GL検索 v0.1.0
画像は 66 ページを描画したものです
page 66

p.66 抽出テキスト

3.2 AMR の病態と診断

3.2.1 病態

ドナーに対する抗体,すなわちドナー特異的抗体(donor specific antibody; DSA)が産生され,血管内皮細胞への抗原抗体反応による障害から重篤な心機能障害に陥る可能性があり,細胞性拒絶に比べて致命率の高い病態である. DSA は,抗HLA 抗体と抗non-HLA 抗体に分類される.後者には,主要組織適合性複合体クラスI 鎖関連A (major histocompatibility complex class I chain-related A: MICA)抗体などが含まれる.さらに,抗体の検出時期によっても2 種類に分類され,移植前から存在するDSA はpreform DSA,移植後に出現したDSA はde novo DSA と呼ばれる.輸血,妊娠,VAD などによる感作が抗体産生に影響するといわれるが,国内の移植待機患者のほとんどがVAD 植込み状態であり,AMR 発症のリスクがあると考えられる.病態の解明は進んできたものの,診断・治療法におけるエビデンスに基づくデータの蓄積は乏しく,さらなる研究が望まれる分野である47).

抗体特異性,親和性,および生物学的活性によって関与する経路が異なるため,まれな超急性拒絶反応からさまざまな強度の急性拒絶反応,そして最終的には無症状または不顕性拒絶反応まで,AMR の発現形態は多様であ

る278, 279).

一般に,HLA クラスI 抗原は,移植片を含む体内のすべての有核細胞に発現するため,移植片が直接目に見える形で障害される可能性が高くなる.HLA クラスII 抗原は,活性化した冠動脈内皮を含む抗原提示細胞上にのみ発現し,一般に,成人および小児の心臓における慢性的な臨床症状をもたらす280-283).

超急性拒絶反応では,移植後数分から数時間以内に免疫介在性の急性グラフト機能不全が現れる.重篤なグラフト不全は,レシピエント血清中に存在するドナー抗原に対する高力価抗体が原因で,典型的には心原性ショックを引き起こす.

わが国ではドナーリンパ球を用いた細胞傷害性試験でT 細胞クロスマッチが陰性の場合のみ心臓移植を施行しており,超急性拒絶反応はまれである.急性期以降に誘因のない心機能低下,血行動態悪化を認めた場合は,常にAMR の可能性を念頭に置いた対応が必要である.また移植1 年後以降より発症する晩期のAMR はCAV の増悪やグラフト不全の重要な原因であることが確認されている282, 284, 285).

3.2.2 診断

AMR の診断には,抗HLA 抗体検査,心内膜心筋生検

表19 ISHLT によるACR の分類

ISHLT 2004 ISHLT 1990

Grade 0R炎症や心筋細胞傷害を示す所見なし. Grade 0所見なし. Grade 1R, mild間質または血管周囲性炎症細胞浸潤を認めるが,心筋傷害像が1 ヵ所までのもの. Grade 1, mild A Focal

B Diffuse局所的な血管周囲への大型リンパ球浸潤が1 ヵ所以上で認められるが,心筋細胞傷害は認められない.

びまん性に炎症細胞浸潤が広がるが,心筋傷害像を伴わない.

Grade 2, moderate (focal)心筋傷害像を伴う炎症細胞浸潤が1 ヵ所まで.

Grade 2R, moderate心筋傷害像を伴う炎症細胞浸潤を2 ヵ所以上認めるもの. Grade 3, moderate A Focal

B Diffuse心筋傷害像を伴う多発性炎症細胞浸潤を認めるもの.

多発性,融合性に心筋傷害像を伴う炎症細胞浸潤を認めるもの.

Grade 3R, severeびまん性に炎症細胞浸潤を認め,心筋傷害像も多数伴うもの(浮腫,出血,血管炎を伴うこともある).

Grade 4, severeびまん性に多型の炎症細胞,広範囲な心筋傷害像がみられ,浮腫,出血,血管炎を伴うこともある.

(Stewart S, et al. 2005

273)より) Copyright (2005) International Society for Heart and Lung Transplantation., with permission from Elsevier.