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p.76 抽出テキスト

では,5 年で10%,10 年で20% 程度の心臓移植患者が慢性腎不全(eGFR<30 mL/min/1.73m 2)に至っている356).

心臓移植後は生涯にわたる免疫抑制療法が必要となり, CNI には腎毒性があることが知られている(CNI related nephrotoxicity).尿細管細胞の空胞変性,尿細管間質の線維化,輸入細動脈の硝子化などを特徴とし,その障害はCNI の減量や中止で回復しうるといわれるが,長期的には不可逆的な変化を引き起こす.腎機能障害例ではCNI の減量が必要となり,CNI とMMF と併用する際に,CNI の血中濃度レベルを下げて管理することは拒絶を増加させることなく,腎機能改善に寄与する357).また,MMF をmTOR 阻害薬のEVL へ切り替えるか併用することにより, CNI のトラフ値を下げて管理する方法もある206, 358, 359).個々の有害事象のリスクとのバランスを考えながら調整する必要がある.

また,特に誘因なく腎機能障害が進行する際には,BKウイルス感染の可能性を考慮する360).BK ウイルスは,ポリオーマウイルス科に分類されるDNA ウイルスであり,多くは幼少期に感染し尿路系上皮細胞に潜伏する.移植後の免疫抑制療法により再活性化し腎機能障害をもたらすことがある.腎移植患者で,BK ウイルス尿症から血症を経て腎症に進展した場合の予後は不良である361).スクリーニング法として尿細胞診でdecoy cell の同定を行い,血清・尿BK ウイルスDNA を測定する.BK ウイルス感染がみられた際には拒絶をモニタリングしながら免疫抑制療法を減量する.

腎機能障害の進行を予防するための介入としては,一般人口におけるCKD の管理と同様である.ACE 阻害薬・ARB,カルシウム拮抗薬,SGLT2 阻害薬を使用しながら血糖や血圧を厳格にコントロールする.特にSGLT2 阻害薬については,糖尿病の有無にかかわらずCKD に対する腎保護効果が報告され362),今後心臓移植患者における効果についても検討されているところである363).さらに,末期腎不全に至った際には生体腎移植も考慮され,透析療法と比較して死亡率が低いことが示されている356, 364).

腎不全は移植後遠隔期の主要な死因の1 つである.心臓移植後も腎機能の維持に努めることは予後の観点からも重要である.

6.2 骨粗鬆症

年単位での移植待機によるデコンディショニングのため,骨密度の低下をきたしている心臓移植患者は多い.また,免疫抑制療法として,心臓移植後には比較的大量かつ長期のステロイド使用を余儀なくされることもある.ステロイド使用による骨量減少は投与量に依存するが,安全域はなく,少量のステロイドでも骨粗鬆化は必発であり,投与開始後3 ~6 ヵ月で急速に進行するとされる.また骨折のリスクは骨密度低下前から上昇することも知られている365).プレドニゾロン換算2.5 mg/日以上を1 年間内服すると,椎体骨折の相対リスクは4 ~5 倍になるという報告もあり366),ステロイドを長期に使用している心臓移植患者の骨密度の低下には注意を要する.一方,ステロイドを中止すると骨折のリスクは急速に減少する.骨粗鬆症予防をいつまで継続するべきかの明確な基準は明らかではないが,ステロイドの投与期間,年齢,定期的な骨密度測定,骨折の既往などの骨折のリスク因子に基づき判断する.

心臓移植患者は移植後5 年目までは年2 回程度,以後10 年目まで年1 回程度,骨密度を測定する.骨粗鬆症の

推奨表5  免疫抑制治療に続発する腎機能障害の対応におけ

る推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス

レベル

移植後急性期,無尿・乏尿,血清クレアチニン値の上昇がある際には,体液量管理と腎代替のために血液透析を早期に実施する. I B術前に腎機能障害がある場合や術後2 日以内に腎機能の悪化がある場合には, CNI の開始を遅らせることを考慮してもよい. IIb C mTOR 阻害剤をCNI フリーのレジメで使用すれば,腎機能に長期的なベネフィットをもたらす可能性がある.個々の有害事象のリスクとのバランスを考慮する. IIa B抗体製剤による免疫抑制導入は,腎機能障害のリスクが高い患者において,CNIの使用を遅らせるか回避する目的で使用を考慮する. IIa B腎機能の評価(eGFR, アルブミン尿)を少なくとも年に2 回は実施し,CKD の有無を同定する. I C進行性のCKD を有するレシピエントには,代謝異常や合併症の管理のために腎臓専門医を紹介する. I C CKD のある移植患者では,CNI を免疫抑制効果が得られる最小レベルまで下げる.さらにCNI を減量しても腎機能障害が持続している場合には,拒絶反応に注意しながらCNI フリーのレジメを使用する. I C末期腎不全の心臓移植患者において生体腎移植を行う. I C