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p.37 抽出テキスト

5.2 CRT

重症心不全患者では,しばしば心室内伝導障害により心室内・心室間同期不全を合併する.特に左脚ブロックは左室全体の同期障害に伴う左室ポンプ機能低下をきたし,生命予後を悪化させる.このような病態では,CRT は同期不全を解消し,心機能を向上させ自覚症状や予後の改善をもたらすことが示されている.心臓移植を考慮する際には,薬物療法に加えてCRT を含めたデバイス治療を最大限に行っていることが前提となる.

これまでの臨床研究から,CRT の有効性を予測する因子としてLVEF 低下,QRS 幅,伝導障害のタイプが重要である.心エコー検査による同期不全の評価は,大規模試験での有用性は見出されていない.詳細な適応は他のガイドラインに譲るが,わが国のガイドラインではNYHA 心機能分類III ~IV の重症心不全患者において,クラスI での適応となるのは洞調律,LVEF 35% 以下,左脚ブロックタイプでQRS 幅が120ms 以上の場合である49,  62).また,心機能が低下しており,心室ペーシングが必要な患者においては,右室単独ペーシングよりもCRT の方が有効であることも示されている66).CRT 植込み後には最適化を行うことが推奨されている.

CRT は高い有効性が期待できる症例が存在する一方,効果の乏しい症例も多く,心臓移植を考慮する上で必ずしも必須の治療ではないことに注意が必要である.さらに,Stage D 心不全例におけるCRT 治療の限界も指摘されており,重症例ではVAD 治療を優先的に検討すべきである67, 68).CRT の適応については個々の症例で十分に検討した上で,適否を判断する必要がある.

近年は,CRT 適応となる症例に対して,刺激伝導系ペーシングとしてヒス束ペーシングや左脚ペーシングがCRT よりも有効性があるとする報告が小規模ながら散見される69, 70).今後はこれらがCRT にとって代わる可能性もあり,さらなるエビデンスの構築に期待したい.

5.3 VAD

薬剤抵抗性の重症心不全に対して大動脈内バルーンパンピング(IABP),体外式模型人工肺(ECMO)などの機械的補助が選択されるが,その効果には限界があり,さらに重症化した病態に対してはVAD が必要となる71-73).

以下,心臓移植に向けたVAD 治療について概要を述べるが,詳細については「2021 年改訂版重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン」を参照されたい55).

5.3.1 人工心臓の種類

a.体外設置型VAD

左室または左房より脱血し,上行大動脈に送血するシステムであり,送脱血管が皮膚を貫通し,体外のポンプと接続され,左心補助を行う.2015 年に小児用VAD として保険適用になったBerlin Heart Excor と,2021 年に保険適用となった国産のバイオフロート遠心ポンプがある(図12). b.経皮的心内留置型VAD 74)

循環補助用心内留置型ポンプカテーテルとして2017 年にImpella(図13)が保険適用となった.このデバイスの特徴としては,経皮的に大腿動脈や鎖骨下動脈から低侵襲的に挿入できることである.小型の軸流ポンプが組み込まれ,左心室から脱血し,上行大動脈に送血する.補助流量が違う2 種類のラインナップ(Impella CP:4.3L/ 分, Impella 5.5:5.5L/ 分)があり,使用可能な補助期間はそれぞれ8 日間,30 日間とされている.

VA-ECMO とImpella を併用したECPELLA 療法が行

図13 Impella ®(米国Abiomed 社) (画像提供:日本アビオメッド株式会社)

図12 バイオフロート補助人工心臓セットHC (画像提供:ニプロ株式会社)