p.64 抽出テキスト
能となった.レテルモビルはCYP3A を時間依存的に阻害しCNI やEVL の血中濃度を上昇させることが添付文書に明記されている269).また,CyA の血中濃度を上昇させるため,用量を通常量の半量とすることが添付文書に明記されている269).一方,治療薬のマリバビルはCNI やEVLの血中濃度を上昇させること,またCYP3A4 の誘導作用も有することが添付文書に記載されている270). 食品との相互作用として有名な例はグレープフルーツによるCYP3A 阻害であり,グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類の一部が小腸のCYP3A4 を阻害する271)一方,抗うつ作用があるとして使用されるハーブのセントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)はCYP3A を誘導することが報告され,CYP3A4 で代謝される薬剤との相互作用に注意が必要である272). 3 拒絶反応 3.1 細胞性拒絶反応 移植心(ドナー心)を非自己と認識することにより,レシピエントの活性化された単核球(T リンパ球主体)が移植心の心筋細胞を直接的に攻撃することで起きる生体反応である.現在の標準的三薬併用療法を中心とした免疫抑制療法がなされるようになり,重篤な急性拒絶反応は減少した.しかし重篤な拒絶反応が発生すると移植後の予後に関与してくるため,そのマネジメントと治療は重要となる. 急性拒絶反応のほとんどは臨床的には無症状で,中等度以上の拒絶反応で症状を呈する.症状としては,発熱,倦怠感,筋肉痛,関節痛などの感冒様症状や頻脈,心膜摩擦音,上室性不整脈や心不全症状などである.症候性の場合には入院して治療すべきであり,血行動態の悪化を認める場合には(低血圧,心拍出量の低下,肺動脈楔入圧の上昇など)集中治療室で管理の下で治療すべきである(推奨表4). 3.1.1 診断 急性拒絶反応の診断におけるゴールドスタンダードは,心筋生検での病理組織学的所見である(図20).ISHLT から心筋生検による移植心のACR について診断基準が提唱されており,2004 年には1990 年に提唱されたものより単純化した基準が報告された(表19) 273).これは拒絶反応の主体である細胞浸潤と細胞傷害の程度と広がりから分類されたものである.ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標 本で診断するが,線維化や心筋細胞傷害の識別に役立つマッソントリクローム(Masson’s trichrome)染色も併用する.また,非侵襲的検査も併用しながら拒絶反応についてモニタリングする.心臓超音波検査では,拒絶反応による心筋間質の浮腫の結果として左室壁の肥厚や心筋重量の増加,左室拡張期コンプライアンスの減少による拡張機能の変化,心嚢液の貯留などがみられる.さらに,種々のバイオマーカー(トロポニンT・トロポニンI・NT-proBNP など)の測定も診断の補助となる. 心筋生検のほとんどはルーチンサーベイランスとして無症候の移植患者に実施されている.CNI とMMF のレジメで無症候である場合,中等度以上のACR がある確率は1 ~2% とされており274),さらにACR の発生率は移植後経年的に減少していく.ルーチンサーベイランスとしての心筋生検の実施を減らし,非侵襲的検査でモニタリングを実施していく取り組みがなされてきている.末梢血の遺伝子発現プロファイリングを用いて血液中の20 種類のRNA検出を行うことでISHLT2004 のGrade 2R 以上のACR を予測する検査(AlloMap 検査) 275)や移植心が傷害された際に遊離するドナー由来DNA を検出する方法(Donor derived cell-free DNA) 276)が欧米で使用されてきているが,日本ではまだ臨床応用されていない.心臓MRI を用いたサーベイランスプロトコルが移植後1 年間の細胞性拒絶反応の評価として利用可能であったという報告もあり277),今後非侵襲的なモニタリング法を確立していくためにさらな 推奨表4 ACR の管理における推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 症候性ACR は入院のうえ加療し,血行動態の悪化を認める(低血圧,心拍出量の低下,肺動脈楔入圧の著明な上昇)場合は集中治療室で治療する. I C症候性ACR に対する治療の第一選択は,静注高用量ステロイドである. I Cステロイド治療後に改善がみられない場合は,抗胸腺細胞抗体の使用を考慮する. IIa C ACR の再発リスクを減少させるために,免疫抑制療法を適切に行う(服薬アドヒアランスについて確認,現在の免疫抑制療法の強化,新規薬剤の追加や変更). I C中等症以上のACR(ISHLT2004 のGrade 2R)は無症候であっても静注高用量ステロイドで治療する. I C治療経過を評価するための心筋生検は, ACR の治療開始1 ~4 週間後に行う. I C