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p.15 抽出テキスト

め,基本的には推奨されない.したがって,外科手術後のアスピリン内服への恒常的な抗凝固薬(ワルファリン)の追加投与は推奨されない63, 64).

1.2 自家静脈を用いたバイパス術後

自家静脈グラフトに関しては,人工血管グラフトと比較すると抗血栓療法が開存率に与える影響に関するエビデンスは乏しいが58),心血管イベントの二次予防の観点から,抗血小板薬単剤の長期投与が一般的に行われている.

抗凝固薬(ワルファリン)に関しては,下肢バイパス術後のRCTで,静脈グラフト使用例ではワルファリン(PT- INR 3.0~4.5)のほうがアスピリン80 mg/日と比較してグラフト閉塞のリスクが低かったが,重篤な出血リスクが多かった62).しかし,spliced vein graftやpoor runoffといったグラフト閉塞リスクが高い状況に置かれた患者においては,出血リスクが低ければ追加投与を考慮してもよい58, 61, 65).

1.3 抗血小板療法と抗凝固療法の併用(DPI)

抗血小板薬にXa因子阻害薬を併用するDPIは,まず急性冠症候群の患者を対象として検討されたが66, 67),心血管イベントの低下に寄与するものの,大出血の増加が問題とされていた.その後,主に安定した心血管病患者(冠動脈疾患もしくはPAD,冠動脈疾患は20年以内の心筋梗塞歴,有症状もしくは狭心症の既往のある多枝病変,多枝病変に対するPCIもしくはCABGと定義,PADは跛行症状を有しABI低下もしくは下肢動脈狭窄を認めるもの,下肢血行再建歴,PADによる下肢もしくは足部の切断歴,頸動脈狭窄を有する患者と定義された)を対象として2013年よりCardiovascular Outcomes for People Using Anticoagulation Strategies (COPMASS)試験が行われ68),アスピリンと低用量のリバーロキサバンの併用群ではアスピリン単独群と比較してMACE(心血管死亡/脳卒中/心筋梗塞の複合)が有意に抑制されたが,大出血も有意に増加していた.そのサブ解析において,PAD患者に対するこのレジメンがMACE(心血管死亡/脳卒中/心筋梗塞)のみならずMALE(大切断/新たな急性ないし慢性下肢虚血)を減少させることが示されていた69, 70).

2015年より下肢血行再建術後の患者を対象としたVascular Outcomes Study of Acetyl Salicylic Acid Along With Rivaroxaban in Endovascular or Surgical Limb Revascularization for Peripheral Artery Disease(VOYAGER PAD)試験が,日本も参加して行われ42),下肢血行再建術(バイパスと血栓内膜摘除からなる外科手術,EVT,それ

らのハイブリッド治療を含む)が成功した術後10日以内の患者を対象とし,出血リスクが高い患者は除外された.アスピリンへの低用量のリバーロキサバン(2.5 mg 1日2回)の追加投与では,プラセボと比較して,主要複合評価項目(ALI/血管疾患が原因の大切断術/心筋梗塞/虚血性脳卒中/心血管死)の推定発生率が低下した(17.3% vs. 19.9%,観察期間中央値28ヵ月).大出血の推定発生率は,ISTH基準では併用群が高かったが(5.94% vs. 4.06%), Thrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)分類では有意差がなかった(2.65% vs.1.87%).

この試験においては術後6ヵ月までのクロピドグレルの使用が許容されており,実際に約半数の症例に使用されたため,クロピドグレル併用の影響に関する解析も行われた71).クロピドグレルの30日以下の短期併用では,アスピリンと低用量リバーロキサバン併用のリスク・ベネフィットは変化しなかったが,クロピドグレルを30日以上併用した群では出血イベントが増加していた.

VOYAGER PAD試験の登録患者6,564人のうち2,185人(33%)が外科手術による血行再建後であり,そのサブグループ解析でも本試験と同様にアスピリンと低用量リバーロキサバンの併用群で複合評価項目の発生率の低下が確認された55).プラセボとの比較で,主要複合評価項目(ALI/血管疾患が原因の大切断術/心筋梗塞/虚血性脳卒中/心血管死)の3年推定発生率が低下した(19.7% vs. 23.9%).TIMI分類の大出血の推定発生率には有意差がなく(1.3% vs. 1.4%),致死的出血,頭蓋内出血,再手術を要する出血にも差を認めなかった.

バイパス術後のSAPTとDAPTを比較した唯一のRCTであるCASPAR試験の主要評価項目と同じ評価項目(急性下肢虚血,予定外の追加血行再建,肢大切断,心血管死からなる複合評価項目)も比較された.CASPAR試験においてDAPTのSAPTに対する優位性が認められなかった結果とは対照的に,アスピリン・低用量リバーロキサバン併用のDPIではSAPTに対する優位性が示された(1年時ハザード比0.76,3年時ハザード比0.84)

56).

バイパス導管の種類による影響を検討したサブ解析では,外科手術を受けた2,185人のうちバイパス術施行例は1,485人(66%)で,その内訳は人工血管使用773人(53%),静脈グラフト使用646人(45%)であった.プラセボ群における予定外の追加血行再建のリスクは,人工血管使用では静脈グラフト使用の2.5倍,同様にALIのリスクは3倍であった.人工血管使用と静脈グラフト使用のいずれの状況においても,リバーロキサバン併用群でMALEが低下していた(静脈はハザード比0.66,人工血管はハザード比