p.80 抽出テキスト
1.2 個別化される留意点 わが国の心臓移植は,植込型VAD 装着下での長期待機を要し415),レシピエントの状態に応じては,高齢や心機能の低下したドナー心(マージナルドナー)を受託する必要がある.ドナーとレシピエントの個々のマッチングにより個別化される留意点を有する. 1.2.1 感作された(抗HLA 抗体を有する)移植後患者 植込型VAD 装着による移植待機は,感作されたレシピエントを増加させることが示唆されており416),わが国では感作されたレシピエントが多いことが推測される.近年の報告では,抗HLA 抗体を多く有することはPrimary graft dysfunction と関連することが報告されている417).一方で,国際的なレジストリーデータを用いた報告では,心臓移植前に植込型VAD を装着していなかった移植後患者が抗HLA 抗体を有することは移植後の予後不良と関連していたが,心臓移植前に植込型VAD を装着していた移植後患者では,感作の有無と移植後の予後に関連は示されず418),臨床的な意義については複雑である34). ドナー特異的抗HLA 抗体(Preformed DSA) は,移植心と反応して免疫複合体(immune complex)を形成し,補体依存性細胞傷害作用活性やADCC 活性のAMR,CAV を進行させる.その結果,最終的には機能廃絶に陥るため,心臓移植では,移植前,移植時,移植後においてクロスマッチ試験の結果による対応が必要である46). Preformed DSA を有することが,移植後の予後に関連するかどうかは明確ではないが,AMR のハイリスクであることが報告されており419),感作されていないレシピエントよりも,スクリーニング検査および抗体特異性同定検査を頻回に実施することを検討する34)(表23).また,移植後に消退した抗ドナー特異的抗HLA 抗体が陽転化したり,新規のドナー特異的抗HLA 抗体(De novo DSA)を認める場合には,心筋生検によるAMR の評価を行うことも検討する34). 1.2.2 ドナー心由来の冠動脈病変を有する移植後患者 ドナー心由来の冠動脈病変は,CAV の進行および病変の早期の顕在化に影響を与えることが示唆されているため420),早期からCAV の進行に対する予防的介入を検討する(2.3 予防を参照). 1.2.3 腎機能障害を有する移植後患者 長期の移植待機期間は腎機能の低下を招く可能性があり,移植前の腎機能障害は移植後の生命予後および腎機能 表23 心臓移植後早期の定期検査および外来フォローアップのスケジュール例 年1月1 2 3 4 4,5 5 6 7 8 9 10 11 12週1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 16 18 20 24移植術後入院● ● ● ● ● (退院後)定期検査入院○ ○ ○ ○ ○ ○外来通院△ △ × △ × × × × × ×定期心筋生検× × × × × × × × × ×冠動脈造影△ △ △ × ×血液検査× × × × × △ × △ × △ × × × × × × × × × × ×尿検査× × × × × △ × △ × △ × × × × × × × × × × ×胸部単純写真× × × × × × × × × × × × × × × × × ×心電図× × × × × △ × △ × △ × × × × × × × × × × ×心エコー検査× × × × × × × × × × ×抗HLA 抗体スクリーニング検査△ △ △ × △ △ △ △ △ △ △ × CMV DNA × × × × × × × × × × × × × ×悪性腫瘍スクリーニング×歯科受診× × △ △ △ △ △ △ △ × ●:術後入院継続,○:退院後再入院,×:実施,△:必要に応じて実施