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ACHDにおけるシャント閉鎖の決定は,Qp/QsとPVRの数値だけで行うべきではなく,総合的な適応評価が重要である.特に基礎心疾患における右心,左心機能,房室弁逆流の程度,肝臓,腎臓を主体とした腹部臓器の状態,6分間歩行検査などでの運動機能評価など,薬物治療介入前に専門的医療チームで評価する必要がある114, 829). PAHを合併したACHD患者は,全身麻酔を必要とする非心臓手術において,脱水や出血,VTE,肺感染症など,さまざまな状況で急速な血行動態悪化を呈する可能性がある.非心臓手術ではその適応を慎重に判断し,ACHDとPAHの経験が豊富な麻酔科医のいるACHD専門施設で実施することが望ましい838).チアノーゼが存在しても通常の予防接種は可能であり,発症によって全身状態の悪化を招く可能性ある感染症は積極的な予防を心がける必要がある. PAHを合併したACHD患者の妊娠・出産には母体死亡率と胎児合併症の両方と高い関連が報告されており,一般的に禁忌と考えられている851).しかし近年,PAHに対する薬物治療の進歩により,安定した良好なコントロールが得られている妊娠中のPAH患者は,専門的医療チームの管理のもとで妊娠・出産が可能であるとの報告がある.ただし,アイゼンメンジャー症候群のような高度PAHを合併した例では,妊娠は依然として高い母体死亡率と胎児合併症の両方と関連しており,妊娠すること自体が危険である851, 852).しかし現実には,左右短絡を伴ったACHD患者が妊娠した後で専門外来を受診することや,妊娠・出産を希望する患者の強い要望への対応に苦慮することがある. 妊娠中の血栓塞栓や出血,喀血リスク,妊娠経過中には比較的安定した血行動態を呈しても分娩後に急速な循環動態の破綻が起こる可能性があること,一部の肺血管作動薬による催奇形性など,患者本人とパートナー,周囲の関係者を含め客観的で慎重なカウンセリングが必要である. PAH合併ACHD患者には妊娠前にプレコンセプションカウンセリングを行い,妊娠・出産に伴うリスクを理解してもらう必要がある.安全な避妊法として子宮内避妊具が推奨されている853, 854). 右左短絡に伴う二次性赤血球増加は,十分な酸素運搬および分娩に有益であり,安易に瀉血を行う必要はない.ヘマトクリット値が65%を超えるような過粘稠症候群の症状には,適切な水分補給が望ましい.相対的な鉄欠乏状態にある場合もあり,必要に応じ鉄剤の補充を行う必要がある.ワルファリンやDOACを用いた抗血栓療法には出血性合併症発症率を上昇させる危険性もあるため,積極的な推奨はない855). ACHD関連PAH患者におけるPAH治療薬として承認されている薬剤の使用に関するデータは限られている.ボセンタンは,WHO機能分類III度のアイゼンメンジャー症候 群患者において6分間歩行距離を改善し,PVRを低下させることが確認された856).マシテンタンの有効性を検討した試験では,アイゼンメンジャー症候群患者において,NTproBNPとPVRの低下が認められたものの,6分間歩行距離は対照群と比較し,有意な効果は認められなかった857).また,セレキシパグを用いたRCTも報告されている858, 859).チアノーゼや右心不全症状が持続する場合,あるいは臨床的に悪化する場合には,ERA(またはPDE5阻害薬)の経口投与を開始し,治療効果を評価しながら薬物治療を追加する逐次的薬物治療が行われることが多く,治療開始後のカテーテル検査や臨床症状評価を行いながらの治療戦略が推奨される842, 860).国内では治療初期からの多剤併用療法の有効性も報告されている782, 861). いずれにしても,PAHを合併したACHD患者の薬物療法には,IPAHの薬物療法に準じた治療戦略が必要である. PAHを合併したACHD患者の薬物療法を有効かつ安全に開始するためにはIPAHの治療経験を有するPH専門医とACHD専門医との共同作業が推奨される114).経口療法で症状が十分に改善しない場合は,吸入や非経口プロスタサイクリン系薬剤を選択することができる. 肺動脈圧としてはPAHとして診断されないが,フォンタン手術後の肺循環は,ごくわずかのPVRの改善が術後の血行動態に大きく影響する.ただし,肺血管作動薬の有効性には十分なエビデンスが確立されていない114, 829). 8 薬物・毒物誘発性のPAH(推奨表31) PAHの発症の危険因子として複数の薬物,毒物が特定されており,第6回肺高血圧症ワールドシンポジウム(2018年) 6)以降では,集団発生,疫学的な症例対照研究,大規模な多施設共同研究などにもとづいた薬剤を「確実な関連 推奨表31 薬物・毒物誘発性のPAH の治療に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 薬物・毒物誘発性のPAH を疑った場合,可能なかぎりすみやかに原因と考えられる薬剤を中止する. I C薬物・毒物誘発性のPAH の場合,血行動態が重症であれば,薬剤の中止に加え, IPAH の治療アルゴリズムに準じた肺血管拡張薬の投与を考慮する. IIa C