾患(LHD)にPHが合併すると,心疾患の予後悪化の要因となるが,このことはHFpEFでも例外ではない.治療としては,原因となるLHDに対して適切な治療を行い,左室充満圧あるいは左房圧を下げることが重要である.肺血管拡張薬による治療も試みられているが,明らかな有効性が示された薬剤はないため,安易な使用は控えるべきである.しかし,PVRが高度に上昇している場合(おおむね5 Wood単位以上)には,重度の前毛細管性の要素が存在することが示唆されるため,PH専門施設で管理することが望ましい. 1 定義 LHDを主因とした肺静脈圧の上昇によるPHは第2群(PH-LHD)に分類され,PHのなかでもっとも多い114). PH-LHDは背景疾患別に分類される(表26). PH-LHDはさらに,PVR上昇を伴わないisolated postcapillary PH(IpcPH)と,伴うcombined pre- and postcapillary PH(CpcPH)に分類される.すなわちIpcPH:mPAP>20 mmHg,PAWP>15 mmHg,PVR ≦2 Wood単位CpcPH:mPAP >20 mmHg,PAWP >15 mmHg, PVR>2 Wood単位となる.なお,かつてはIpcPHとCpcPHの分類に「dPAP-PAWP」によって定義される拡張期圧較差(DPG)が用いられていたが(DPG<7はIpcPH,≧7はCpcPH), DPGは予後予測には有用でないとの報告があり,近年では用いられなくなった913). なお,PVR>5 Wood単位は特に予後不良を示唆するとされる913).このような場合にはPH専門施設で管理するこ とが望ましい. 2 機序 先述のように,さまざまなLHDによってpost-capillaryなPHがもたらされる.PH-LHDの発症機序を図23 に示す.左心不全はHFrEFとHFpEFに分けられるが,いずれの場合も左室充満圧,左房圧は上昇し,肺静脈から肺毛細血管を介して肺動脈系に伝搬され,PAPが上昇する.この段階では肺高血圧は可逆性で,治療により左房圧が下がればPAPも低下する.しかし,この状態が長期にわたって持続すると,肺動脈の反応性収縮が起こり,PHが進行する.肺動脈のリモデリングが生じると肺高血圧はさらに進行し,不可逆性となってしまう. このようにリモデリングを生じ肺静脈圧の上昇では説明できないほどのPHをきたした状態はreactiveと表現され,単に肺静脈圧の反映にとどまるpassiveと区別される. PVR上昇を伴うPH-LHDは右室の後負荷を増大させ,予後不良の要因となる. 3 疫学 PH-LHDはPHのなかでもっとも多く,欧米の統計では左心機能不全患者の26~80%がPHを合併すると報告されている914-916).わが国におけるRHC検査データにもとづく報告では,20~40%であった917, 918).観察研究によれば, PHの合併はHFrEF患者では40~72%,HFpEF患者では36~83%と推定されている919, 920).LHDにおいて,PAPおよびPVRの上昇は予後不良と関連し,pcPHにおいては, PVRが2.2 Wood単位以上は予後不良と関連している917, 921-924). HFrEF,HFpEFともに,PH-LHDの合併は予後不良の