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p.41 抽出テキスト

輸液と血管作動薬の適正使用により血行動態を安定化させる(推奨表2).

循環管理では,血中乳酸値の上昇や混合静脈血酸素飽和度の低下が移植に適した臓器とならないことの判断指標となる.収縮期血圧を90 mmHg 以上,尿量を0.5 ~1.0 mL/kg/時以上,LVEF 45% 以上に維持することを目標とする(表11) 92).適切な輸液にも関わらず低血圧が持続する場合には,バソプレシン0.01 ~0.02 単位/kg/ 時での投与開始を考慮する.十分な輸液とバソプレシン投与でも血圧が維持できない場合には,心血管作動薬を検討する.臓器血流維持のため,可能な限りノルアドレナリンの使用を避ける.やむを得ずカテコラミンを使用する場合には,心障害やβ受容体のダウンレギュレーションを避けるため,可能な限り低用量での使用が望ましく82),ノルアドレナリンは0.1 μg/kg/分以下,ドパミン10 μg/kg/分以下での投与が推奨される93).最近では,カテコラミン必要量を減らし,高ナトリウム血症を予防する観点から,より積極的にバソプレシン投与が考慮される94).実際,バソプレシンの開始により,ノルアドレナリンが中止でき,心機能が改善したとのランダム化比較試験がある95).ドナー管理中は,繰り返し経胸壁心エコーを実施し,心機能の把握に努める.

また,動脈硬化リスクが高い場合や冠動脈病変が疑われるケースでは,冠動脈CT,冠動脈造影などによる積極的な冠動脈評価を考慮する.呼吸管理では,喀痰貯留による無気肺や肺炎に注意する.気管支鏡による吸痰や無気肺の

緩徐も考慮する.人工呼吸管理では,一回換気量や最大吸気圧を低く抑え,人工呼吸器関連肺傷害を予防する.動脈血酸素飽和度は93% 以上に維持する.PaO2 は70 ~100 mmHg,PaCO2 は35 ~45 mmHg,pH は7.35 ~7.45 に維持する.一回換気量は8 ~10 mL/kg とし,FiO2 は必要最小限とする.適切な体温管理(36±0.5 ̊C),電解質・血糖の是正,感染予防対策も重要である.必要に応じて輸血も考慮する.脳死では除神経の状態にあるため,体位変換や移動時の血圧変動には十分注意する.

臓器摘出手術時も,呼吸循環管理医と連携して適切な全身管理を行い,摘出臓器の質の維持に努める.ドナー管理では,術直前にメチルプレドニゾロン1 g,筋弛緩薬を投与する.血圧低下時には,輸血やアルブミン製剤の急速注入で対応する.血管収縮薬は,臓器血流を低下させ,保存液の灌流を不良にするので,追加注入や増量は可能な限り行わない.すべての臓器摘出の準備が整った時点で,へパリン500 単位/kg を中心静脈路から注入し,バソプレシン投与を中止する.心臓剥離操作中は,不整脈をきたしやすいため注意を要する.徐脈時には心外膜ペーシングの使用を考慮する.肺摘出がある場合には,気管遮断後に人工呼吸を停止する.心臓摘出医は,摘出手術の統括を行い,呼吸循環管理医を支援する.

1.5 3 次評価の実際

3 次評価はJOT によるレシピエント決定後,臓器摘出医または移植医により行われる.レシピエントが選定された後,JOT から送られてくる臓器摘出手術スケジュールに従い,摘出チームが提供施設に集合する.3 次評価を行うにあたり心臓超音波検査評価を行える医師が同行していることが望ましい.集合後,臓器ごとに3 次評価が行われる. 3 次評価を行う医師がドナーのベッドサイドに向かう際には必ず,白衣と身分証明証を着用する.摘出チームの担当者2,3 名がコーディネーターの誘導のもとベッドサイドに行き,直接ドナーを診察およびエコーを施行し評価する.エコー検査後は検査用ゼリーをしっかりと拭き取り着衣を整える.2 次評価から数日経過していることもあるため,2次評価後からの経過を十分に検討し評価を行う.主治医が同席している際には,評価結果を伝える.評価終了後は待機室に戻り,所定用紙に評価結果を記載しコーディネーターへ提出する.

3 次評価では移植が可能か否かを,実際に移植施設の医師が行うことで提供病院や臓器提供施設の担当医の責任を軽減する役割を担っているとも考えられる.

推奨表2 ドナー管理における推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

臓器灌流維持のために,適切な血圧を維持する. I C肺障害の予防のために,適切な一回換気量の確保とPEEP を行う. I C臓器灌流維持のために,中心静脈圧を指標に輸液管理を行う. I C臓器機能を最適化するために,36.0 ± 0.5°Cの適切な体温を維持する. I C心機能評価のために,経胸壁心エコーを繰り返し行う. I C血圧管理のために,バソプレシンを投与する. I C動脈硬化リスクが高い場合や冠動脈病変が疑われるケースでは,冠動脈CT,冠動脈造影などによる冠動脈評価を考慮する. IIa C循環動態安定化のために,漫然と高用量のカテコラミンを使用するべきではない. III Harm C