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p.104 抽出テキスト

なくともPAH病変部位には存在せず,炎症機転などを介して間接的にPAHの病変形成に関わる878),あるいは併存疾患や薬剤が部分的に関わると考えられている879).

9.2 診断

HIV関連PAHの臨床像はIPAHに類似する.無症状のHIV感染者にPHのスクリーニング検査を行う必要はないが,原因不明の呼吸困難などがみられた場合には,PHを含む循環器疾患の検索を目的にBNP/NT-proBNPの測定や心エコー図検査を行う.HIV感染者へのPAHの合併は男性,経静脈薬物乱用者に多い880, 881).また診断の際にはB/C型肝炎などの肝疾患や薬物,毒物への曝露など,PAHの他の危険因子を有する場合が多いことにも注意が必要である.近年の抗ウイルス薬やPAH特異的治療薬の進歩により,PAH関連HIV患者の予後は他のPAH患者よりも良好であるとされるが881),他群と同様に早期診断が重要である.

9.3 治療方針

HIV関連PAHに対する治療では,後ろ向き研究ではあるもののHIVに対する抗ウイルス薬の使用(HAART療法)がPHの機能状態および生存率を改善することが示されている.したがって,ウイルス量およびCD4 +細胞数に関係なく,第一にHIVに対するHAART療法が推奨される114, 882, 883).PAH治療薬をHIV治療薬であるプロテアーゼ阻害薬と併用する際には,後者のCYP3A4阻害作用により前者の血中濃度が高まり,副作用発現率が上昇する可能性がある.HIV治療薬には多くの併用禁忌薬,併用注意薬があり,PAH治療薬においても薬物治療にあたっては少量から開始するなどの注意が必要である.

PAH治療薬の用法・用量はIPAHでの使用方法に準じるが,HAART療法との薬物相互作用も考慮しながら単剤から治療を開始し,リスク層別化指標などから効果が不十分

な場合には併用療法を検討する114).

PAH経口薬による治療エビデンスに関しては第1世代の薬剤のエビデンスが多く,ボセンタンは少数,短期のオープンラベル試験で症状や血行動態およびQOLが有意に改善し884),長期的な血行動態への有効性も報告されている885).PDE5阻害薬についてはシルデナフィルが有効であったとする少数例での報告がある886, 887).エポプロステノールはWHO機能分類,運動耐容能,血行動態,および生存率に有意な改善をもたらした880).最近の薬剤を用いた多剤併用療法の有効性,安全性を含め,今後のデータの蓄積が望まれる.

10 PVOD/PCHの特徴をもつPAH

(推奨表33)

肺静脈病変を合併するPAH(PVODおよびPCH)はいずれも,肺細動脈より末梢の異常に伴ってPHを呈する疾患であるが,症例によって程度の差はあれ肺動脈病変も伴うため,PAHスペクトラムとしてとらえられている.真核生物翻訳開始因子2αキナーゼ4(EIF2AK4)遺伝子が疾患関連遺伝子として報告されている888-890).

PAHにおいて高度低酸素血症,肺拡散能の低値,胸部高分解能CT所見(小葉間隔壁の肥厚,小葉中心性のすりガラス陰影/結節陰影,縦隔リンパ節腫大)は肺静脈/毛細血管病変の存在を疑う所見である610, 889, 890).

肺血管拡張薬による肺水腫の危険性があることなどから,その使用においては注意が必要である.確定診断は病理組織所見をもって行われるが,予後不良であるため,特

推奨表32 HIV 関連PAH の治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

HIV 関連PAH に対する治療では,HIV に対する抗ウイルス薬(HAART 療法)を使用する. I A HIV 関連PAH に対するPAH 治療薬は,薬物相互作用に注意しながら単剤で開始し,治療効果が不十分な場合には併用療法を考慮する. IIa C推奨表33 PVOD/PCH の診断,治療に関する推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

PVOD/PCH の診断には,臨床所見,画像所見,生理学的検査所見,遺伝学的検査を組み合わせた,包括的な臨床診断を行う. I B PVOD/PCH の診断が確定した場合は肺移植を検討する. I C PVOD/PCH 患者では,注意深い監視のもとで,肺血管拡張薬による治療を考慮してもよい. IIb C肺生検によるPVOD/PCH の診断確定は危険性が高いため,推奨されない. III No benefit C