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p.60 抽出テキスト

与開始後早期に重篤な白血球減少を生じることが多いとされ,使用を回避することが望ましい215).NUDT15 遺伝子検査は,チオプリン製剤を考慮する複数の病態において保険適用となっているが,2024 年8 月現在,心臓移植後に関しては承認されていない.

臨床,動物実験で催奇形性が報告されているが,本剤は代謝拮抗薬で唯一胎盤を通過しない薬剤であるので,挙児希望の場合には,MMF やEVL を本剤に切り替え,拒絶反応などがないことを確認してから妊娠するよう指導する.

過度の免疫抑制により移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)の可能性が高まることがあるため,有効最低限の免疫抑制を維持する.

間質性肺炎を疑う症状が現れた場合には投与を中止し,適切な処置を行う.

2.3 ステロイド薬

ステロイド薬は免疫抑制作用と抗炎症作用を発揮し,導入免疫抑制療法,維持免疫抑制療法,さらに急性拒絶反応発症時の治療において重要な役割を果たす.急性拒絶反応の予防と治療において幅広く使用される一方で,長期使用による副作用がしばしば問題となる.ISHLT レジストリのコホート研究では,移植後5 年以上のステロイドの使用は,移植後2 年以内にステロイドを中止した場合と比較して,移植後10 年目までの死亡率が有意に増加していたことが報告されている216).6 ヵ月以降のステロイドの漸減・中止に関しては良好な成績が報告されているが217, 218),症例に応じた検討が必要である.

2.3.1 作用機序

ステロイドは,白血球(T リンパ球,B リンパ球,顆粒球,マクロファージ,単球)や内皮細胞の機能に影響を及ぼす複数の遺伝子の転写調節を変化させることによって作用する.第1 の機序として,ステロイドは細胞膜を透過し,細胞内のグルココルチコイド受容体(glucocorticoid receptor: GR)と結合する.活性型になったGR は核内に移行し複数の標的遺伝子に結合することで遺伝子の転写を調節(活性化または抑制)する.第2 の機序は,リンパ球,マクロファージなどにおいて,activating protein-1 (AP-1)やnuclear factor-kappa B (NF-κB)といった転写因子を抑制することにより,サイトカイン産生,増殖因子,接着分子を制御する遺伝子を含むいくつかの遺伝子の発現に影響を及ぼす.これらの結果として,免疫抑制作用や抗炎症作用を生じる219). 2.3.2 用法の例

周術期:メチルプレドニゾロンドナーに執刀直前に20 mg/kg を静脈内投与する.レシピエント側には大動脈遮断解除直前に10 mg /kg を静脈内投与し,術後には2.5 mg/kg を8 時間ごとに計3 回,静脈内投与する.

術後・慢性期:プレドニゾロン成人には,初回量として,1 日20 ~60 mg(0.4 ~1.2 mg/ kg)を1 ~4 回に分割経口投与する.その後の漸減プロトコルは施設により異なり,また個々の症例に応じた調整が必要であるが,長期投与による副作用のリスクも鑑みわが国では術後1 年程度で漸減中止とする施設が多い.詳細は添付資料も参照されたい.小児では成長障害の原因となるため可能な限り3 ~6 ヵ月以内に中止できるようにする.

拒絶反応発症時:メチルプレドニゾロンメチルプレドニゾロン500 ~1000 mg/ 日を3 日間静脈内投与する.

2.3.3 副作用

長期使用による副作用として代表的なものに,高血圧,糖尿病,創傷治癒遅延,消化性潰瘍,精神変調やうつ状態,白内障,骨粗鬆症,大腿骨および上腕骨などの無菌性骨頭壊死,満月様顔貌,皮膚症状(ざ瘡,多毛,脱毛など)がある.

2.4 抗CD25 抗体(抗IL-2 受容体抗体)

2.4.1 作用機序

抗CD25 抗体製剤は活性化T リンパ球に選択的に発現するCD25(IL-2 受容体)のαサブユニットに競合的に結合し,その阻害により細胞性拒絶反応の主要な機序であるリンパ球の増殖および分化が抑制される.抗CD25 モノクローナル抗体製剤であるバシリキシマブは,おもに移植後急性拒絶反応を予防するために周術期に使用される強力な免疫抑制療法,つまり導入療法として使用されている.導入療法の目的は拒絶のリスクが高いときに強力な免疫抑制を行うことであり,拒絶反応のリスクの高い患者に対する移植後急性期の拒絶反応発症抑制や腎機能が低下したレシピエントで腎毒性の強いCNI 投与の開始を遅らせることができる,といった利点がある.