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p.57 抽出テキスト

2.1 CNI

CNI は心臓移植後に使用される免疫抑制薬として主軸のうちの1 つであり,CNI と代謝拮抗薬あるいは細胞増殖抑制薬,ステロイドの3 種類を組み合わせて免疫抑制薬のレジメンを作成することが多い.しかし,腎機能障害をはじめとするCNI の副作用の問題もあり,CNI の減量やCNIを使用しない免疫抑制薬のレジメンが報告されている47).

2.1.1 CNI の作用機序

CyA とタクロリムス(Tac)は,T リンパ球の細胞質内シクロフィリン(cyclophilin)およびFK506 結合蛋白質(FK506-binding protein: FKBP)と複合体を形成してカルシニューリンに結合し,その活性化を阻害することで,T細胞特異的転写因子(nuclear factor of activated T cell)やNF-κB の活性化を阻害し,IL-2,4,5,6,17 などの炎症惹起性および細胞増殖性のサイトカインの転写を抑制する185, 186).また,IL-2 の受け手である,細胞障害性T 細胞のIL-2 受容体も抑制する.基本的にはヘルパーT 細胞に作用するが,サプレッサーT 細胞や細胞障害性T 細胞への効果もあり,一方でB 細胞への作用はわずかである.

2.1.2 製剤の種類

CyA の製剤にネオーラルとサンディミュンがあるが,後者は経口でのバイオアベイラビリティが低く,患者間で薬物動態の差異が大きい.マイクロエマルジョン前濃縮物質製剤が推奨されている143).

Tac はさまざまな製剤が開発されており,通常は1 日2回投与の製剤(プログラフ)を選択するが,1 日1 回投与の

徐放製剤(グラセプター)を使用することもできる47).後者は薬物放出の延長とバイオアベイラビリティの向上に有利であり,1 日1 回の投与も可能であるが,長期的な効果はまだ確立していない187).また,製剤間の移行の際には薬剤量の決定に調整が必要である.心臓移植後では1 日2 回の製剤を使用することが推奨され,アドヒアランス,副作用などから1 日1 回の製剤が望ましいときに移行を検討する47).1 日1 回の薬剤を使用する場合には薬物濃度とグラフト機能などを,より注意して経過をみる.基本的にCNIは内服投与になるが,経口投与が困難な場合には経静脈的投与で代替し,CyA については経口の30% 程度の用量で, Tac の場合には10 ~33% 程度の用量で持続投与を行う.

2.1.3 血中濃度モニタリング

CyA およびTac は患者間および測定機器間の濃度変動が大きいため,治療薬物血中濃度モニタリング(TDM)を行いながら用量調整することが望ましい.CyA では12 時間トラフあるいは2 時間ピークの値を参考にし,Tac は製剤によって12 時間トラフの値を参考にする.CyA の場合には,トラフ値より内服後2 時間値がAUC(area under the curve)をもっともよく反映するとされ,これを指標にすることでよりグラフト拒絶を効率的に抑制できるとする報告もある188).一方で,2 時間値の濃度測定は煩雑であり一般化しにくい点もあるが,濃度調整で難渋する場合にはトラフと2 時間値の両者で調整するなど適宜検討が必要である143, 189, 190).通常,測定は用量調整後2,3 日後の濃度測定が推奨される.CNI の代謝動態は遺伝子多型によっても左右され,CYP3A4 およびCYP3A5 の影響を受ける(2.6

steroid

MHC 抗原

抗原提示細胞

T 細胞TCR ATG

CD3

CD4

CNI NF-AT Cytokine

IL-2 Anti CD25 mAb

IL-2R

EVL

steroid

細胞周期Calcineuirin

mTOR

Cyclin/CDK

MMF AZP

図19 免疫抑制薬の作用部位