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阻害薬の使用により,最大内膜厚(MIT)や内膜面積,容積,CAV 発症率が,AZP 233)やMMF 236)に比べて有意に減少することも報告されている.

EVL を併用することで,腎毒性のあるCNI を減量し,心臟移植後の腎機能低下リスクを軽減できる可能性が示唆されている237, 238).

EVL は,CAV の進行に関与するとされるCMV 感染症を含むヘルペスウイルス感染症の発症頻度を減少させる233, 236).CMV 抗体陽性ドナーから陰性レシピエントへの移植など,CMV 感染リスクの高い場合では,維持免疫抑制療法としてEVL への変更も検討される47).一方で, EVL は,AZP やMMF に比較して,細菌や真菌による感染リスクを高める危険性があり,注意が必要である.

移植後遠隔期の悪性腫瘍に対する抗腫瘍効果も期待されている.SRL 239),EVL 240)ともに,PTLD の原因となるEBV 感染細胞の増殖を抑制することが報告されている.

mTOR 阻害薬の導入時期に関しては,移植後早期の開始が,CAV の予防や腎機能保護の面で有益である可能性が示唆されているが238, 241, 242),創傷治癒を遅延する可能性があり,術後の創部治癒の程度を考慮しながら検討する.一方で,CNI 投与を中止したmTOR 阻害薬による免疫抑制療法は,拒絶や有害事象のリスクが高まるため,特に移植後早期のCNI 投与の中止は避けるべきである205, 206, 235).

2.5.3 EVL の使用法(表18) 47)

成人では,EVL1.5 mg を1 日2 回に分けて経口投与し, 1 日量3 mg まで増量できる.CyA と併用する場合,推奨されるEVL の血中トラフ濃度は,3 ~8 ng/mL である47). EVL は,肝臓や小腸壁の薬物代謝酵素CYP(シトクロムP450)で代謝され,Tac 同様,TDM が必要である.マクロライド系抗菌薬や抗真菌薬のイトラコナゾールなど,チトクロームP450(CYP)を阻害する薬剤を併用する場合には,血中濃度の変化に注意すべきである.mTOR 阻害薬とCNI を併用する場合,CNI 単独療法と比較して,CNI の目標トラフ濃度を30 ~70% 程度低く設定する204, 243).Tacと併用する場合,推奨されるEVL の血中トラフ濃度は, 3 ~8 ng/mL である47).一方,CNI を中止してmTOR 阻害薬で治療を行う場合は,拒絶リスクを考慮して,EVL のトラフ濃度を6 ~10 ng/mL,SRL を8 ~15 ng/mL に設定することが提案されている47).

小児の心臓移植患者に対するmTOR 阻害薬の使用経験は限定的であるが244),成人と同様の投与方法が提案されている.CNI と併用する場合,推奨されるEVL の血中トラフ目標濃度は3 ~6 ng/mL とされ,CNI 投与を中止して治療する場合には,3 ~8 ng/mL が推奨される47).ただし,小児では成長障害や副作用のリスクを考慮し,個々の

患者の状態に応じた慎重な投与が求められる.拒絶のリスクが高い症例ではmTOR 阻害薬の高用量を,感染症や腎機能障害のリスクが高い症例では低用量を検討すべきである.

2.5.4 副作用と注意すべき点

mTOR 阻害薬の使用にあたっては,口腔内潰瘍,間質性浮腫,創傷治癒遅延などの副作用に注意が必要である236, 245-247).特に移植直後の高用量投与では,創部離開やグラフト血栓症,感染症といった周術期合併症のリスクが高まることが報告されており236, 247),移植後早期の使用は勧められない.また,形態異常誘発があり,男性では精子運動能,精子数および血漿中テストステロン濃度の減少などが報告されており248),挙児希望の場合,産科と相談のうえ薬剤変更を検討する.mTOR 阻害薬の導入や投与量の調整は,患者の拒絶リスクや副作用の発現状況を考慮しながら,個別に判断することが重要である.

2.6 薬物血中濃度への影響因子

2.6.1 CYP3A 活性と遺伝子多型ならびに CYP3A 発現量に影響をおよぼす因子

CNI はCYP3A による代謝を受ける薬剤である.CYP活性については遺伝子多型によるところが大きい.Tac はCYP3A で代謝されるため,CYP3A5 の遺伝子多型によるその用量が異なることが知られている249, 250).CYP3A5発現者(CYP3A5*1/*1,または*1/*3)では非発現者(CYP3A5*3/*3)(代謝が遅い)に比較してTac 投与量が多く必要であり,投与量調整の際の増量幅を大きくして目標血中濃度への到達が遅れないようにする必要がある.一

表18 mTOR 阻害薬(EVL)の推奨血中濃度

EVL(ng/mL)成人CNI の併用あり3 ~8なし(例:mTOR 阻害薬+MMF) 6 ~10小児CNI の併用あり3 ~6なし(例:mTOR 阻害薬+MMF) 3 ~8 (Velleca A, et al. 2023 47)より作表)