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p.21 抽出テキスト

脈への自家静脈バイパス術とEVTを比較したRCTであり,現状の治療法に則して再評価したものである.BASIL試験もBASIL-2試験も主要評価項目は一貫してAFSである.

BASIL-2試験の結果は2023年に発表された.3ヵ国, 41 の血管外科施設が参加し,172人が静脈バイパス群, 173人がEVT群に割り付けられた.2014年から2020年に行われ,追跡期間中央値40ヵ月間における死亡または大切断の発生は,外科的バイパス群で108人(63%),EVT群で92人(53%)であり(ハザード比1.35,95%CI 1.02~ 1.80,P=0.037),その発生率は有意差をもってEVT群が低かった.全死亡率は外科的バイパス群が53%,EVT群は45%で,外科的バイパス群で高かった(ハザード比1.37, 95%CI 1.00~1.87).再血行再建率は外科的バイパス群が5%,EVT群が19%(リスク比0.27,95%CI 0.13~0.55)とEVT群が高かった.クロスオーバー治療は外科的バイパス群が46人(27%),EVT群が33人(19%)に行われたが(リスク比1.43,95%CI 0.94~2.18),この結果は主要評価項目には含まれていない.この点がBEST-CLI試験との違いである.BASIL-2試験では,治療戦略として最適なEVTを最初に行う方がAFSを向上させるとしており,これはとくにEVT群の死亡数が少ないことが寄与していた.

3 まとめ

BEST-CLI試験では,良好な静脈資源がある患者ではバイパス群がEVT 群より良好な結果であったとし, BASIL-2試験ではEVT-firstアプローチはバイパスfirstアプローチより良好な結果であった.同じCLTIを対象に行った2つの大規模臨床試験で相反するような結果が提示された.

この結果を臨床に適切に生かすためには,2つの試験の違いを理解することが重要になる.もっとも重要な違いと

して,BEST-CLI試験の主要評価項目が全死亡またはMALEの複合であったのに対し,BASIL-2試験ではAFSであった点があげられる.BASIL-2試験では,大切断率はEVT群とバイパス群で差はなく,おもにEVT群の死亡率の低さ(45% vs. 53%)が主要評価項目の差異に起因した.バイパス群は全身麻酔であり,周術期合併症が死亡率に関連したと考えやすいが,実際には30日死亡率は両群で差はなく,BASIL-2試験の主要評価項目であるAFSの差は,おもに慢性期死亡率の差によるものであった.解析がintention to treat解析であり,バイパス群で実際手術を受けたのは84%(145/172人)であったこと,透析例(6% vs. 3%)や心筋梗塞の既往(24% vs. 13%)がバイパス群の方が高率だったことに起因した可能性が考察されている.一方,BEST-CLI試験のコホート1にはBASIL-2試験の4倍以上の患者が登録されているが,患者年齢はより若く, Rutherford分類5 が少なかったなど,全体としてBEST- CLI試験は疾患の重篤性がBASIL-2試験より低めで,それに伴う死亡率の低さが晩期の再治療率に影響を与えたのではないかと推察できる.また,膝窩動脈以下の血行再建術はBASIL-2試験では必須であったが,BEST-CLI試験のコホート1では60%程度しか施行されなかった点も,バイパス優位な結果に影響したのではないかと考えられている.両試験ともにコロナウイルスのパンデミックにより登録が滞り,当初予定していたサンプルサイズを達成できなかったことが限界としてあげられる.

CLTI患者に対してEVT-firstとバイパスfirstのどちらがよいのかに関して,わが国で実施されたSPINACH研究で示されたように,患肢,患者の重症度を勘案して治療戦略を選択すべきであるという基本的な考え方が変わるものではなく,どちらの治療にも精通した下肢チームが個々の患者に合わせて最適な選択をすべきであることが,改めて両試験で示された.