p.11 抽出テキスト
1.74),1.11(0.76~1.61),1.28(0.82~1.98)と差はみられなかった.一方,大血管イベントのオッズ比は手術療法群で0.33(0.13~0.87)と低いことが報告されている. 2022年にUKが供給停止されたことに伴い,従来より施行されてきた急性下肢動脈閉塞に対する血栓溶解療法のみならず,UKを併用する治療法は困難となっている.そのため2023年に,血栓吸引デバイスであるINDIGOシステムが特例的に承認された.その適応は従来のEVTと同様であり,急性下肢動脈閉塞の第一選択は手術療法である.急性下肢動脈閉塞150人(初発例102人,各種治療[EVT,バイパス,Fogarty]後48人)に対するINDIGOシステムを使用した血栓吸引療法を評価したINDIAN試験28)では,対象を冠動脈から末梢動脈に変更したThrombo-aspiration In Peripheral Ischaemia(TIPI)スコア(0:閉塞病変再開通なし,1:末梢への血流再開ないが不完全な再疎通,2:末梢への不十分な血流再開を認める再開通,3:末梢への完全な血流再開)を用いて評価を行った. 術前はTIPI 0 が84%,TIPI 1 が13.3%,TIPI 2 が2.7%であったが,血栓吸引デバイスのみによる治療後にはTIPI 0 が4.7%,TIPI 1 が6.6%,TIPI 2 が34.7%,TIPI 3 が54%へと改善した.さらに,残存する動脈硬化性病変には血管形成術やステント留置を施行し,残存血栓病変にはtPA製剤などを使用する追加治療を行うことで,TIPI 0は1.3%,TIPI 1 は3.3%,TIPI 2 は19.3%,TIPI 3 は76%と著明に改善したとしている.重篤な合併症として危惧された血管損傷と在院死亡はなく,1ヵ月以内の死亡は全身状態が悪化した1人のみで,膝窩以下での下肢切断症例も1人であった.続くINDIAN Up 試験29)では,技術的成功を1ヵ月後のTIPI 2~3への改善と定義し,技術的成功率は96.4%,1ヵ月後生存率97.2%,下肢救済率97.6%であった.手技に関連した重篤な合併症はなかった.250人中158人(63.2%)に二次治療が施行されている.その半数になる79人で残存血栓があったために二次治療が行われており,うち47人でtPAもしくはUKが使用されていた.これらが使用できないわが国では,今後これらの症例のマネージメントを検討する必要がある.ただし,INDIGOシステムによる血栓吸引デバイス単独での成績は比較的良好であった. MaldonadoらによるSTRIDE研究12)とその1年間のフォロー30)では,30日救肢率は98.2%と高く,30日死亡率は3.4%,1年後の救肢率は88.5%,死亡率は12%であり,従来のCDTや外科治療に比べ良好な成績であった.またINDIGOシステムの使用にあたっては血液の過剰吸引が課題とされ術者の役割分担や慣れが必要とされているが,この報告では血液吸引の電子制御が可能な新しいLightningというシステムが4割以上の症例に使用され,血液吸引量 が400 mL以下の症例が82.8%であったと報告している.ただし血栓吸引術にあたってtPAによる血栓溶解療法が19.3%で使用されている. 今後,外科的血栓除去術の代替案としての血栓吸引術が期待され,さらにINDIGOシステムの新システムであるLightningシステムの導入が期待される. 4.2 ハイブリッド治療(外科的血栓塞栓除去 術+EVT) かつてはリウマチ熱に伴う弁膜症や心房細動などに起因する純然たる塞栓症が患者の多くを占めていたので,外科的血栓除去術のみで完結することが多かった.近年は生活様式の欧米化と高齢化に伴い,下肢閉塞性動脈疾患(LEAD)患者が増えてきたので,それに伴いLEAD合併のALIも多くみられるようになった35, 36).ALI診療では,ほとんどが緊急対応を要する患者であり,術前の情報が乏しいことが多く,また病歴があってもLEADに関する情報は精査されておらず不明なことも多い.このためLEAD合併患者がいることを念頭に,LEADのリスクファクターの有無を確認することや,画像所見(動脈の石灰化や健側の血管の状態)などからLEADの合併を疑って治療を開始することが必要である18).さらに,対側下肢の血管造影所見が病側下肢の背景病変を示唆するので,ALI手術に際して参考にする. LEAD患者にALIが発生した場合,外科的血栓除去術のみでは残存するLEAD病変によりすぐに再発する可能性が高いことから,血栓除去後にLEADの治療を同時に行うハイブリッド治療の役割は大きい.外科的血栓除去術後に血管造影を行い,残存病変やLEADの評価を行ったうえで,EVT(経皮的血管形成術)を行うことがおもなハイブリッド治療の流れであり,外科的血栓除去術の延長線上に存在するといえる.なお,「3.3 手術」にも書かれているが,外科的血栓除去術は透視下に施行し,適宜,血管造影を行いながら施行することが重要である.外科的血栓除去術は単独でも完結することは決して少なくはないが,外科的血栓除去術とハイブリッド治療を比較するとハイブリッド治療が有効であったとの報告もあり,外科的血栓除去術後に必要に応じてEVTで補完することは重要である18). ハイブリッド治療は有効な方法であると思われるが,いまだエビデンスが少ない.外科的血栓除去術,EVT,ハイブリッド治療を比較した報告でも,ハイブリッド治療が他の治療より優れているという大規模データの報告はない.