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一方,国内で比較した報告もあり,治療成績に有意差はないとされているが,比較試験ではなく,選択バイアスを考慮すると,単純比較は難しい37).ALIでは,治療法の優劣以外にも,時間的な制約が成績に影響を与えるので,治療方法のみの成績の比較は難しい.ハイブリッド治療は外科手術とEVTのそれぞれの要素が入っており,ハイブリッド治療のみのエビデンスはまだ少ないが,EVTと外科手術の良い部分を併せて行うことが可能であり,可能な限り手術やEVT単独ではなく,ハイブリッド治療が可能な医師あるいは医師団と施設で治療を行うことが重要である15).これらのことから,今回のフォーカスアップデート版では,血栓除去カテーテルの挿入が困難,もしくは困難なことが予想される場合にハイブリッド治療による血行再建を行うことは,エビデンスレベルCであるものの,エキスパートコンセンサスとして推奨クラスIとした15, 35). 5 後療法 5.1 虚血再灌流障害 虚血状態の組織に血流が再開すると,局所で産生された毒性物質により局所性および全身性の重篤な障害が惹起される(虚血再灌流障害).局所性の虚血再灌流障害がコンパートメント症候群であり,全身性の虚血再灌流障害が筋腎代謝症候群(MNMS)である. 5.1.1 コンパートメント症候群 虚血によって障害された組織に血流が再開すると筋肉などの組織の浮腫が生じ,筋膜に囲まれたコンパートメントの内圧が急上昇して周囲血管や神経を過度に圧迫することで虚血や神経障害を惹起する.これがコンパートメント症候群であり,患肢の腫脹,疼痛,冷感,神経障害などから診断されるが,診断に苦慮する場合は各コンパートメントの内圧を測定して診断を確定する.筋組織の内圧は通常8 mmHg以下であり,20~30 mmHg以上で本症候群と診断する. 本症候群による虚血が6~12時間以上持続すると,筋肉や神経に不可逆的な変化が生じる.したがって,本症候群と診断された場合には発症から6時間以内の可及的早期に筋膜切開を施行する必要がある14, 19).重症度カテゴリーIIa, IIbの虚血肢に対しては血行再建直後の予防的筋膜切開を考慮してもよい38).筋肉量が多く,コンパートメント区画が多い下腿におい て発症することが多く,前方,側方,浅後方,深後方のすべを確実に開放しなければならない.筋膜切開後は,感染や切開創治癒遅延などに留意して管理する14).開放創に対しては局所陰圧閉鎖療法(NPWT)も有用である. 5.1.2 MNMS 虚血時間が長くなると,筋肉など軟部組織の細胞壊死が進行し,乳酸,カリウム,ミオグロビン,クレアチンキナーゼなどが局所に蓄積される.治療により血流が再開すると,これらの代謝物質が全身に放出され,代謝性アシドーシス,高カリウム血症,致死的不整脈,急性腎不全,呼吸不全などの重篤な多臓器障害を引き起こす39).MNMSの発症予防や治療として確立された方法はなく,予兆があれば重炭酸塩や利尿薬の投与を行い,乏尿やカリウム高値を認めれば血液透析の導入を考慮する.MNMSの致死率は依然として高いため,重症度カテゴリーIIIの虚血肢に対しては大切断を第一に考慮することとなる40). 5.2 血行再建後の薬物療法 急性下肢動脈閉塞の治療後は,再発を防ぐために原因検索が必要である.もっとも一般的なのは心房細動や心筋梗塞を背景とした心原性塞栓,そして大動脈の壁在血栓による塞栓に代表されるアテローム塞栓症であり,その検索のために心エコー検査,24時間心電図,胸腹部の造影CT検査などが推奨される.また,患者が比較的若年(60歳以下)の場合は,悪性疾患と血栓性素因の検索を積極的に考慮する23, 24). 心原性塞栓による急性下肢動脈閉塞患者に対する抗凝固療法の有効性は確立している21).古くからワルファリンが用いられてきたが,昨今では,出血性合併症のリスクが低い直接阻害型経口抗凝固薬(DOAC)の使用を積極的に考慮する14, 22).一方,心内血栓やその原因が確認されていない患者に対する抗凝固療法は,確立した治療ではないが考慮してもよい14, 22). 動脈硬化や膝窩動脈瘤が原因の急性下肢動脈閉塞患者においては,通常のPAD二次予防としての抗血小板薬投与やスタチンの投与が推奨される41).また,血行再建方法としてEVTが選択された場合,治療デバイスに準じた抗血栓療法を行うことを考慮するが,複数の抗血栓薬を使用する場合は出血リスクを十分に勘案する.VOYAGER PAD試験において,血行再建(外科的バイパス手術もしくはEVT)後に,アスピリン100 mg/日に低用量のリバーロキサバン(2.5 mg 1日2回)を加えると,大出血を増やさず