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p.94 抽出テキスト

報告でも99% の妊娠症例でCNI が投与されていた536). Tac とCyA はどちらも胎盤を通過し,子宮内で胎児が曝露されるリスクを有している540, 541)が,CNI を投与されている臓器移植レシピエントから出生した児の先天異常のリスクは,一般的な妊娠からの出生児と同等であると報告されている542).CNI のおもな代謝酵素であるCYP3A4 の酵素活性は妊娠中の期間を通じ増加する543)ため,血中濃度を慎重にモニタリングし,治療濃度維持のために投与量を調整(循環血液量が約1.5 倍に増加し希釈されることもあり,非妊時に比べて増量を要する可能性が高い)する必要がある.

プレドニゾロンは移植後もっとも一般的に使用されるステロイドである.ステロイド投与は胎児の口唇口蓋裂や早産に関連するとされているが,現在の移植後の用量では比較的安全であり531),妊娠が血中濃度に及ぼすほかの免疫抑制薬減量・中止に伴うものでない限り,妊娠のみを理由とした用量調整は不要であると考えられる.

MMF は動物実験および市販後報告から,臓器移植レシピエントにおける流産および頭蓋顔面先天異常の発生率が上昇することが知られており,計画妊娠の6 週間前からの中止もしくは妊娠確認次第,中止が必要である47, 531, 532, 536). MMF のほかの免疫抑制薬への変更については,拒絶反応,感染のリスク,潜在的な副作用の忍容性などを考慮して決定する必要がある.

ISHLT のステートメントは,Tac の目標血中濃度を下げる必要のあるレシピエントに対してMMF 中止後のAZPへの変更が提案されている.AZP およびその代謝物である6-メルカプトプリンは,移植および非移植症例において,妊娠中に使用した場合でも先天異常とのリスク増加と関連しないことが報告されている536, 544, 545). mTOR 阻害薬であるSRL,EVL が妊娠中に投与されて

いた腎臓移植後や心臓移植後の報告は散見される536, 546)ものの,安全性に関するデータが限定的であること,帝王切開後の創傷治癒遅延も懸念されることから,ISHLT のステートメントでは妊娠6 ~12 週間前の中止が推奨されている531).

妊娠中の降圧薬など循環作動薬の使用については「心疾患患者の妊娠・出産の適応,管理に関するガイドライン(2018 年改訂版)」547)も参考にされたい.ACE 阻害薬や

ARB は胎児異常のリスクのため,妊婦への投与は禁忌であり,ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬は比較的安全とされている531).

妊娠中の感染に対する抗菌薬投与については感染源,感染の重症度,使用が想定される抗菌薬に応じて個々に協議する必要がある.前述のように,抗CMV 薬ガンシクロビル,バルガンシクロビルは妊娠中の投与は禁忌である.

6.5 母体管理

ISHLT のステートメントでは,過去6 ヵ月以内に心エコーによる心機能の評価,および臨床学的経過に応じて拒絶反応や移植心冠動脈の詳細な評価がなされていない場合は,これらを妊娠前に実施することを推奨している531).さらに免疫抑制薬血中濃度や血算,肝臓および蛋白尿を含む腎臓機能評価,CMV など感染症のスクリーニングが必要である.また妊娠中にも拒絶反応や併存疾患の管理のため定期的なスクリーニングが必要となる.ISHLT のステートメントで推奨されている妊娠中のスクリーニング検査については表29 531, 548)に示す.妊娠中は産科,循環器科,移植領域の医師や看護師,薬剤師など多職種からなるチーム

表29 心臓移植後症例における妊娠中母体のモニタリング

身体所見,バイタルサイン,検尿12 誘導心電図心エコー図妊婦健診ごと4 週間ごと在胎24 週まで;1 ~2 ヵ月ごと,24 週~分娩;4 週間ごと腎機能,肝機能,血算妊娠糖尿病スクリーニング免疫抑制薬血中濃度抗HLA 抗体4 週間ごと在胎12 週;随時血糖在胎24 ~28 週;随時血糖もしくは50 g グルコース負荷試験在胎32 週まで;4 週間ごと,32 ~36 週;2 週間ごと,36 週~分娩;1 週間ごと分娩1 ~3 ヵ月後(妊娠中の拒絶反応あればより早期の施行が望ましい)白血球分画,C 反応性蛋白CMV PCR尿培養トキソプラズマ(未感染者),単純ヘルペス,肝炎ウイルス4 週間ごと4 週間ごと4 週間ごと在胎36 ~37 週で施行胎児エコーハイリスク妊娠に対する産科エコーに準じる(Kittleson MM, et al. 2023 531),産婦人科診療ガイドライン産科編2023 548)を参考に作表)