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p.79 抽出テキスト

第6章 在宅治療と遠隔期合併症管理

1 移植後初期における在宅治療

1.1 一般的留意点

心臓移植後患者の管理については,医師(心臓外科,循環器内科,精神科,感染症科,歯科),レシピエント移植コーディネーター,看護師,薬剤師,管理栄養士,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,チャイルドライフスペシャリスト,臨床心理士およびソーシャルワーカーといった多職種によるハートチームで関わることが必要である406-407).移植後初期は,体力の回復も不十分で,多量の免疫抑制薬を使用し血中濃度が不安定な場合も多く,在宅での食生活,体調管理に不安を抱えていることも多いため,特にその関わりは重要である. 心臓移植後患者の在宅での状態を共有し,服薬アドヒアランスを確認する方法として自己管理ノートや自己報告書の作成が有用である408).

定期外来受診回数や入院頻度は患者の状態に依存し,施設間でも一般化されていないが,移植後6 ヵ月までは頻回の定期的な心筋生検による拒絶反応の評価を要し,ステロイドの量も多いために生活には注意を要する47).移植後早期に移植実施施設以外の病院と連携する場合には,情報共有を密にすることが必要である409).

1.1.1 感染症予防の指導

心臓移植後30 日以降で1 年以内の最多の死亡原因は感染症である47).免疫抑制療法下の心臓移植後患者は,日和見感染を起こしやすい.毎日体温を測定し,38.0°C以上の発熱,咳嗽,呼吸困難を伴う呼吸器症状や嘔吐,下痢などの消化器症状を認める場合には,すぐに報告するように指導する.また,感染者との接触を避けるため,人混みのなかに行く場合や病院受診の際には,マスクを使用し,うがい,手洗いを励行する.ペットについてはトキソプラズマ感染の危険もあるため,前もっての相談が必要である.ワクチンで発症予防が可能なウイルス感染症については,移

植待機中に抗体を有しているかを確認し,抗体を有していない場合には移植前に速やかに(生ワクチンは少なくとも移植4 週間前,不活化ワクチンは2 週間前までに)ワクチンを接種することが推奨される410).移植後患者の家族や,移植後患者に密に関わる関係者にもワクチン接種を励行する必要がある410).移植後であっても不活化ワクチンの接種は一般的に安全とされているが,生ワクチンの接種は禁忌であるために,麻疹,ムンプス,風疹,水痘および帯状疱疹ワクチンは特に,移植前に実施することが必要である410).mRNA ワクチンおよび遺伝子治療の技術を用いたウイルスベクターワクチンの移植後患者への安全性については明確ではないが,必ずしも免疫応答の賦活化により拒絶反応のリスクを上昇したとする報告はなく408),利益とリスクを正しく評価し,適応を判断する必要がある.移植後どれくらいの期間でワクチン接種を可能とするかは明確ではないが,移植後6 ヵ月で接種可能と判断していることが多い.インフルエンザワクチンについては移植後1 ヵ月から接種可能とされている410).

1.1.2 免疫抑制薬の服薬管理

服薬管理は,心臓移植後患者の長期予後に関連するもっとも重要な要素である411).心臓移植後患者の予後に影響を与える服薬アドヒアランスには,必ずしも患者自身の問題だけでなく多角的な要因(患者自身,家族やケアギバー,患者医師関係,患者施設関係,医療社会システム)があるとされ412),薬剤師,精神科,臨床心理士やソーシャルワーカーも含めた多職種でのアプローチが必要である.

1.1.3 栄養指導

免疫抑制薬の内服は,薬剤性の高脂血症,骨粗鬆症および糖尿病の原因となり,肥満や血液検査異常を回避するための栄養指導は重要である413).また,免疫抑制薬の血中濃度に影響を与える食事の理解や生もの摂取を避けるなどの食品衛生の理解も必要である414).