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p.44 抽出テキスト

定義し,中等度以上の壁厚の場合には慎重なドナー選択を要する.14 mm 以上の左室肥大がある場合に,55 歳以上のドナーや心虚血時間が4 時間を超える場合では,転帰に影響する可能性がある(Class IIa/エビデンスレベルB) 93, 104).

1.6.7 冠動脈病変

わが国では,多くのドナーで冠動脈造影が行われておらず,かつ50 歳以上のドナーが比較的多いため96),潜在的に冠動脈病変を有することを考慮しておかなければならない.冠動脈造影が行われていない代替の評価手段として, CT で冠動脈の石灰化の有無を確認することや冠血管リスク因子を評価することが参考となる105).1 枝病変では移植後の生存率が軽度低下するが,多枝病変では予後が悪化する106).

1.6.8 心虚血時間

心臓移植では,心虚血許容時間としては4 時間が長らく目安とされてきた.現在もISHLT ガイドラインでは4 時間以内の心虚血時間が推奨されている(Class I/エビデンスレベルC) 93, 107).将来的には,体外臓器灌流装置やDCD からの移植の導入などにより,虚血許容時間の概念が変わるかもしれない.

わが国の心臓移植では,医療システムやレシピエント・ドナーの背景が海外とは異なるため,必ずしも海外のガイドラインが当てはまるわけではない.心臓移植を行うことのメリットと基準から逸脱することによるリスクとのバランスを鑑みて,個々の症例において総合的に決定することが何よりも重要である.

2 脳死ドナーから移植心の 摘出・保存

2.1 摘出手技

脳死ドナーからの心臓摘出手技は,多くの心臓移植実施施設において,下記に記載された手技の大部分が標準的とされていると思われる.しかし,他の多くの外科手術手技と同様に,手術進行上の状況変化,レシピエントやドナーの状態,および各施設の方針に応じて,これらの手技は臨機応変に変更しうるものである.そしてもちろん,すべての手技にデータに基づく確立したエビデンスがある訳ではない.したがって,必ずしもすべてを下記の通りに遵守すべきとは考えていない.

一方で,心臓摘出手術の責任者には,肺や肝臓などの他臓器を摘出する他施設の責任者と互いに協力し合いながら,ドナー手術全体を滞りなく安全に進行させるという責任がある.臓器摘出の現場で摘出施設間の意見が著しく異なることは理想的ではなく,ある程度はこれらの手技を標準的と考えるという事前コンセンサスを得ておくことも必要と思われる.以上の観点から,本ガイドラインの心臓摘出手技の概要を下記の如く纏めた.

2.1.1 ドナー心摘出術において配慮すべき点

脳死患者は除神経状態にあるために体位変換による血圧低下を生じやすく,丁寧にゆっくりと手術台に移動する.肩枕を入れ,除細動パドルを貼り付け,両上肢はシーツなどで包んでベッドに固定する.体毛がある場合には,体幹前面・陰部・鼠径部を剃毛する.消毒は,前頚部から体幹・両鼠径部まで行う.胸骨切痕から恥骨レベルまで皮膚切開できるようにドレーピングする.中心静脈カテーテルは内頚静脈から留置されていることが多いが,上大静脈結紮時に浅く引き抜けるよう,呼吸循環管理医に固定糸をはずしてテープで仮固定しておいてもらう.限られた術野に胸部2 人,腹部2 ~3 人が立ち,胸部と腹部の操作が同時並行で進むため,胸部と腹部のチームは声を掛け合い,お互いに譲り合いながら操作を進めることを心がける.心臓チームの責任者が術野の責任者となって血行動態を含めた管理に注意を払い,呼吸循環管理医などとよくコミュニケーションをとり,安全かつ予定通りに摘出手術が進行するように配慮する.術中に徐脈となった際には体外式ペーシング療法を考慮し,不整脈発生時には電気的除細動やカルディオバージョンを考慮する必要がある.

進行のタイミングで気を付けるべきところは「ヘパリン化」と「大動脈遮断」である.ヘパリン化は胸部・腹部ともに剥離などの摘出準備が完了したことを確認してから行う.大動脈遮断はドナー臓器の虚血時間の開始時刻となるため,大動脈遮断時間を早める時は各臓器担当医の合意を得なければならない.予定より早く大動脈遮断しても,虚血時間が不必要に延びてしまうことになりうる.一方で予定よりも進行が遅れてしまうと,搬送経路で予定していた新幹線や航空便に乗り遅れて虚血時間が著しく延長してしまう危険性があるため,極めて不都合であり回避しなくてはならない.

2.1.2 臓器採取術前ミーティング

各摘出施設のメンバー,呼吸循環管理医,提供施設のスタッフ,およびJOT のコーディネーターと共に摘出前ミー