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p.36 抽出テキスト

着患者において,アスピリンの不使用が血栓塞栓症リスクを増加させずに出血リスクを減らすことが報告され60),アスピリンフリーの管理が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)に認可された.高血圧は後負荷を増大し,循環効率の低下を招くため,連続流VAD では平均体血圧を75 ~90 mmHg に保つべく,ACE 阻害薬・ARB,ARNI,β遮断薬,MRA を用いて,適切にコントロールする59).心室頻拍や心室細動など致死性不整脈の予防には,β遮断薬やアミオダロンを使用する.右心不全を伴う症例では,強心薬(ドブタミン,PDE3 阻害薬)と一酸化窒素(NO)の吸入を考慮する.VAD 装着後早期の肺高血圧症の管理では,左室充満圧の上昇を注意深く監視しながら,NO 吸入,硝酸薬,エポプロステノール,PDE5 阻害薬などの肺血管拡張療法が考慮されることがある.

VAD 装着後でも心機能が回復する症例があり(bridge to recovery),心臓移植待機中でも薬物治療の適宜見直しと適正化が求められる.各薬剤の投与における推奨は推奨表1 に示した.

5 待機中の非薬物治療(ICD,CRT)

本項では,慢性心不全において生命予後改善の明確なエビデンスが確立しているICD と心臓再同期療法(CRT)について概説する.重症心不全患者では,この両者はCRT-D として同時に施行されることが多い.

5.1 ICD

心臓移植適応となる重症心不全患者では,致死性心室不整脈による心臓突然死は主要な死因であり,ICD は原因心疾患や適応(一次予防/二次予防)に関わらず,不整脈死予防により生命予後を改善するもっとも有効な治療である61).ICD 植込みの根拠となる臨床試験の多くは海外で行われているが,わが国でのICD 植込みは各種のガイドラインに準じて行われる49, 62).最近では,わが国の心不全患者において致死性不整脈発生リスクは以前考えられていたよりも高く,欧米と同等であることが明らかとなっている63).「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)」では,一次予防適応でのICD に関して虚血性心筋症と非虚血性心筋症に分けて記載されているが,いずれも十分な薬物治療下に,NYHA 心機能分類II 以上かつLVEF 35% 以下で,NSVT ありの場合がクラスI である.虚血性心筋症では,LVEF 40% 以下でNSVT があり,電気生理検査で

VT/VF が誘発された場合もクラスI である62).これまでの前向き大規模臨床試験では,器質的心疾患を有する患者の心臓突然死の最大のリスク要因は心機能低下と心不全重症度であることが明らかにされているが,近年ではより詳細な致死性不整脈のリスク因子を用いたいくつかのスコアリングシステムの有効性も提唱されている64).これらのスコアリングについては,日本人での有効性の検証が必要である.

重症心不全患者では,VAD を装着した後も致死性不整脈を合併することはまれではない.VAD が正常に作動している状態で致死性不整脈を生じても意識は消失しないことが多く,覚醒下でのICD 作動を避けるためにショックデリバリーは起きないように設定することも多い.VAD が正常作動している状態で心室細動が生じても即座に致命的となることは少ないが,右心機能低下による心拍出低下をきたすことがある.その際には鎮静下で除細動を行い,薬物治療を強化する必要がある.

近年では,経静脈リードを用いたICD の代わりに皮下植込み型除細動器(S-ICD)が用いられることも増えており,デバイス関連の合併症やショックの不適切作動において,経静脈リードを用いたICD と同等であることが示されている65).S-ICD は,経静脈的リード挿入に伴う合併症,リード損傷,デバイスに関連する菌血症などの問題を回避できることが期待される一方で,心筋症に合併する徐脈に対してペーシングができない,CRT ができないといったデメリットがあるため,特に重症心不全症例では個々の症例で適応をよく検討する必要がある.

推奨表1  VAD 装着患者における各薬剤投与の推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ACE 阻害薬,ARB またはARNI を投与する. I B β遮断薬を投与する. I C

SGLT2 阻害薬を投与する. I C

ワルファリンを投与する. I B

アスピリンを投与する. I C