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p.82 抽出テキスト

局的に侵される434).ほとんどの血管がびまん性に侵されるため,ある血管の支配領域に虚血を生じても,ほかの部位から側副血行路は発達しにくい.その他,石灰化病変が少ない,内弾性板は保たれるといった特徴がある.また,発症原因である内膜の炎症として細胞浸潤/ 血管炎が認められるが,粥状冠動脈硬化症ではまれである.進展速度は,粥状冠動脈硬化症が年単位で進行するのに対し,免疫学的機序に伴うものでは月単位に進展することもまれではない.

2.1 診断

CAV は移植後心に生じる種々の冠動脈変化を包括した呼称である432).前述の通り種々の理由による血管内皮細胞への慢性的な炎症,傷害に伴い,冠血管内膜が線維素筋性(fibromuscular)に肥厚することによるびまん性狭窄で慢性的虚血をきたす病態である(図24) 435).血管内超音波検査での解析では,冠血管内膜の肥厚に加えて,血管外膜の収縮性変化を含む血管リモデリングがCAV の進行(冠動脈内腔の狭小化)に影響を与えることが報告されている436).病理での解析でも,心内膜から外膜および静脈に至る全血管性の炎症性細胞の浸潤が示されており437),病態生理は複雑である.臨床的にはCAV の進行は,移植後のAMR や急性細胞性拒絶後に急速に進行するびまん性の全枝にわたる冠動脈の狭小(図25)やレシピエントの経年的な動脈硬化性変化に伴う局所的で偏心性の冠動脈狭窄

(図26)の両者を含み,病態の複雑さを反映している438).近年の光干渉断層法(OCT)による解析でも病変の多様性を示す報告がされている439).

前述の典型的なCAV 進行の特徴(心外膜冠動脈から心筋内動脈に至るびまん性の病変)を考慮すると,CAV が進行した後の冠動脈病変の局所への治療介入の有効性は限定的である.そのため,CAV の画像診断には,狭心痛を生じない移植心(除神経心)においてCAV の進行と重症度を確認することに加えて,進行を予測する指標としての役割がある47).

CAV の進行を早期に診断するためには,ドナーとレシピエントの年齢,抗HLA 抗体やドナー特異的抗HLA 抗体の有無,ドナー持ち込み病変の有無,拒絶反応の既往, CMV 感染症の既往,それまでのCAV 進行の程度,レシピエントの動脈硬化リスク因子の有無,およびレシピエントの腎機能を参考にして,進行リスクに合わせた定期的な冠動脈の評価が必要である.侵襲的な冠動脈検査の適正な頻度は明確ではない47)が,移植後早期4 ~8 週目,その後は1 ~2 年ごとに1 回程度の頻度が一般的である. IVUS については,心臓移植後早期4 ~8 週目にドナーからの持ち込み病変の有無を評価し,予後予測の観点からは移植後1 年目および5 年目に実施することは妥当である.

図23 CAV の機序(Schmauss D, et al. 2008 432)を参考に作図)

非免疫学的機序免疫学的機序

脳死虚血時間再灌流障害移植心における免疫反応

T 細胞の活性化↓細胞障害性T 細胞活性化

B 細胞による抗体産生炎症性サイトカインCMV 感染

サイトカイン酸化ストレスNO 産生障害

動脈硬化リスク(耐糖能異常,脂質異常症,高血圧)

ドナー心由来の

冠動脈病変血管の炎症

内皮障害

CAV