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p.77 抽出テキスト

予防および治療として,骨折や転倒に注意した適切な運動療法と,推奨される範囲内でのカルシウムおよびビタミンD の摂取を指導する.「グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023」に示された診療アルゴリズムに基づいて危険因子の評価を行い,薬物治療を開始することが推奨される367).薬物療法としては,一般的に用いられてきたビスホスホネート製剤に加え,近年では抗RANKL 抗体(デノスマブ)の有効性も示されている.ビスホスホネート製剤,デノスマブともにまれではあるが顎骨壊死の副作用が報告されており,心臓移植前から歯科医との連携は重要である.

6.3 高血圧

移植後の高血圧発症については固形臓器移植後全般に認められ,年齢層としても幅広く,小児,成人両者に認められる368, 369).なかでも治療が必要な割合は70% にのぼるが,理想的な血圧へのコントロールの達成率はそこまで高くない370).また年齢とともに発症リスクはあがる371).

移植後高血圧の一つの原因としてCNI の使用による高血圧の関与が強く,他の臓器移植でもCNI 内服による高血圧発症は70 ~90% という報告がある372, 373).メカニズムとしては糸球体輸入細動脈が収縮し,それに伴い糸球体濾過率,腎血流の障害がおきることや,遠位尿細管に存在するNa-Cl 共輸送体の阻害に伴い,ナトリウム蓄積傾向になることの関与がある374-376).またレニン-アンジオテンシン- アルドステロン系の亢進,エンドセリン-1 の上昇,活性酸素なども関与するといわれる.ほかにプレドニゾロンの内服も高血圧症のリスクになる377).高血圧発症は移植後1 年以内に生じやすく,ドナーが女性,移植前の高血圧の存在,そのほかにメタボリック症候群などがリスクの1 つとなる378, 379).

高血圧は腎機能障害のリスクになり380),またその後のCAV の進行など含めた,予後を悪化させる可能性があり,治療の必要性が示唆される.一方,高血圧のコントロールにより,移植心の左室肥大の進展を抑制できることが報告されている381).

高血圧の治療についてはまずは塩分制限,体重コントロール,適切な運動習慣など生活習慣是正が重要であることは移植後患者においても変わらない382).またCNI など血圧上昇に寄与すると考えられる薬剤の量調整を検討することも重要であるが,コントールが難しい場合には薬物治療も考慮する.

ACE 阻害薬については早期から使用しても高K 血症や腎機能障害で中止することなく安全に使用できることが確認されている.早期投与の結果,血圧だけでなく他の臨床

転帰の改善への効果についても示されている383-387).移植後の腎機能障害の点もACE 阻害薬について有用性が期待できる.カルシウム拮抗薬については体血管抵抗を下げるという意味ではCNI による血管抵抗上昇に対して有効な薬剤である.しかしカルシウム拮抗薬はCYP3A4 で代謝されるものが多く,CyA やTac と交互作用があることが多いことが知られており,Ca 拮抗薬とCNI の個々の相互作用について投与の際に注意を要する.Ca 拮抗薬の中でもジルチアゼムやニカルジピンなどはCYP3A4 の阻害が大きいが,アムロジピンは比較的影響が少ない.またサイアザイド系利尿薬による治療もCNI による血圧上昇には推奨される388).

6.4 糖尿病

糖尿病は脂質異常症と並ぶ心血管疾患の重大な危険因子であり,心臓移植後の高用量ステロイド使用や免疫抑制薬により約30% のレシピエントが糖尿病を発症することが報告されており389),周術期より高血糖が問題となることも少なくない.移植後冠動脈病変の進展予防の意味でもその管理は重要である.早期から糖尿病内科専門医に介入を依頼し,経口薬の単剤または併用療法,インスリン療法を導入していく必要がある.また,運動療法や管理栄養士による介入を併せて行うことが望ましい.移植後糖尿病患者に対しては,糖尿病関連合併症のスクリーニングを定期的に行う47).心臓移植後患者に対するSGLT2 阻害薬やGLP-1 受容体作動薬の使用に関しては非移植後患者と同様の有用性と安全性が小規模ながら報告されている47, 390-392).移植後の新規糖尿病発症は腎機能低下,移植後死亡,再移植と相関があることがISHLT レジストリより報告されている392, 393).

6.5 脂質異常症

心移植後の患者において動脈硬化は進行しやすく,心血管疾患のリスクが進行することが知られている394).また,免疫抑制薬の内服に伴い脂質異常症を発症・増悪することがあり,心移植後の成人での合併率は米国では50% と報告されている395).小児においても脂質異常症の管理と治療は重要である.

免疫抑制薬による心血管脂質代謝への影響を表21 396)に提示する.副腎皮質ステロイドには血糖上昇作用,血圧上昇,中性脂肪上昇,LDL コレステロール上昇作用がある397).また,CNI には血糖・血圧・中性脂肪上昇作用が