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p.5 抽出テキスト

緒言

「末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン」の初版が2009年に刊行され,2015年に改訂版が発刊された.その後,末梢動脈疾患(PAD)の疾病構造や疾患概念が大きく変化するとともに,新たな診断アルゴリズムや分類法の登場,治療デバイスの進歩,患者背景にある生活習慣病管理や治療薬の進歩など,さまざまな変革があり,2022年に以前のガイドラインから大幅な改訂が行われ,「2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドライン」1)(以下,2022年改訂版)として発行された.

2022年改訂版1)の発行後に,PAD治療のなかで重要な位置を占める包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)・重症下肢虚血(CLI)の血行再建に関する大規模無作為化比較試験(RCT)が複数報告された.また,急性動脈閉塞においてわが国における薬物治療の一翼を担ってきていたウロキナーゼ(UK)が供給されない状況に陥り,下肢のみならず腸管虚血を含めた治療方針が変化する状況に至った.そしてこれまで一定の見解がなされなかったPADに対する血行再建術後の抗凝固療法について,欧米を中心にアジアを含めた大規模RCTが報告された.さらに,CLTI・CLIの症例に一定数認められる血行再建不能症例に対する深部静脈動脈化(distal venous arterialization/deep venous arterialization: DVA)についても多施設前向き研究が報告された.前回の改訂から3年と短期間ではあるものの,いずれもPAD治療に変化をもたらす報告である。これまでに比べて小規模な改訂にはなるが,これら4項目に関するフォーカスアップデート版を作成することになった.

本フォーカスアップデート版は,上記4項目において,これまでのRCTと多施設前向き研究の結果を中心に,わが国で安全な治療を行うことができるようにすることを目的として作成するが,わが国での知見が少ない状況での作成とならざるを得ない.このため,本フォーカスアップデート版では推奨クラスやエビデンスレベルを無理には記載せず,可能な範囲で記載することとし,十分でない状況の場合には,あくまで現状からのエキスパートコンセンサスとして提示することとした.これまでの日本循環器学会ガイドラインのフォーカスアップデート版では,主としてアップデートされた内容のみに限定して報告されているが,今回の「急性動脈閉塞」については,アップデートされた分

野に限定した場合,治療としての一貫性・適切さを十分には反映されない内容になるため,実臨床において適切な治療が行われるようにするべく,これまでのガイドラインの内容も含めて記載した.

本フォーカスアップデート版では,推奨クラスとエビデンスレベルを2022年改訂版1)と同様に,表1および表2の通り分類して記載した.

最後に,本フォーカスアップデート版の役割は,他の日本循環器学会ガイドラインと同様に,日常診療において最新の治療を安全かつ有効に実施できるような情報を提供することである.しかしPADの実臨床においては,とくに患者やその臨床背景はさまざまであり,治療に対する反応も多様であることから,画一的な治療が難しい.具体的な治療や管理に関する最終判断においては,担当医師や医療スタッフが,患者やその家族と個々に目標を設定し,情報共有・意思共有を適宜行いながら治療方針を決定していく必

表1推奨クラス分類

クラスI手技・治療が有効・有用であるというエビデンスがある,あるいは見解が広く一致している.クラスIIaエビデンス・見解から,有効・有用である可能性が高い.クラスIIbエビデンス・見解から,有効性・有用性がそれほど確立されていない.

クラスIII No benefit手技・治療が有効・有用でないとのエビデンスがある.あるいは見解が広く一致している.クラスIII

Harm手技・治療が有害であるとのエビデンスがある,あるいは見解が広く一致している.

表2エビデンスレベル

レベルA複数の無作為化介入臨床試験またはメタ解析で実証されたものレベルB単一の無作為化介入臨床試験または無作為化介入でない大規模な臨床試験で実証されたものレベルC専門家および/ または小規模臨床研究(後ろ向き研究および登録を含む)で意見が一致したもの