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p.105 抽出テキスト

徴的な臨床所見にもとづいて早期に臨床診断を行い,治療方針の決定には肺移植適応を含め検討すべきである.

10.1 疫学,成因,予後

PVODの有病率は人口100万人あたり1~2人と推測され,家族性PVODでは診断時の年齢がおもに20代と若く,男女差がないのに対し,孤発例は男性に多く,年齢も高い891).予後は症状発現から約2年で右心不全や呼吸不全により死亡する例が多いが,急速に悪化して数ヵ月で死の転帰をとることもある610, 892, 893).PVOD/PCHの成因の詳細は未解明だが,家族性および一部の孤発例でEIF2AK4遺伝子の変異が報告されている888, 894).

また,有機溶媒,特にトリクロロエチレンへの職業性曝露895),抗がん剤(マイトマイシンC,CYCなど) 896, 897),強皮症,ウイルス感染や喫煙,骨髄移植などとPVOD/PCH発症との関連が指摘されている.

10.2 病理

PVODの病理像の特徴は,末梢肺静脈の閉塞性病変である898).肺静脈の中膜平滑筋が発達し,筋性動脈様に肥厚する(図21A).外膜の線維性肥厚も起こり,外弾性板が多層化する.PAPの上昇により肺動脈にも中膜と内膜の肥厚がみられるが,叢状病変はほとんど出現しない.肺胞中隔から小葉間静脈(interlobular vein)の線維化および葉間胸膜内の静脈閉塞もみられる(図21B).肺静脈病変だけでなく,肺毛細血管腫様病変である,毛細血管の散在性のうっ血,毛細血管の増生を認めることがある(図21C).拡張した毛細血管の破綻による出血から,肺胞内にヘモジデリンを貪食したマクロファージを多数認め,間質の浮腫,リンパ管の拡大を認める(図21D).リンパ節腫脹もしばしば認められる.強皮症や抗がん剤投与例などにも肺静脈の閉塞が観察されることがあり,これは炎症や線維化に起因すると考えられる899).

PCHの病理像の特徴は,肺胞壁に存在する毛細血管の血管腫様病変である900, 901).毛細血管の散在性のうっ血,正常部位とは明らかに異なる毛細血管の増生を認める.毛細血管の著明な増生(ときに5層以上になる)により肺胞中隔が厚くなる(図22).肺胞内にヘモジデリンを貪食したマクロファージを多数認める.

10.3 臨床診断

確定診断は病理学的になされるが,肺生検は危険性が高いため,臨床所見にもとづいて臨床的に診断することが

推奨される(表36) 902).PAHに比較して,酸素飽和度の安静時の低下や軽労作時の著明な低下が目立つ.また,呼吸機能検査が正常だが肺拡散能の指標である%DLCOが低値といった所見(理論値の50%未満)は,診断に有用である.

胸部単純X線では,すりガラス陰影やカーリーB線などがみられる.高分解能CTでは,胸膜直下の小葉間隔壁肥厚,小葉中心性のすりガラス陰影,縦隔リンパ節腫大の3徴候が診断に有用である903).肺換気血流シンチグラムでは,亜区域性の血流欠損(上葉に多い)を認める例がある. RHC検査では前毛細血管性PHの特徴を示し,PAWPも通常は正常範囲内である892).急性血管反応試験は肺水腫をきたす危険性があり,本症が疑われる場合には推奨されない892).気管支鏡検査におけるBAL液ではヘモジデリンを含むマクロファージを認める904).以上の所見を含む診断基準902)を参考にPVOD/PCHの診断を行っていく.

10.4 治療

PVOD/PCHともに根本的な治療は肺移植のみである.診断後早期に治療経験の豊富な施設との連携をはかり,希望があれば早期に肺移植登録を行う.PVOD/PCHに対する治療薬の有効性は確立されておらず,肺水腫を起こす危険性もあるため,十分な経験のある施設でのみ治療を行うべきである.低用量エポプロステノールの慎重投与が移植へのブリッジ治療となりうるとの報告もある900, 905).2025年3月現在保険適用外であるが,少数例でイマチニブの有効性も報告されている906).

11 肺移植

11.1 一般的な適応

肺移植レシピエントの適応基準は,1997年に肺・心肺移植関連学会協議会により「肺・心肺移植レシピエント適応基準」として公表された.2015年に「肺移植レシピエント適応基準」と改称され,適応疾患分類の改訂が行われた. 2023年には,抗HIV治療薬の進歩を背景として「HIV (human immunodeficiency virus)抗体陽性」を除外条件から外す改訂が行われた907).肺移植レシピエントの適応基準は,I 一般的適応指針(表37) 907),II 適応となり得る疾患,III 除外条件(表38) 907)より成っている.肺移植の