GL検索 v0.1.0
画像は 69 ページを描画したものです
page 69

p.69 抽出テキスト

3.4 ガンマグロブリン

AMR は抗体に関連した細胞傷害が血管内皮を傷害し,微小血管の凝固,心筋虚血,さらには移植心機能障害を引き起こすものであるが,免疫ガンマグロブリン(IVIg)はAMR の治療,および移植前抗HLA 抗体の存在下に脱感作療法の際に検討される薬剤であり,2010 年のISHLT ガイドラインでは,AMR の治療選択として血漿交換の次にIVIg の投与が記載されている143).しかしながら,単独の効果についてのエビデンスは十分ではなく,他の免疫抑制薬や血漿交換と合わせて効果を確認されていることも多く,また他の臓器のエビデンスも含めて参考にすすめる必要がある301-305).

期待される効果としては,1大量のIgG のFc 部分によってFcγ受容体を阻害,2C3b などの補体成分にIgGが結合し反応を抑制,3抗イディオタイプ抗体による作用,4炎症性サイトカインに対する中和抗体の作用などがある46, 306).

2010 年のISHLT ガイドラインでは用量としては0.1 ~

1.0 g/kg を1 ~3 回/ 週程度としている143).2022 年の

ISHLT ガイドラインでは0.1 ~2.0 g/kg とされており,低用量を週1 ~3 回程度を1 ~4 週間というプロトコールと,

2.0 g/kg の高用量を4 週間おきとするというプロトコール

の二つの提示がある47).他の諸外国のガイドラインも1.0 ~2.0 g/kg 程度の同様の投与量の推奨である307, 308).

わが国で2023 年に行われた調査によると,従来は1 回投与量として半数が0.2 g/kgと低い量にとどまっているが,今後はより海外の報告に準じた適切な量での投与が期待される309).なおIVIg はわが国においてAMR の治療として保険適用がある.

本製剤は血中に存在する抗体の反応を抑えると同時に,別の抗体に置き換えることで感染のリスクを低減させる効果もある47).血漿交換と併行して行う場合には血漿交換後に投与することに注意する.血漿交換を含めて日和見感染などの感染症のリスク増悪が予想されるが,Perrottet らによると血漿交換療法では感染のリスクが5.3 倍に上昇するも,IVIg は 0.29 倍に抑えられたと報告している310).

本治療はAMR に対する治療として使用される以外に,移植前の抗HLA 抗体に対する脱感作療法としても使用される311).また,移植後,抗HLA 抗体が存在する患者などを対象に予防的に投与してAMR を予防できるかについては,十分に確立されておらず,他の臓器移植後なども参考にしながら治療を検討する311). 3.5 リツキシマブ

3.5.1 作用機序と適応

リツキシマブは,抗ヒトCD20 ヒト・マウスキメラ抗体であり,CD20 を発現しているB 細胞に対する分子標的薬である.リツキシマブは,わが国での全国使用実態調査312)の結果を受けて,心臓移植におけるAMR の治療薬として2023 年12 月に承認された.AMR の治療以外にも,移植前の脱感作療法,PTLD の治療,またまれに,導入療法としても用いられることがある47).

3.5.2 使用法

AMR と診断された場合,まずはIVIg の投与や血漿交換が考慮されるが,効果不十分な時にリツキシマブが考慮される.通常,成人には,リツキシマブ(遺伝子組み換え)として1 回量375 mg/m 2 を投与し,血行動態,心機能,心筋生検でのC4d 染色などの所見を参考にしながら,1 週間をあけて複数回投与することができる.Infusion reaction を予防するために前投薬が必要である.本剤は生理食塩水または5% ブドウ糖注射液にて10 倍に希釈調製し使用する.

3.5.3 使用上の注意点

CD20 を発現しているB 細胞およびメモリーB 細胞に対して効果を発揮するが,抗体を産生する形質細胞はCD20を発現しておらず,リツキシマブは直接的な効果を発揮できないため,AMR に対する効果発現には時間を要することに注意が必要である.通常,1 回の投与で血中のB 細胞を6 ~12 ヵ月間は感度以下まで減少させることができるが,複数回の投与でさらにリンパ節内のB 細胞にも抑制効果をもたらすことが示されている313).膠原病や悪性リンパ腫に対してリツキシマブを使用した場合,副作用として二次性低ガンマグロブリン血症を発症し遷延することがあり,ガンマグロブリン補充療法を要する例が報告されている314).

AMR の治療として血漿交換と併用されることが多いが,リツキシマブ投与直後に血漿交換を行うことがないよう注意が必要である.