p.108 抽出テキスト
ず病状が進行している場合に肺移植施設への紹介,さらに肺移植待機リスト登録を推奨している点では変わりない.ただし,この間にPAH患者のリスク層別化において大きな進歩があったため,2021年のコンセンサス・ドキュメントには,この知見が反映されている.現在,もっとも多く使用される2 つのリスク評価モデルは,REVEAL 2.0 912)と, 2015年版ESC/ERSモデル764)である. PAH患者における腎障害や肝障害は,予後の高危険因子である.これらは移植後に改善することが多い.家族性PAH,PVOD,CTD-PAH,ILDに伴うCTD-PH,治療中の急速な進行,喀血も強力な危険因子である911).原疾患 にかかわらず,LVEF<40%は肺移植後予後の強力な危険因子である911).PAH患者における肺移植適応の判断には,上述のISHLTコンセンサス・ドキュメントが参考になるが,待機期間が長期となるわが国においては,コンセンサス・ドキュメントにおけるreferralのタイミングでlistingを行うことが現実的かもしれない.このためには,さらに早期の段階で患者をPH専門施設や肺移植施設に紹介することを考慮する必要がある. 表37 肺移植レシピエントの適応基準 I. 一般適応指針 I.一般適応指針1) 治療に反応しない慢性進行性肺疾患で,肺移植以外に患者の生命を救う有効な治療手段が他にない. 2) 移植医療を行わなければ,残存余命が限定されると臨床医学的に判断される. 3) レシピエントの年齢が,原則として,両肺移植の場合55歳未満,片肺移植の場合には60歳未満である. 4) レシピエント本人が精神的に安定しており,移植医療の必要性を認識し,これに対して積極的態度を示すとともに,家族及び患者をとりまく環境に十分な協力体制が期待できる.レシピエント症例が移植手術後の定期的検査と,それに基づく免疫抑制療法の必要性を理解でき,心理学的・身体的に十分耐えられる. (肺移植関連学会協議会.2023 907)より)表38 肺移植レシピエントの適応基準 III. 除外条件 III.除外条件1) 肺外に活動性の感染巣が存在する. 2) 他の重要臓器に進行した不可逆的障害が存在する.悪性疾患 骨髄疾患冠動脈疾患 高度胸郭変形症筋・神経疾患肝疾患(T-Bil>2.5 mg/dl)腎疾患(Cr>1.5 mg/dl,Ccr<50 ml/min) 3) 極めて悪化した栄養状態. 4) 最近まで喫煙していた症例. 5) 極端な肥満. 6) リハビリテーションが行えない,またはその能力の期待できない症例. 7) 精神社会生活上に重要な障害の存在. 8) アルコールを含む薬物依存症の存在. 9) 本人及び家族の理解と協力が得られない. 10) 有効な治療法のない各種出血性疾患及び凝固能異常. 11) 胸郭に広汎な癒着や瘢痕の存在. (肺移植関連学会協議会.2023 907)より) 表39 2021 年のISHLT コンセンサス・ドキュメントによるPAH に対する肺の移植の適応 referral(肺高血圧専門施設または肺移植施設への紹介)のタイミング(エビデンスレベルC/ 推奨クラスI)・ 適切なPAH治療にもかかわらず,ESC/ERS中等度または高リスクまたはREVEALリスクスコア8・ 適切なPAH治療にもかかわらず,著明な右心不全がある・ 静注または皮下注によるプロスタサイクリン療法が必要な場合・ 適切な治療にもかかわらず病勢が進行している,またはPAH悪化のため最近入院した場合・ PVOD/PCH,強皮症,大きく進行性の肺動脈瘤などの高危険因子の存在,またはそれが疑われる場合・ PAHによる二次性肝機能障害または腎機能障害の徴候がある・ 再発性の喀血など生命を脅かす可能性のある合併症の存在listing(肺移植待機リスト登録)のタイミング(エビデンスレベルC/ 推奨クラスI)・ プロスタサイクリンアナログの静注または皮下注療法を含む適切なPAH治療を受けているにもかかわらず, ESC/ERS高リスクまたはREVEALリスクスコア>10の場合・ 進行性の低酸素血症,特にPVODまたはPCHを有する患者の場合・ 進行性だが末期ではないPAHによる肝機能障害または腎機能障害を有する場合・ 生命を脅かす喀血(Weill D, et al. 2015 910),Leard LE, et al. 2021 911)を参考に作表)