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p.63 抽出テキスト

方,日常診療下において遺伝子多型の測定は保険適用では行われず,評価は困難である.したがって,投与開始後早期から血中濃度を確認することでCYP3A5 遺伝子多型を考慮して投与量の幅を調整することが望ましい.

CYP3A の発現量に変化をおよぼす因子としては年齢,性別,肝臓の大きさ,疾患による影響,喫煙,食事因子,ホルモンなどである251).また,肝血流量が大きければ薬物クリアランスが大きくなり薬物血中濃度は低下する.肝血流量に寄与する因子としては年齢,心不全などの疾患,薬物などが知られており,妊娠した場合,妊娠時期により分布容積が変化するため薬物動態が変化することが知られている.さらに血中のプロゲステロン濃度の上昇により,胃および腸管の通過時間が増加するため薬物吸収が増えるとされている252).CYP3A の発現量は妊娠により増加するため,CNI の血中濃度が低下することが報告されている253).したがって,妊娠中は初期から後期まで変動要因が多岐にわたるため頻回にCNI の血中濃度を含めた慎重なモニタリングを行う必要がある.

2.6.2 EVL 測定間誤差

全血中のEVL 濃度測定にはLC-MS/MS 法,ECLIA法,LTIA 法,ACMIA 法がある254, 255).2016 年から一般社団法人TDM 品質管理機構によってスパイクサンプルを用いた免疫抑制薬血中濃度測定の全国QC サーベイが毎年実施されている.CyA,Tac,EVL,MMF について,おのおの3 つの濃度のサンプル検体が参加施設に配布され各施設の測定方法を用いて測定し,その測定間誤差が報告されている.毎年,EVL の各測定系における測定間誤差が大きい.一方で,論文などではどの測定方法を用いた血中濃度であるかを明示されていることが少なく,日常診療下でも研究下においても,EVL の血中濃度を評価するには測定方法を考慮しながら判断すべきである.

2.6.3 後発(ジェネリック)医薬品

2024 年10 月1 日から同じ成分の後発医薬品がある先発医薬品の長期収載品に関して,特別な理由がない限り先発医薬品を選んだ場合に特別の料金(課税対象のため消費税も含まれる)が患者負担となった.しかし,特に移植臓器の機能が安定している患者では,先発医薬品から後発医薬品への機械的な切り替えを,日本移植学会は推奨していない.理由としては,後発医薬品の製造承認要件は健常被験者10 人程度のクロスオーバー試験における-20% ~ +25%(AUC またはCmax)の生物学的同等性試験に基づいており,臓器移植患者における使用を想定しているものではない点にある256).また免疫抑制薬の投与量設定に使用されているCmin(トラフ値)の同等性に関しては検討さ

れていない.さらに,先発医薬品と後発医薬品の切り替えに際し,薬物血中濃度の低下や急性拒絶反応による移植臓器機能異常,免疫抑制薬の副作用が報告されている257-259).そのため,先発医薬品で治療中の臓器移植患者において後発医薬品への切り替えを要する場合には,入院中の切り替えや頻回のTDM が必要となる.この際に必要となる追加の検査に加え,急性拒絶反応や有害反応の発現などの医学的リスク,ならびに,それらがもたらす保険請求可能範囲を超える経済的負担を考え合わせると,移植臓器の機能が安定している患者での先発医薬品から後発医薬品への機械的な切り替えは,本ガイドラインにおいても推奨されない.

2.6.4 薬物間相互作用

薬物動態の吸収,分布,代謝,排泄過程において,薬物間相互作用が多く認められるのは代謝過程である.特にCYP の阻害(代謝が遅れ薬物血中濃度が上昇)と誘導(発現量増加により代謝が亢進することで,薬物血中濃度が低下)がおもな原因となる249-251).CNI やEVL はCYP3A 群で代謝されることが知られている.したがってCYP3A を誘導する薬剤,阻害する薬剤,CYP3A 群で代謝される薬剤との相互作用に注意しなければならない.CYP3A を誘導する薬剤としてリファンピシン,リトナビル,フェニトイン,カルマバゼピン,フェノバルビタールが知られている260-262).一方CYP3A を阻害する薬剤として,14 員環マクロライド系抗生剤,アゾール系抗真菌薬,ベラパミル,ジルチアゼム,シメチジン,エチニルエスタラジオールが報告されている263-265).心臓移植後の日和見感染に投与されるアゾール系抗真菌薬については,その阻害の強さが薬剤によって異なることがISHLT から報告されている264).また,ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬(アムロジピン,ニフェジピン,ニカルジピンなど)はCYP3A4 による代謝を受けるため,CNI と競合拮抗することでCNI の血中濃度を上昇させることが報告されている264, 266, 267).

心臓移植前にアミオダロンを長期に投与していた場合,その代謝物デスエチルアミオダロンが脂肪組織など全身に蓄積するため,アミオダロン長期内服例ではCNI との相互作用に留意しなければならない268).また,心臓移植後にしばしば併用することが多いスタチンもCNI と相互作用があることが知られており,詳細は6.5 脂質異常症を参照いただきたい.

近年,レテルモビルが「臓器移植(造血幹細胞移植を含む)におけるCMV 感染症の発症抑制」に対して,マリバビルが「臓器移植(造血幹細胞移植を含む)における既存の抗CMV 療法に難治性のCMV 感染症」に対して使用可