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p.70 抽出テキスト

4 拒絶反応同定のための検査法

4.1 心筋生検

非侵襲的な検査の有用性の報告はあるものの,心移植後の拒絶反応の評価としてのゴールドスタンダードは現在も心筋生検である.心筋生検のプロトコールは施設間で異なるが,特に初期の心臓移植の時代では拒絶反応の頻度が高かったため心筋生検の重要性は大きく,歴史的に多くの施設で高頻度の心筋生検が行われてきた.心内膜心筋生検は通常,手術後7 日目~3 週間は毎週施行,以降は2 週間ごと,4 週間ごと,8 週間ごとと延ばしていき,6 ヵ月目以降は90 日ごとに,1 年後からは6 ~12 ヵ月ごとに施行する.拒絶反応が認められた場合は治療2 ~4 週間後に治療効果判定のため,追加の心筋生検を行う.

しかし免疫抑制,臓器保存・手術手技の進歩により拒絶の頻度が減少し,それに伴い心筋生検の頻度も減少している.拒絶の頻度が高い移植後早期には,ACR またはAMR の早期発見のため,特に心筋生検の重要性は高いとされているが,心移植後6 ヵ月~1 年以上経過した無症状患者における心筋生検による中等度以上のACR の検出率は1 ~2% と低く274, 315 ),また高頻度に心筋生検を施行している施設がそれ以外の施設と比較して長期の生存率や中~重度の拒絶を早期発見できているわけではないとされる316).そのため心移植後慢性期の定期的な心筋生検の必要性については否定的な報告もある274, 317, 318).一方で,特に移植後早期に中等度から重度の拒絶反応の既往がある小児では,臨床的に拒絶の疑いがなくても心筋生検によって重大な拒絶が発見されることがあるとされている319, 320).そのため国内の施設では,移植後1 年を超える安定期であっても少なくとも年に1 回以上の心筋生検を行っている施設が多いが,今後の検討が必要である.

4.1.1 方法

左室からの生検も可能だが,右室からの生検が一般的である.頚静脈または大腿静脈から経カテーテル的に生検鉗子を進め.右室中隔の心内膜側から2 ~3 mm 大の心筋組織を採取する.サンプリングエラーの可能性を少なくするために,心筋組織が50% 以上を占める生検標本が少なくとも4 個は採取されている必要がある.心内膜心筋生検は頻回に施行され,標本採取部位が比較的一定しているので,採取標本の大部分が以前の生検部位の線維化巣や,修復

過程の肉芽組織であることがある.合併症を避けるために心尖部近くの中隔からの採取が望ましい.合併症として,心室穿孔による心タンポナーデ,脚ブロック,三尖弁逆流の出現に注意が必要である.左室生検で0.64%,右室生検で0.82% の重大な合併症があったとの報告がある321).1生検あたり治療介入を必要とする合併症の発生率は0.08%,合併症全体の発生率は0.54 ~1.4% であったとの報告がある315).

Quilty 効果(図22)は,局所的で心内膜に限局したリンパ球の密な隆起性の集簇像を指すが,心内膜を超えて心筋層への浸潤所見を示すこともある.急性拒絶反応に合併している場合も合併していない場合もある.浸潤細胞は主としてT 細胞であるが,マクロファージやB 細胞も含まれ多彩で,時に新生血管も含まれる.拒絶反応や予後とは関連がないという報告もあり322),自然消退することもある.

4.1.2 拒絶の分類

ISHLT からACR およびAMR についての診断基準が提唱されている.なお,各表は本章の3.1 細胞性拒絶反応ならびに3.2 AMR の病態と診断を参照されたい.

4.2 その他の検査法

拒絶反応を検出するためのゴールドスタンダードとなる検査が心筋生検であることはいうまでもないが,心筋生検は侵襲的な検査であり,繰り返し施行することで合併症のリスクが高まる.また,サンプリングエラーは無視できず,心筋生検では検出できない拒絶反応が存在することも知られている.そのため,心筋生検以外の臨床検査や画像検査を組み合わせて拒絶反応の診断に至ったり,治療の必要性を検討したりすることもある.

図22 Quilty 効果:限局隆起性のポリクローナルな炎症細

胞浸潤