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p.74 抽出テキスト

ナゾール感受性であればフルコナゾールが使用される.フルコナゾールはCYP3A4 を阻害するので,併用によりCNI の薬剤の血中濃度が上昇することがあるため,投与後の血中濃度に注意を払う必要がある.薬剤耐性のリスクと合併症の有無,重症度に応じて治療薬が選択される.

5.6 ニューモシスチス・イロベチイ

ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis Jiroveci)による肺炎は発症すると重症化する危険が高く,術後早期より予防的治療が推奨される.発症のリスクは移植後6 ヵ月以内が最も高いが,高用量のステロイドの長期使用など,特定の危険因子がそれを増大させる可能性がある.乾性咳嗽,息切れや進行性の低酸素血症の症状を呈し,胸部X線は一般的にびまん性間質性浸潤を示し,時に空洞性病変を伴う.診断は気管支肺胞洗浄や喀痰検査を行い,病理組織学的染色による検出によってなされることが多い.PCRやβ-D-グルカンの上昇による診断は非特異的で確定診断には結びつかず,解釈には注意が必要である340).

移植後は6 ~12 ヵ月間のスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)合剤の予防的投与が推奨されている47).サルファ剤アレルギーやグルコース-6- リン酸脱水素酵素欠乏症の患者では,ペンタミジンの吸入やアトバコンなどの代替薬が用いられる.

5.7 肝炎ウイルス

HBV やC 型肝炎ウイルス(HCV)については,移植後の再活性化が報告されている.HBV に関しては,移植適応検討時におけるスクリーニングとして,HBs 抗原,HBs抗体に加えてHBc 抗体の測定が必要である.HBs 抗体のみが陽性の場合はワクチン接種後である可能性が高い. HBs 抗原,HBs 抗体が陰性で,HBc 抗体のみが陽性の場合は,既感染後,偽陽性あるいはseroconversion windowの可能性がある.このような患者ではHBV-DNA 定量検査を行い,専門医に相談のうえ核酸アナログの投与やモニタリングについて検討する.HCV 抗体陽性の場合には, HCV 感染が持続しているか,キャリアか,感染既往者かを区別するためにHCV-RNA 測定が必要である33, 47).

HBV 既感染ドナーからの心臓移植における未感染レシピエントの感染率は3% と報告されているが341),感染した場合は時に劇症化する場合もあり,注意が必要である.抗HBc 抗体が陽性のHBV 既感染ドナーから心臓移植を受ける場合は,移植前にレシピエントに対して十分な説明を行うことが推奨される.移植に際しては,専門家にコンサルトし,移植後のモニタリングや核酸アナログの予防投与に

関して検討する47).移植後のHBV モニタリングフローチャートに関しては,日本移植学会感染症対策委員より発行されている「HBc 抗体陽性のHBV 既往感染ドナー(肝臓以外)からの 臓器移植におけるHBV 感染予防のための診療指針」を参照されたい342).

E 型肝炎ウィルス(HEV)は急性肝炎の原因となるウイルスであるが,臓器移植後などの免疫抑制状態におけるHEV 感染により,慢性肝炎および肝硬変を引き起こすことが明らかになっている343, 344).HEV は糞便中に排泄されたウイルスによって汚染された水や,ウイルスを保有した豚やイノシシなどの動物の生肉を摂取することによって感染することが多いが,輸血による感染も報告されている.原因不明の肝障害を認めた場合には,HEV を鑑別にあげてHEV-RNA の検査を行う.免疫抑制状態のためIgA- HEV 抗体は陰性となる可能性があり,HEV-RNA 検査が必要である.HEV 感染と診断された場合には免疫抑制薬を減量する.その後HEV-RNA が陰性化しない場合はリバビリンが効果的とされている345).

5.8 HTLV-1ヒトT 細胞白血病ウイルスI 型(HTLV-1)は,世界の中でも特に日本に感染者が多いウイルスである.HTLV-1 は,特に合併症などのない感染者の場合,約0.3% に重篤な神経難病であるHTLV-1 関連脊髄症(HAM)を,約5 ~ 10% に致死率の高い成人T 細胞白血病リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma: ATL)を引き起こすことが知られているが,これらの疾患に対する有効な治療薬や発症予防法は確立されていない346).近年,生体腎移植や肝移植において,HTLV-1 感染ドナーから移植を受けることで,高頻度にレシピエントがHTLV-1 に感染するだけではなく,移植後早期にHAM や成人T 細胞白血病(ATL)を発症する危険性が高まることが報告されている346-348).HTLV-1 抗体陽性のドナーからの移植を行う場合には,レシピエントへの事前告知および同意を得ることが不可欠であり,移植後も長期にわたり注意が必要である346).現時点においてHTLV-1 抗体陽性ドナーからの心臓移植はUnited Network for Organ Sharing(UNOS)より推奨されていない.

腎移植においてHTLV-1感染レシピエントへの腎移植は,たとえHTLV-1 感染ドナーからの腎移植であっても, HTLV-1 関連疾患発症の危険性は高いとはいえないことが報告されている346).心臓移植においては,HTLV-1 抗体陽性レシピエントにおける十分な観察期間の研究が存在しな