p.89 抽出テキスト
4.1.3 骨格筋異常 重症心不全患者ではさまざまな骨格筋の異常が知られており,骨格筋線維型変移,骨格筋エネルギー代謝および萎縮などが心不全患者の運動耐容能低下に大きく関わっているが505),心臓移植後にこれらの異常は速やかに改善するわけではなく,移植後の運動耐容能にも大きく関わっている506, 507).免疫抑制薬は骨格筋萎縮をきたすことも知られている507). 4.1.4 運動耐容能の予測因子 心臓移植後に左室収縮能が正常な患者の運動耐容能予測因子として年齢,最高心拍数,β1アドレナリン受容体多型,拡張機能,BMI,体脂肪率が知られている496, 508-510).また,右室収縮能も心臓移植後の運動耐容能に関連するという報告もある511). 4.2 運動療法の有効性 心臓移植患者に対する運動療法の効果に関する報告は1980 年代からみられる.36 例の男性患者において,平均 16.3 ヵ月間の歩行とジョギングによる運動プログラム(平 均で週に24 km の歩行距離)では,除脂肪体重は増加し,安静時心拍数や血圧は減少し,最大酸素摂取量は21.7 ± 4.5 ~25.8 ± 6.4 mL/kg/分まで増加した494).1999 年に は27 例の移植後患者を無作為に運動療法(有酸素運動)とコントロールの2 群に分け,6 ヵ月後に評価したRCT が報告された.この報告では移植後早期の運動療法によって,最大酸素摂取量はコントロール群に比して運動療法群で増加の程度が大きかった(1.9 対4.4 mL/kg/分) 512).運動療法(有酸素運動およびレジスタンス運動の一方もしくは両者)と通常治療群の2 群に無作為化された6 試験のメタ解 析では,運動療法によって最大酸素摂取量は2.34 mL/kg/分増加し,チェストプレスおよびレッグプレスの最大筋力は有意に改善した513).最近では移植後早期からの高強度インターバルトレーニングが中強度持続的トレーニングよりも最大酸素摂取量は1.8 mL/kg/ 分増加することが報告されている514).運動療法の効果に男女で差がないことも報告されおり515),運動療法は心臓移植後患者の運動耐容能とQOL を高めるのに有用であり,参加可能なすべての心臓移植患者にリハビリテーションが推奨される(推奨表6) 516). 4.3 急性期リハビリテーション 術後退院までは急性期と回復期に分けたリハビリが提唱されている517).心不全患者の心臓リハビリテーションプログラムに準じて早期の社会復帰を目指す(表26) 516). 4.3.1 急性期 可能な限り早期からベッド上リハビリテーションを行い,安静臥床による合併症予防,精神的ストレスの軽減を図り早期離床,移植病棟内歩行などを行う517).移植後3 ヵ月以内は感染症を発症しやすいため,感染予防が重要となる.移植後3 週間程度は衛生環境が保たれた室内などでリハビリを行う.運動強度は患者の体調や筋力などの運動 HR最大運動(移植)最大運動(健常者) 1安静時HR 増加 健常者 心臓移植患者 2運動中HR 増加反応の低下 3最大運動時HR の低下4運動後のHR 回復の遅れ 安静時運動中回復期HR: 心拍数図30 心臓移植後患者の心拍数への除神経の影響推奨表6 心臓移植後患者に対する心臓リハビリテーション の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル すべての参加可能な患者に対して包括的リハビリテーションプログラムを実施する. I A心臓移植後患者の管理に精通した施設で心臓リハビリテーションを行うことを考慮する. IIa B有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み合わせた運動療法を考慮する. IIa B自覚的運動強度または心肺運動負荷試験による運動処方に基づいた運動療法を考慮する. IIa C運動耐容能の評価と適正な運動処方を目的に6 分間歩行試験と心肺運動負荷試験を定期的に行うことを考慮するIIa C [2021 年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインからの変更点]2 項目の推奨文に「心臓リハビリテーションを」を追加. (日本循環器学会,日本心臓リハビリテーション学会.2021 516)より改変)