p.58 抽出テキスト
薬物血中濃度への影響因子を参照) 47). 2.1.4 濃度設定 濃度設定については測定系によっても異なり,またinduction therapy の有無,併用している他の免疫抑制薬の種類によっても個別に調整が必要である.一般的にはAZPやミコフェノール酸モフェチル(MMF)と併用するプロトコールの場合には,表15 143)を1 つの指標に検討する.薬物代謝も人種などの影響を受けることに注意が必要である.Induction therapy の有無や移植後の時期によって目標血中濃度は変化すると思われ,個々の施設の治療に沿った調整が望ましい. 通常,術後の尿量の確保を確認してから投与を開始する.一例として,Tac であれば1 回0.5 mg を1 日2 回から開始し,目標濃度を目指して増量し,CyA については3 mg/kgの1 日量を2 回に分けて経口投与する. Induction therapy が行われた場合にはCNI 投与の開始のタイミングを1 ~10 日後など少し遅らせることが可能である191).また薬剤血中濃度も少し低めの値を目標として設定可能である. 2.1.5 CyA とTac の比較 CNI として使用するCyA とTac の効果の比較については,今までいくつかの報告がなされている.移植後の生存率は同等であることが報告されているが192, 193),しかしグラフト拒絶の抑制についてはTac のほうが優れていると報告されている194-196).耐糖能障害や脂質異常についてはCyA のほうが高率に認められる192).腎機能低下については両群に差を認めなかった197-199).薬剤選択については個々の副作用も含めて総合的に判断する.換算量としてはCyAの1/25 ~1/20 がTac の量に相当する. 2.1.6 CNI 減量の試み CNI は基本的に移植後の免疫抑制の軸となる薬剤であるが,腎機能障害,血圧上昇などの副作用の問題も多く, CNI の用量を減量する試みが複数報告されている200-204). MMF やエベロリムス(EVL)を用いたCNI の量低減の試みも複数あるが201, 202),近年ではEVL の導入に関する報告が多く,EVL と併用することでMMF やAZP の併用時に比べて,CNI を40 ~60% 程度減量をはかっても,拒絶などの抑止効果が変わらないことが示されている47, 203).この際のEVL の濃度設定も3 ~8 ng/mL で十分と報告されている204). また近年,CNI を完全に中止し,EVL を軸に治療する検討がなされており,EVL 群のほうが腎機能障害を抑えることができるが,一方でグラフトの拒絶リスクは若干高くなる205, 206).CAV に関しては,EVL 群のほうがリスクを抑える結果であった. 2.1.7 副作用 CNI の副作用として最も注意すべきは腎毒性,高血圧,代謝障害,神経障害である.腎障害については別項の記載があるが,高カリウム血症にも注意が必要である207).代謝障害については脂質異常,耐糖能障害などが含まれ,6. 免疫抑制治療に続発する病態を参照とする.神経障害はCyA およびTac の両者で認めるが,出現の仕方は多様である.振戦,神経痛,末梢神経障害はTac にみられやすい.重度のものとして,幻覚,精神症状,構音障害,てんかん発作,小脳失調などが起こり得る.急な高濃度のCNI の曝露は危険因子になるが,トラフ濃度との関連はない208).また可逆性後頭葉白質脳症(PRES)という病態があり,頭痛,視覚障害,意識変容,けいれん発作などを呈する. PRES は通常数日から数週間で回復し,障害による脳出血や障害そのものによる脳浮腫によって生じる.容量過多や血圧上昇,腎機能障害などがPRES のリスクとなる209, 210). CNI はCYP3A4 にて代謝されることより,薬物相互作用についても注意すべきである(表16) 47, 211). 表15 AZP やMMF を併用する場合のCNI(CyA とTac)の血中濃度の目安 CyA(ng/mL) Tac(ng/mL)目標濃度許容範囲目標濃度許容範囲 ~術後6 週間325 275 ~375 12.5 10 ~15 6 ~12 週275 200 ~350 12.5 10 ~15 3 ~6 ヵ月225 150 ~300 10 8 ~12 6 ヵ月~ 200 150 ~250 7.5 5 ~10 (Costanzo MR, et al. 2010 143)より作表)