p.78 抽出テキスト
あり,特にCyA は脂質代謝異常への影響が大きい397). 心移植後患者における目標LDL コレステロール値に関するデータはないが,ほとんどの成人心移植後患者に対してLDL コレステロール値100 mg/dL 以下を目指すことは妥当性がある47).特にCAV の患者には,より積極的なLDL コレステロール値目標(70 mg/dL 以下)を設定して良い47). 心移植後におもにわが国で使用される脂質低下薬の有効性と免疫抑制薬との注意すべき相互作用を表22 396)に提示する.スタチンは心移植後患者の冠動脈プラークを消退させる398, 399).しかし,免疫抑制薬(特にCNI)との相互作用により,用量の調整が必要となることがある7). エゼチミブは腸管での脂質吸収を阻害することで血清LDL コレステロール値を減少させる.免疫抑制薬と相互作用が少ないが,CyA の血中濃度を上昇させる可能性がある400).エゼチミブは心臓移植後の脂質異常症を管理するのに効果的であることが示されている400, 401).そのため,エゼチミブは,制御不能な脂質異常症を持つ成人の心臓移植患者において,スタチンとの併用,またはスタチン不耐性の患者への代替薬として使用可能である. Proprotein convertase subtilisin-kexin type 9(PCSK9)は,LDL コレステロールの肝代謝を促進するLDL 受容体を分解して血中LDL コレステロールの代謝を抑制する402).最近,いくつかの小規模な短期間の観察期間での報告において,PCSK9 阻害剤がおもな免疫抑制薬と相互作用がなく,心臓移植患者のLDL コレステロール値を安全に低下させたことが報告された403, 404).そのため,PCSK9 阻害剤は制御できない高脂血症を持つ成人心移植後患者においてスタチンへの併用薬となりえる.また,スタチン不耐性の場合には代替薬としても考えられる. インクリシランナトリウムは,PCSK9 蛋白質をコードする mRNA を標的としたsiRNA 製剤である.肝臓に取り込まれ,肝臓のPCSK9 mRNA を特異的に分解しPCSK9 蛋白質を作らないことで,LDL 受容体によるLDL コレステロールの取り込みを促進し,血中LDL コレステロール値を低下させる405).心臓移植後患者における有効性・安全性の報告は現在ないが,そのLDL コレステロール低下作用からスタチン不耐性の場合に代替薬として期待される. 表21 免疫抑制薬の脂質への影響 免疫抑制薬脂質への影響 糖質コルチコイドプレドニゾロン中性脂肪値上昇,LDL コレステロール値上昇CNI CyA中性脂肪値上昇,LDL コレステロール値上昇 Tac中性脂肪値上昇,LDL コレステロール値上昇 mTOR 阻害薬EVL中性脂肪値上昇,LDL コレステロール値上昇代謝拮抗薬AZP報告されていない. MMF報告されていない. (Iannuzzo G et al. 2022 396)を参考に作表) © Iannuzzo G et al. 2022. Licensee MDPI, Basel, Switzerland. CC BY 4.0 表22 心臓移植後におもに使用される脂質低下薬の有効性と免疫抑制薬との注意すべき相互作用 脂質低下薬有効性相互作用 スタチンアトロバスタチンLDL コレステロール値低下中性脂肪値低下プラーク安定化 CNI との併用により,スタチンの血中濃度が上昇する.ロスバスタチンシンバスタチン エゼチミブLDL コレステロール値低下CyA の血中濃度が上昇する可能性がある. PCSK9 阻害薬エボルクマブLDL コレステロール値低下免疫抑制薬との相互作用の報告はない. PCSK9 合成抑制薬インクリシランナトリウムデータなし.データなし. (Iannuzzo G et al. 2022 396)を参考に作表) © Iannuzzo G et al. 2022. Licensee MDPI, Basel, Switzerland. CC BY 4.0