p.51 抽出テキスト
人工心肺送血カニューラを挿入する.必要であれば弓部大動脈に送血カニューラを挿入してもよい. 拡張型心筋症患者など動脈硬化の少ない症例では,full flow が確保されるのであれば大腿動脈などperipheral access の送血路でも問題はない.Lower-Shumway 法での吻合を予定している場合には,心臓摘出時に心房カフを十分残せるように,また吻合の際の視野を妨げないように脱血カニューラを挿入する.レシピエント洞機能は必要なくなるため,上大静脈へのカニュレーションは洞房結節近くの右外側寄りの右房から行う.下大静脈へもなるべく右外側部から挿入し,心臓摘出時にカニューラ挿入部から心房カフを十分残せるようにする.Bicaval 法の場合は上・下大静脈に吻合の余裕を残す必要があるため,可及的上位・下位で脱血カニューラを挿入する.下大静脈は大腿静脈からカニュレーションを行えば,良好な視野とゆとりのある吻合長を確保できる.上下大静脈を剥離テーピングし,体外循環を開始する.癒着が高度である場合は,まず体外循環を開始してから残りの剥離操作を行う. 経静脈的植込み型ペースメーカが挿入されていれば,体外から最小レート・最小出力に変更し,体外循環開始後にLVAD を停止する.次いでoutflow graft を遮断して切離する.バッテリーケーブルは縦隔内でニッパープライヤーなどを用いて切断しておき,切断端はサージカルグラブの切れ端などを被せておき汚染を予防する. 4.4 心臓摘出 ドナー心が手術室に到着し,間違いなく使用可能であることを確認してからレシピエント心の摘出を開始する.上下大静脈のテープをスネアし,LVAD outflow graft 吻合部より上位で上行大動脈を遮断する(図15) 126).Lower- Shumway 法では,右心耳の基部に切開を置き,房室間溝に沿い尾側に向かって右房切開を行う.下大静脈カニューラからできるだけ距離をおいて十分なカフを残し,冠静脈洞に向かって切開を延長する.頭側では右心耳を周り心房中隔に向かって切開を延長する.右心房下縁の切開部から心房中隔に向かって切開を置き,頭側の切開線と連続させる.Bicaval 法では上大静脈・下大静脈それぞれを横切するが,modified bicaval 法では上・下大静脈ともに前面1/2 の切開に止め後壁を残して上下大静脈の連続性を保つ切開線を繋げる. 上行大動脈および肺動脈をいずれも弁の直上にて離断する.両大血管起始部の間,およびその後面を剥離するが,この際,右肺動脈を損傷しないように注意する.心臓を下方に牽引しながら左房天井を左心耳基部に向かい切開する.次いで冠静脈に沿い僧帽弁輪からあまり離れない位置で左房切開を延長し,心摘出を完了する. 図15 レシピエント心の摘出(Jacob S, et al. 2022 126)より) © Jacob S, et al 2022. CC BY 3.0