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p.48 抽出テキスト

あることが示唆された.

2.2.2 今後の課題

国内の心保存液の使用について,現在心保存目的に国内で保険適用が得られた薬剤はなく,薬剤選択は各施設の判断に委ねられている.UW 液は,腎臓,肝臓,膵臓のドナーからの臓器摘出時の臓器灌流・冷保存目的で,国内に流通がある.Celsior 液の使用は現状海外からの輸入で購入し使用する他に方法はなく,施設ごとに使用にあたっての申請,海外輸入の手続きなどを行う必要がある.薬剤の発注・納品までには平均3 ~4 週間を要すること,脳死移植の発生時期は予想が困難であることから,各施設が一定の在庫を抱えることが必要となっている.これまでの国内の心臓移植での心筋保護液の使用成績を踏まえた検証をもとに,移植に際して安定した利用を可能とするためにも,一定の薬剤について保険適用を通すことを視野に入れていくことが望ましい.また,他臓器(肺)では国産保存液の利

用が可能となっていることから,心臓の分野でも独自の保存液の開発も検討されうる.

2.3 周術期管理

2.3.1 血行動態の管理115-121)

ドナー心機能の管理は,前負荷および後負荷の調節で行い,抗利尿ホルモンを投与し,血圧を維持し,カテコラミンの投与量を最低維持量(ドパミン10 μg/kg/min 以下)にとどめる.カテコラミンが必要なければ,減量もしくは中止することが望ましい.

血行動態の目標値は,1収縮期血圧90 mmHg 以上, 2中心静脈圧6 ~10 mmHg,3尿量100 mL/ 時(0.5 ~3 mL/kg/ 時),4心拍数80 ~120 回/ 分である.

脳死となり,下垂体機能の機能が消失すると,下垂体後葉から抗利尿ホルモンの分泌が低下し,消失することもある.おもな作用としては,1腎集合管の細胞の管腔側の細胞膜の透過性を亢進させて,水の再吸収を促進させる.2血管を直接収縮させる作用.3βアドレナリン受容体へのアドレナリンの親和性を増加させる作用がある.そのため抗利尿ホルモンの血中濃度が低下すると,1尿崩症,2血管の緊張の低下,3心筋のβアドレナリン受容体の親和性の低下をきたすため,血行動態が不安定となる.抗利尿ホルモンの補充により,循環動態が改善し,腎機能も改善するので,尿量が安定することが多い.

抗利尿ホルモンの投与方法は,ボーラスで0.02 U/kg(または1 U)静脈投与し,持続的に静脈投与(0.01 ~0.2 U/ kg/ 時または0.5 ~1 U/ 時)し,血行動態を安定させる.血行動態安定後は,ノルアドレナリン,アドレナリンの順にカテコラミンの漸減をはかる.抗利尿ホルモン投与開始後,尿量の低下がおきる場合には減量も考慮する.

2.3.2 呼吸管理115, 116)

脳死後,全身性炎症反応がおき,交感神経系が過剰に興奮するため,急性肺障害および成人呼吸促迫症候群が一定頻度で発生することがあり,これらの予防が重要となってくる.呼吸条件としては,FiO2 は低め設定で,かつPEEP 5 cmH2O でPaO2 100 mmHg 以上,1 回換気量10 ~12 mL/kg で最大気道圧も30 mmHg 以下が望ましい.酸素投与濃度,1 回換気量,PEEP を可能な限り低めに保つことが,肺の炎症性反応を軽減するので,移植後の肺機能も改善させるものと考えられている.

脳死後,気道の神経反射(咳嗽反射など)が消失するの

表14 国内で使用されている心臓保存液(UW 液,Celsior

液)の成分と性質

成分UW 液(g/L) Celsior 液

(g/L)

Pentafraction 50 - Lactobionic Acid 35.83 28.664 Potassium Phosphate monobasic 3.4 - Magnesium Sulfate heptahydrate 1.23 - Raffinose pentahydrate 17.83 - Adenosine 1.34 - Allopurinol 0.136 - Glutathione 0.922 0.921 Potassium Hydroxide 5.61 - Mannitol - 10,930 Glutamic Acid - 2.942 Sodium Hydroxide Adjust to

pH 7.4 4.000

Calcium chloride dihydrate - 0.037 Potassium chloride - 1.118 Magnesium chloride hexahydrate - 2.642 Histidine - 4.650 Histidine monohydrochloride monohydrate - - Hydrochloric acid Adjust to

pH 7.4 -

Sodium chloride - - Potassium hydrogen 2-ketoglutarate - - Tryptophan - - Physical properties pH 7.4 7.3 Osmolarity (mosmol/kg) 320 320 (Hess NR, et al. 2022

111)より抜粋) © Hess NR, et al. 2022. CC BY 4.0