p.8 抽出テキスト
1.2 UKの供給不足問題 このようなわが国の特殊な状況下において,2021年にUKの原薬が規格不適合となり製造が困難となったことが報告され,UKの供給が突然に停止されることになった.この状況に危機感を抱いた各種関連学会から声が上がり,日本血管外科学会,日本心血管インターベンション治療学会(CVIT),日本インターベンショナルラジオロジー(IVR)学会,および日本静脈学会の4学会から,1)血栓吸引デバイスの早期薬事承認,2)急性下肢(または上肢)動脈血栓症,急性上腸間膜動脈(SMA)血栓症,有痛性青股腫を呈する重症な急性深部静脈血栓症の病態に対してのtPAの適応外使用の承認,3)時間をかけてでもUK製剤の供給再開を切望すること,が共同提案された.その後,医療機器等の早期導入に関する要望書が厚生労働省に提出され,6学会(日本血管外科学会,日本IVR学会,CVIT,日本静脈学会,日本消化器外科学会,日本腹部救急医学会)からなる末梢血管血栓吸引・除去デバイス関連学会協議会にて,急性下肢動脈閉塞,急性SMA閉塞症,および急性深部静脈血栓症の3疾患に関して新たな血栓吸引および血栓除去デバイスの導入が進められてきた.これにより,上記3疾患に対するINDIGOシステム(Penumbra社)の使用が2023年9月1日に保険収載されることとなった. しかしながら,tPAの保険上の末梢動静脈血栓性疾患への適応拡大の動きは認められていない.一方,UKに関しては,2024年5月に新たに精製工程を追加することにより規格に適合した原薬を確保することが可能となったが,従来の供給量には到底及ばず,引き続き厳しい出荷制限が続くことが予想される. 1.3 周術期の薬物治療 血栓溶解薬を使用したCDT中の未分画ヘパリン持続投与の併用に関しては,出血リスクを増加させるとの報告がある一方で,出血性合併症との因果関係がないとの報告も存在する.未分画ヘパリンの併用は留置カテーテルの周囲の血栓形成や,使用シースの閉塞を防ぐという意味で妥当と考えるが,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)値が正常上限の2倍以上となるような過度な投与量は控える9).また周術期の補助治療として,プロスタグランジンE製剤が周術期死亡率を有意に低下させたとの報告が散見されるものの,エビデンスレベルは低く10),わが国における使用機会は限定的である. 1.4 今後の方向性 UKの供給停止に伴い新規の血栓吸引デバイスが保険収載されたことは,今後の更なる高齢化とそれに伴う癌サバイバーの増加が確実であることを考慮すると,福音ともいえる11).高齢者や癌サバイバーは典型的な出血高リスク者であり,血栓溶解薬を極力使用せずに血栓吸引除去デバイスで治療を完結させることは理想的な治療といえる.しかし,わが国において血栓溶解薬を使用しない状況での新規血栓吸引デバイスの有効性と安全性は未知であるため,今後それを評価していく必要がある12, 13).一方で,臨床現場においては,血栓溶解療法やCDTの必要性は存在するため,引き続き症例を限定したうえで,血栓除去術後の補助療法としての使用が継続されることが予想される.この点から,末梢動静脈血栓疾患に対するtPAの適応拡大が必要であろう. 2 血栓吸引デバイスについて 「1.2 UKの供給不足問題」に記載したとおり,INDIGOシステムが異例の早さで承認された.そして,関連学会の定める適正使用指針を遵守し,十分に理解したうえで使用することが求められ,急性SMA塞栓症とALIについては適正使用指針が作成された.現在,全例登録を必要とする製造後販売調査が行われている.以上のように,INDIGOシステムの導入は通常の承認の過程を経ておらず,その治療には十分に安全性に留意して使用する必要がある. 3 急性下肢動脈閉塞の治療方針 推奨表1急性肢虚血/ 急性下肢虚血(ALI)の治療方針の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル ALI と診断された患者には,速やかにヘパリンを投与する14, 15). I C ALI に対しては,血管造影が可能な手術室で手術を行う16). I C ALI の手術では,血行再建後に血管造影を行う16, 17). I C