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p.59 抽出テキスト

2.2 代謝拮抗薬

代謝拮抗薬(核酸合成阻害薬)は,種々の代謝経路で核酸の基になっているプリン,ピリミジンの合成を抑制することにより,DNA やRNA の合成を抑制し,リンパ球増殖を抑制する.心臓移植に関しては,1970 年代からAZP がCNI,ステロイドと併用されてきた.その後,AZP に比して好中球抑制や脱毛などの副作用が少ないMMF が登場し現在はMMF が第一選択となることが多い.一方,MMFは妊娠中の投与は禁忌であるため,AZP は現在でも挙児希望のある患者に対して用いられることがある.

2.2.1 MMF

a.作用機序

MMF は,投与後,生体内で速やかにミコフェノール酸(MPA)に加水分解される.MPA はde novo 系,salvage系のプリン生合成経路のうち,de novo 経路を選択的に阻害し,DNA 合成を抑制する.T,B リンパ球細胞は核酸合成を主としてde novo 系に依存するのに対し,免疫系以外の細胞はde novo 系,salvage 系の両者に依存しているため,salvage 系酵素に影響しないMMF は結果的にリンパ球細胞の増殖を選択的に抑制する. b.用法・用量

CNI と併用の場合,1 回500 ~1500 mg を1 日2 回12時間ごとに経口投与する.静注薬はない.移植直後は白血球減少になりやすいので,500 ~1000 mg/日で開始して問題がなければ2000 mg/日に増量する.急性細胞性拒絶反応(ACR)が頻回にみられたり,抗体関連型拒絶反応(AMR)がみられたりする場合は,3000 mg/日まで増量可能である.腎機能障害がみられる場合にも,CNI を減量する代わりにMMF を増量することがある.

MMF 投与によるTDM 実施については施設により異なる.一般的には,トラフ値のみによるモニタリングは推奨

されていない. c.おもな注意点

副作用として,消化器症状(悪心,嘔吐,下痢など)が多いのが特徴である.

骨髄抑制を起こしやすいので,定期的に血液検査を行い,白血球減少の際には減量,休薬,顆粒球増殖因子投与などを行う.

重度の慢性腎不全患者では血中濃度が高くなることがあるため,2000 mg/日までとする.また,使用中に重度の腎障害が出現することがあるため,臨床検査所見に注意する.

AZP に比して拒絶反応抑制は強いが,特にウイルス性感染症が増加することが知られている212).ウイルス感染,特に新型コロナウイルス感染症の際には減量または中止を検討してもよい213).

形態異常誘発が報告されており,妊娠中の投与は禁忌である.挙児希望の場合は,受胎を望む6 週間前には中止しておくことが推奨されている214).その場合はAZP への変更を検討する.

2.2.2 AZP

a.作用機序

AZP は生体内で6- メルカプトプリンに分解され,細胞内で核酸合成を阻害することにより様々な免疫抑制作用を示す. b.用法・用量

心臓移植においては,成人および小児に維持量として1 ~2 mg/kg/日を1 日1 回経口投与する. c.おもな注意点

骨髄抑制を起こしやすいので,定期的に血液検査を行い,白血球減少の際には減量,休薬,顆粒球増殖因子投与などを行う.なお,NUDT15 遺伝子多型のうち日本人の約1%に存在するCys/Cys 型を保有する場合,チオプリン製剤投

表16 免疫抑制薬(CyA とTac)の他の薬物との相互作用

相互作用の薬物CNI の濃度

CyAクロラムフェニコール,アロプリノール,イマチニブ,ドセタキセル,メトクロプラミド,アセタゾラミド,カルベジロール,コルヒチン上昇

チクロピジン,オクトレオチド,プロブコール,テルビナフィン低下

Tacプロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール,ランソプラゾール)上昇

両剤マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン,エリスロマイシン),アゾール系抗生物質(イトラコナゾール),カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム,ニカルジピン,ベラパミル),免疫抑制薬(EVL,メチルプレドニゾロン),HIV プロテアーゼ阻害薬上昇

抗てんかん薬(カルバマゼピン,フェノバルビタール,フェニトイン),抗結核薬(リファンピシン)低下

(Velleca A, et al. 2023 47),日本TDM 学会/ 日本移植学会. 2018 211)より作表)